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ココアのような恋物語  作者: 夏輝 陽
番外編~お正月編
15/29

おしるこ


 これは今の時点での物語から約半年後、2016年元日番外編のエピソードです




 元日、午前十一時


 今年も正月がやってきた


 ある旅館の二階奥北側の部屋に自分は宿泊している


 ソファーに座り、目の前のテーブルに置かれてある袋に入ってる切り餅と小豆を見つめている


 おばちゃんこと支配人から餅と小豆を貰ったけど、おしるこにして食べてって事だろうか…一度も作った事ないので悩み、ネットでおしるこの調理動画を観ようとスマホを手にした


 ———コンコン


 来訪者がやってきたようだ


 手にしたスマホをポケットに仕舞い、ノックされた扉を開けた


 「…唯希さん?」


 「えと、あけましておめでとう、ございます」


 唯希さんと呼んだ少女、黒瀬 唯希

 黒髪で細身のギョロ目四白眼は俺の事を困り顔で見つめている


 「うん、あけましておめでとう…何かあったの?」


 と尋ねると


 「理由もないのに、来たら行けませんか?」


 「あーいや、来てくれて嬉しいよ」


 「…ふふっ」


 唯希さんとは半年前から恋人の関係で、今は尚ラブラブっぷりは衰え知らず。まるで夫婦のような状態だ


 踵を返してソファーの元へ行き、唯希さんを招いて座らせる


 「じゃあ、飲み物入れるから…ちょっと待ってて」


 そう言って席を立ち、キッチンへ向かおうとしたところ


 「———バンホーテン飲みたいです」


 そう言われ、渋々旅館の自販機に急いで向かった…




 「…どうぞ」


 買ってきた缶ココアを唯希さんに渡し、対面のソファーに座る


 「すみません、ありがとうございます…来る時に買ってくれば良かった」


 「そんな考えも湧かないくらい、俺に会いたかったんだ」


 「…そういうとこ、あまり好きじゃないです」


 「すみませんでした」


 付き合い始めてから甘える時はものすごく甘えてくるけど、普段は相も変わらず少しクールな彼女さんだ


 気になっていただろう目の前に置いてあるテーブルの上の切り餅と小豆を指差し


 「これからおしるこでも作るんですか?」


 「うん、作った事ないけど…」


 「…作りましょうか?」


 「お願いします」


 ほんと、陰キャながらも何でも出来てしまう高スペックな彼女さんだ


 そう陰キャで不器用な彼氏は思った


 缶ココアを持って部屋のキッチンへ向かった唯希さん


 立ち止まって首が少しこっちへ振り向き、ギョロぉと四白眼が俺の視線を合わせてきて


 「餅は何個食べますか?」


 「三個食べようかな」


 「わかりました」


 唯希さんは頷いて、キッチンの方へと消えていった



 以前、キッチンで料理すると言われて手伝いを申し出たら「女の子が台所に立ったら、そこはもう女の子のお城になるんです」と言われ、こうして待つことにしている


 やはり幸せだ


 こうして彼女さんが作ってくれてるこの待ってる時間も幸せに感じた



 お互いまだ幼いながらも大人顔負けの恋人関係である



 十分ほど待ち、ようやくキッチンからおわんを持って出て来た唯希さん


 電源を付けっぱなしになっていたスマホ画面を唯希さんに見られた


 「できましたよ…って何を見てるんですか?」


 「料理ができるまで、撮った写真を眺めていたんだよ」


 「…見せてもらってもいいですか?」


 「うん、いいよ」


 唯希さんにスマホを渡した


 「あ、これ懐かしいですね」


 「これは俺が初めてキャンプした日に撮った写真だね」


 「いつの間に撮ってたんですか?…しかも私が写ってるのもありますね」


 「…この頃から唯希さんの事好きだったからね」


 そう、この頃は付き合う前の写真だ


 付き合い始めるのはその一週間後だった事は忘れもしない


 「…かなたさんの方がよっぽど私の事好きだよね」


 笑ってそう口にした唯希さんは次々と写真を眺め…するとある写真を見てピタリと止まった


 「なっ、なな…なんでっ…この写真いつの間に…!?」


 ただでさえお目目パッチリの彼女が更に見開き、みるみる顔が赤くなっていく唯希さん


 初夜の時に撮った写真の数々を見てしまっている


 「いや、堂々と撮ってたんだけどさ…てっきり大丈夫なのかと思って」


 「大丈夫なわけないじゃないですか!」


 「ですよねー」


 「今すぐ消し…て……ーーーっ!!」


 顔を真っ赤になりながら俯き…やがて顔を上げギョロっと上目遣いで四白眼と視線が交わされた


 「す、少しだけ…私にもください」


 何だかんだ性への興味は人並み以上にある唯希さんは、そんな提案をした




 「———少し冷めてしまいましたが、いただきます」


 「いただきます…」


 冷めたとはいえ、食べるには丁度いいくらいの熱さになったおしるこを飲む



 餅を二つまで平らげてお腹いっぱいになってしまった…


 一つ餅を余らせた事を唯希さんに伝える


 「では、半分いただきますね」


 そういえば餅を一つしか入れてなかった唯希さん


 こうなる事を予見してたのかな?


 「じゃあ…餅を齧って咥えていてくださいね」


 「…え?あ、わかった」


 何となく察した俺は餅を齧り、咥えたまま正面を向く


 すると唯希さんはその咥えてる餅の反対側から齧った


 その後むにょーーーんと引っ張って伸ばして切ろうとしたが…中々切れない


 席を立って更に後ろ、後ろへ…


餅「ねぇ、餅の強度はこれが限界だと思った?」

 と聞こえてくるかのようにまだ切れない


 が、このままだと切れても餅が床に着いてしまうので口の中で噛みちぎって食べながら…あ、餅の味しかしないけどこのままでも美味しい…と自分は思いながらポッキーゲームよろしくお互い近づいていく


 やがてゼロ距離になり…キスをした


 「ん……どれだけ離れてても私たちは、このお餅みたいに切っても切れない関係でいたいです」


 「はは、俺はそもそも離れたくもないけどね…それに餅よりも噛みきれない程に固い絆を持ってると思うよ」


 「ふふ、そうだね」


 そして、もう一度キスをした———



 今年もふたりで楽しく過ごしていきたいな






 あけましておめでとうございます!


 今年頭から執筆活動しておりまして、まだまだ至らない事が多いと思いますが、どうか温かく見守ってくれたら幸いです


 〈ココアのような恋物語〉を、どうかよろしくお願いします

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