夏向の過去 続
———いや、全然気付いてなかったっすよ
「な、なんで俺をここに呼んだんですか?」
「弟の息子が大変な事に巻き込まれてる事に気付いてねぇ。比較的安全なここに呼んだのさ」
この旅館は山奥でまわりには建物ひとつも見当たらない
だから安全なのかな
「…かなたさん、なんだか複雑な環境で育ってきたのですね」
「複雑すぎるでしょ?」
悲しい顔をしている唯希さんに軽々しく言い放った
「———ふむふむ、なるほどね」
赤西さんが何かを理解したかのように頷いてる
「そんな事情あるから、かなたくんは爽やかそうに見えてけっこー病んでる」
「………」
「失礼なこと堂々と言うのやめなさいな」
おばちゃんは呆れ顔でそう言い、俺の背中を撫でた
「夏向は好きなだけここにいて良いからね…あと、ゆきちゃんも一緒にね」
「い、いいんですか…?」
「勿論さね」
おばちゃんはニコっと笑顔を見せた
「ゆきちゃんの事情もアタシは知ってるからねぇ。それに、彼と一緒に居たいんでしょ?」
ドキっとした
「か、彼って…私たちはそんな関係じゃないですよ!」
「何を今更~私はともかくおばちゃんもあなた達の事情は知ってるんだからね!」
「し、支配人さんまでですか…」
「………」
俺は何も言えずにいた
うーん、そうだよなぁ…
「…ま、頑張んなよ」
俺の背中をバシィ!!と大きく叩くおばちゃん
絶対跡ができたな…めちゃ痛い
「おばちゃん、でも俺はいつまでも甘える訳にはいかないよ」
「え…家に帰ってしまうのですか…?危なくないんですか?」
「…おばちゃんが、その…色々解決してくれたのなら、大丈夫だよ」
「まぁそうさねぇ、組長をブタバコに入れたから問題はないはずだけど…」
「もし捕まってない部下なんて居たら、恨みで俺の事狙う可能性はあるかも…ですね」
「一応全員捕まったのも確認済みだよ。少なくともアタシが行った時その場にいるヤツらみんな警察に引き渡しておいたさ…いなかったヤツらも警察が調べて捕まえたらしいし」
汚れ仕事が専門の組織だから暫くは出て来れないだろうねぇ…なんて言うけど、汚れ仕事って何だろう
ちょっと考えてみて何となく察したけど、後でスマホで調べてみよ
「俺はまだこの歳ですし、学校に行かないと行けませんから家に帰ることにしますよ」
「そうかい…帰るにはまだ一週間はあるんだろう?だったら………お客様としておもてなしをさせて頂きます」
深くお辞儀をするおばちゃんもとい支配人
「はは、いつも通りでいいですよ。よろしくお願いします」
「………」
帰るまでに唯希さんと沢山思い出を作りたいな
…いや、そもそも唯希さんと離れるのは無理だな
なにか考えないと…




