振袖の唯希さん
「結局お正月らしい事してないですね」
同日、十六時半
雪だるまを作り終えた俺たちは、俺の部屋に唯希さんを招き入れ、部屋の露天風呂で景色を眺めていた
「…やけに拘ってるようだけど、何か理由でもあるの?」
「理由はないですけど、ただイベントがある日はそれらしい事して楽しみたいなーと」
そういえば、ハロウィンの時もクリスマスの時も張り切ってたなぁ…
「…じゃあ、後で振袖あるかおばちゃんに聞いてみよう」
「神社に行く訳じゃないのに着てどうするんですか?」
「記念撮影とか…あと俺が見てみたい」
「…そうですか」
おばちゃんもいつもそれらしいの(黒留袖)着てるし、いくつか持っているだろうからきっと見れるに違いない…と、振袖を着た唯希さんの姿を妄想していた
ギョロリと四白眼の彼女さんはこっちを見て
「着物姿見るの…楽しみ?」
「まぁそりゃあね」
「そうですか…この顔に合えばいいなぁ…」
相変わらず自分に自信が無い唯希さんである。気持ちはよく分かるけど、俺も自分に自信がある訳じゃないし…
「杞憂だよ、絶対似合うって」
「多分世界でかなたさんだけですよ、私にそんな事言ってくれるの」
ふふっ…と笑い、上機嫌になった唯希さん
ふと俺の胸元に手が添えられた…そういえばお互い裸だったなぁ
一緒にお風呂に入る事に慣れてしまっていてつい忘れてしまうけど、唯希さんの裸姿は今でも可愛らしくて綺麗だと感じる…故におっきくなってしまう
「その…したくなりましたか?」
「も、勿論」
「いいですよ…私もしたくなっちゃった」
白銀の景色を背景に、彼女の抑えつつも出てしまう色気づいた喘ぎ声が耳に心地良かった…いい思い出えっちが出来た
「…幸せです」
暗くなってきた頃、お風呂場から出て来た俺たちはベッドで横になった
心做しか、唯希さんの肌がツヤツヤしていた
「だなぁ…」
「ふふ、お疲れ様です」
いつもより張り切り過ぎた為に、疲れがどっと押し寄せてきた
「お夕飯前に少し寝ちゃいますか?」
「…そうしようかな」
「わかりました…では一緒に寝ましょう」
そう言って先に布団に潜った唯希さん。それに習い俺も布団の中に入る
…唯希さんから温もりを感じた
甘い匂いもする…
「ま、また…したいんですか?」
「…うん」
今度は唯希さんの主導を元に愛を確かめ合った
ちょっと寝るだけのつもりだったけど…
起きたのは何と二十一時
「かなたさんがおっきくするからですよ…?」
「唯希さんが可愛いからいけないんだ」
食事処にてそんな会話をしていた
「イチャつくのも良いんだけどさぁ、早く注文してくださいな」
「…すみません」
おばちゃんこと支配人がこっちの席に来ていた。どうやらおばちゃんが注文の受付をしてくれるらしい…
「呼んでおいてすみません、注文は———」
「はーい、おせちですねー」
「え、おせちなんてあるんですか?」
「本当はないけど、あんたらに特別にサービスしたげるよ」
頼んで大丈夫かと唯希さんに視線を移す
「おせち、食べてみたいです」
「はい、じゃあ決まりだね。待っててねー」
「…あ、おばちゃん」
「ん?なにかね?」
「唯希さんのサイズに合う振袖って持ってないかな?」
おばちゃんは唯希さんを眺める
「…うーん、ちょっと大きいけど何着か持ってるねぇ」
唯希さんは口を開け
「あ、あの、良ければですけど、貸して頂けないでしょうか?」
「まぁ、もう着れないモノだし寧ろあげてもいいかもねぇ」
「あ、や、それは申し訳ないですよ」
「…あら、親戚に着物を贈るなんて普通の事じゃない」
「そうかもですけど…」
「後で部屋に持っていくから、待ってなさいね」
そう言って厨房へと消えていったおばちゃん
「良かったな、着物貰えるなんて」
「う、うん」
俺は着物姿の唯希さんを見るの楽しみにしつつ、おせち料理をゆっくりと味わい平らげた
食べ終わった俺たちはそれぞれの部屋に戻ることにした
(着物着たらラインで連絡するね)
と、去り際に言われたのでスマホを弄りながら連絡を待つ
ハロウィンの時の衣装やクリスマスの時の衣装など、思い出の写真を眺めながら待つこと三十分
[今からそっちに行ってもいいですか?]
と、ラインで送られてきたメッセージ
[いいですとも]
少しふざけて返事をした
そのうち、コンコン…と、ドアがノックされた
ノックされたドアの元へ行き、ドアを開ける
すると目に映ったのは白の花模様が入った赤い振袖を着てる唯希さんの姿
赤面しつつ上目遣いでギョロっと四白眼が俺の目をじっと見ていた
「ど、どうかな」
「うん、すごく綺麗だよ…」
事実、俺の彼女さんは綺麗であった
「これで初詣とか行けたら良かったなぁ…」
「この雪じゃどうしようもないよ」
「そうですけど…」
唯希さんの頭を軽くぽんぽんっとし、髪が崩れないようにゆっくり撫でた
「ゃ……かなたさんの撫で方…好きぃ…」
甘い声を上げる
撫でるのをやめて、顎を少し上にクイっと向ける
そして軽めのキスをした
「…ふふ、イケメンムーブ決まりましたね」
言われて恥ずかしくなった
「そういうのは口にしない事」
「でも、かっこいいですよ…?」
何なんだこの子は
「…可愛い子に言われて光栄だよ」
なんて言い返す
「外に行って写真撮りませんか?」
スルーされ、そんな提案
「外?雪降ってるし、寒いと思うけど」
「先程作った雪だるまの前で撮りたいんです」
「ああ、なるほどね」
「かなたさんはどの格好で撮りましょうか」
今着ているのは青のパーカーに紺色のジーンズの格好をしている。茶色のコートがあるのでそれを着て撮ろうかな…と、コートを着てみた
「…私だけ、浮かないですかね」
「ひとりだけお正月っぽいのもね…」
どうしたものかと考え、閃く
「唯希さんだけ一番前に居て、写真の半分を唯希さんで埋めれば違和感無くなるかも…?」
「それで本当に大丈夫かなぁ」
不安げに言う唯希さん
「ま、一応撮るだけ撮ろうか」
外の玄関前に出た俺たちは、寒いのですぐさま写真を撮る
「雪だるまがひとり写ってないから、もう少し斜めに移動しようか」
色々工夫してやっと納得のいく写真が撮れた
再び館内に入り、唯希さんを連れて俺の部屋へ行く
「…わ、私って本当にブサイクですね」
撮った写真を眺めてそう呟いた唯希さん
「そんな事全くないってば」
「でも見てくださいよ、一番前に写ったのに一番暗く怖い顔してる…」
「…いつもの唯希さんの顔じゃないか」
「いつも暗く怖い顔してるなんて思っていたんですね」
「そうは思ってないけどさ…」
「…?じゃあどう思っているんですか」
やれやれ、面倒くさい彼女さんだ
そんなとこも好きなんだけどね
「可愛いなって思ってるよ」
「またそんな誤魔化し…んむっ———!?」
キスをし、ネガティブな口を閉じさせる
「ん…誤魔化してなんかいないよ。本当に普段から可愛いなって思ってる」
「もう、かなたさんってば…」
照れるように俯き、再び上目遣いでギョロっと四白眼がこっち見てきた
「好きだよ、かなたさんのこと」
振袖姿のまま微笑んだ彼女にシャッター音が鳴り響く
「ほら、可愛いでしょ」
撮った写真を唯希さんに見せた
「…悪くはないかもですね」
「俺の彼女さんは世界一可愛いんだから」
そう言って頭を軽くぽんぽんした
この後、気分が良くなった振袖姿の唯希さんと部屋中移動しながら様々なポーズをとらせ、その度思い出の写真が出来上がった———




