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ココアのような恋物語  作者: 夏輝 陽
Sweet Cocoa Love~後編
21/29

病弱な彼女


 自称ゲームコーナーで遊び続けて十八時を回り、お腹が空いた俺たちは食事処へ向かった



 いつもの窓際の角の席に着き注文を終え待っている間、ゲームコーナーで軽く自己紹介し合った赤西 紅葉〈あかにし もみじ〉さん(二十五歳)に話しかける


 「…赤西さんは今どこに住んでるんですか?」


 「んーずっと向こう…ここから車で二時間くらいかかるとこに住んでるんよ。…因みに実家暮らしね」


 「あぁ大変ですね…」


 「まぁまぁ、二週間程度の短期バイトでここに来てるから」


 旅館で短期バイト募集してるんだ…とか思っていると


 「私、これでも料理は得意なんでね!ここの食事処のスタッフ募集してたんで来てみたんよ」


 「なるほど、ここの従業員さんでしたか」


 「そそ!調理師免許も持ってるしね…まぁ目的は別にあってバイトはついでなんだけどね」


 「…そうでしたか」


 「そうなのだよ少年」


 その別な目的の事を聞いて欲しいのか言いたくないのか判断に困った俺は話題を逸らした


 「…唯希さんってほんとゲーム上手いですよね」


 「…ふぇ!?」


 「うんうん、ゲーマーさながらって感じよね」


 ギョロ目を更に大きく見開かせてあたふたする唯希さん


 「わ、私、ゲーム好きなんです…いつも家でひとりでいるから…ずっとやっていたり…」


 赤西さんがいるからか、俺と出会った頃の唯希さんの時みたいに緊張している様子でいた


 「へーそうなんだ、私はゲームとかはようつべで実況してるのを観てる程度であまりやったことないんだよねー…でもやってみるとやっぱ楽しいね!」


 「観るのとやるのとではやっぱり違いますからねー」


 「それねー」


 「唯希さんは他にどんなゲームするの?」


 「えっと…かなたさんが持ってるゲームはほとんどしてます、よ?」


 「そっか、偶然だね」


 何となく嬉しい偶然だ



 注文した料理が届き、それぞれ頼んだ料理を平らげて解散した




 翌日、ひとりで昼食を終え(赤西さんはお休み)自室に向かってのんびりスマホ弄りながら景色を眺めていると、スマホからポンっと音が鳴ると共に画面上部にプッシュ通知がきた


 …相手は唯希さんだった


 [お元気ですか?]


 更にはてなマークを浮かばせている猫耳少女のスタンプが届く


 [元気だよ]

 [どうしたの?]


 そう返信して少しの間が空き、やがて返信がくる


 [風邪をひいてしまって…]


 [え、大丈夫?]


 [軽く目眩がするくらいで特に問題はないですよ]


 [そっか、ならずっと寝てなきゃだよ]


 [心配してくれてありがとうございます]


 [いえいえ]


 お大事にと文字が書いておりお辞儀している猫耳少年のスタンプを送った


 [でも寝ているだけじゃ暇なので、ラインでお喋りに付き合って貰ってもいいですか?]


 [うん、いいよ]

 [けど体調悪くなったらちゃんと寝ようね]


 [わかってますよ]

 [ありがとうございます]


 それにしても唯希さんが風邪かぁ…病弱な雰囲気するから、よく体調悪くしちゃうのかな


 話題を考えてると向こうから文章が送られてきた


 [もし私の風邪が治ったら、一緒にゲームしませんか?]


 [勿論いいけど]

 [ふたりでやるやつと言えば、大分限られてくるよ]


 ひとり用の多いからなぁ…PS4もあの部屋にあった気もするけど、ソフトなんて置いてあったっけ…後で確認してみよう


 [PS4のマイクラを発見したのでやってみたいです]


 マイクラかぁ、パソコンでやってたけどコンシューマー版ではやったことない


 [唯希さんはマイクラしたことある?]


 [実はまだやったことなくて、楽しみなんです]


 [そうなんだ、俺もPS4ではやったことないから一緒に一から楽しめるね]


 ボタンの配置さえ覚えればいつも通りやれると思うけども


 [ですね]

 [あとゲームだけじゃなくて、キャンプするに面白いスポットあるらしいので一緒にどうですか?]


 [いいよ、キャンプもまた一緒にしよっか]


 [ありがとうございます]


 それにしても…


 [俺と一緒に遊ぶのそんなに楽しい?]


 [勿論ですよ]

 [楽しくてかなたさんと毎日一緒に過ごしたい]

 [なんて思ってます]


 …プロポーズかな?


 ていうかそれってもしかして、俺のこと…


 自惚れじゃない、流石の自分でもそんな事書かれたら唯希さんの気持ちに気付く。気付いて胸の辺りから暖かいものが広がっていくのがわかった


 [俺も、唯希さんと毎日過ごしたいって思ってるよ]


 浮ついた気持ちで文章を打ち、送信した


 [そうですか]


 …そういえば唯希さんは風邪を引いてるんだった。冷静になれ自分


 [邪魔じゃなかったら、様子見に行ってもいい?]


 [いいですけど]

 [あ、やっぱりダメです]

 [風邪が移ったりしたら大変です]


 それはそうか。だからラインで話してる訳だし


 [少しだけでもダメかな]


 間が少し空いて


 [それならいいですよ]

 [鍵、開けておきますね]


 返事にサムズアップしている猫耳少年のスタンプを送り、スマホをポケットに入れて扉へ向かった



 「お、お邪魔します」


 女の子の部屋は緊張するなぁ…旅館の部屋だけど二週間以上過ごしてるだけあって、唯希さんの甘い香りが漂っていて余計に緊張してしまう


 唯希さんの香りを意識してるなんてキモいかな。でも仕方ないじゃない、好きな子の香りなのだからさ


 「…窓開いてるんだね」


 「かなたさんが来るというので、換気しないといけないなと思いまして…」


 「気を遣わせちゃったようで申し訳ないね…」


 「いえいえ…嬉しかったですから」


 ニコっと笑ってみせる唯希さん


 思ったより元気そうで良かったなぁと安心したと同時に唯希さんの頭の上に手を置いて軽く撫でていた


 「ぅぁ…」


 唯希さんは少し唸って、片目ギョロっと頭を撫でられている手を見る


 「かなたさん…」


 やがて気持ち良さそうに目を閉じ、なでなでを受け入れる



 暫く撫でていると———


 「かなたさん、ずっと一緒にいたい…」


 うわ言とは思いたくないなぁ


 そのうち寝息が聞こえてきて、完全に眠った事を確認し起こさないように窓を閉めて静かに退散した———




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