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たぬきときつねの小噺集  作者: 紫生亭更松
8/8

変化たぬき師匠一家録・〜口裂け女の叫びの巻〜

   序


 ポンポコポーン♪ 

 ポンポコポーン♪


 人里を少しばかり離れたとある場所のことにございます。ここは変化たぬき師匠一家が集まる秘密の集会所。

 集まるたぬきはただのたぬきではございません。たぬき師匠に変化之術を習い、学び、研究研鑽するたぬき達なのです。


 わいわいガヤガヤ。

 

 たぬき達が好き勝手に歓談をしておりますと、壇上にメガネをかけた学級院長風の若たぬきがスタリと姿を現したではありませんか。

 オホンと咳払いを一つ。肉球柔らかな手をポポンと叩いて場を静め、たぬきらしからぬイケメンボイスでこう切り出します。


「皆様、静粛に。今夜は次回変化勝負の演目について決めていきたいと思います」


 変化勝負。それはたぬきときつねとっての一大事! お花見お月見、盆暮れ正月、歌会茶会の次に大事なイベントにございます。

 きつね先生とたぬき師匠、その生徒弟子はお互い気心知れた仲良し同士とはいえ、この時ばかりは切磋琢磨の火花を散らすライバル同士の間柄。互いに実力伯仲は承知とはいえ、少しでも相手よりも勝りたいというのが本音の所にございます。

 变化勝負のルールは至って単純。変化之術で隣人である人を驚かせ、その出し物の噂が多く広まった方が勝ちというもの。


「最近のきつね一門の勢いは凄まじいものがあります……」


 これまで双方一歩も譲らぬ勝負をしてまいりましたが、現在はたぬきが劣勢と分析しつつ集まるたぬき達を静かに煽る委員長。


「確かに最近のきつねはスゲェよな!」

「さすがはきつねだ。だけど俺らだって負けちゃいないだろ?」

「ああ! そうだそうだ! 言うほど差はついてねぇはずだぜ!」


 委員長この言葉を聞き逃しません。


「言うほど差はついていない? それは差がついているということですよね? むしろ負けていると自覚している言い方です!」


 委員長の首に巻かれた蝶ネクタイがキリリと光ると威勢のいいたぬき若衆達も言葉に詰まる。


「私達がそんな風に思っているということは! きつね一門の皆さんもそういう風に思っているということです! このままで良いのですか? たぬき一家として!」


 委員長熱く演説。本当のところ、きつねがそんなこと少しも思ってはいないことはわかってはいるのですが、これほど煽られては黙ってはいられません。


「確かにそれはいけねぇな」

「ああ、きつねをアッと言わせてやりたい!」

「でもよ、このご時世、外が明るすぎるってもんだ」


 術の技量ならば甲乙付け難いきつねとたぬきでございますが、何事にも得手不得手というものがございます。室内演出の妙技ならばきつねが得意、屋外演目ならばたぬきが優勢というのが両者の持ち味。

 けれど最近では、外はどこもかしこも街灯、ネオン、LEDで常に明るいというの中。変化勝負演目の多くは薄暗いの中で行うことが多いものですから、たぬきにとっては何ともやりづらい状況なのでございます。


「外が得意はたぬきの伝統。とはいえ、今はむしろ外より内の方が良い条件を作りやすいと思いませんか? これではきつねが益々有利でたぬきが不利!」

「そうかも知れねぇな」

「でもよ、じゃあどうするってんだ?」


 その質問、待っていたましたとばかりに今度は委員長のメガネがキラリと光る。


「これを機に! 我々たぬきも室内演目を増やしていくのはどうでしょう!」


 会場どより。お互い顔を見合わせ困惑確認。そんなたぬき達を横目にさらに委員長「室内こそたぬきの新天地なのです!」と畳みかける。

 会場ざわざわ。たぬき達の頭も左右に揺れる。「確かにそうかも」「何も不利なところで勝負をしなくても」「もっと楽できるのかな?」などなど、委員長の言葉で戸惑いが納得へと変わろうとしていたその時でございました!


「はっ、情けねぇな」


 まとまりかけていた会場を突き抜けるしゃがれた一声。集まる視線の行き先は、会場奥に設えられた敬老席。見れば今日の敬老席には四匹の老たぬき。スヤスヤ昼寝をする老夫婦に、すでに酔いつぶれたジジイが一匹。

 唯一起きていたのが声の主。キセルをつまみに酒を飲む老たぬき、その名を芳松よしまつ


「なんでぇい芳松のジイさんか、何か文句があるってのか?」


 若たぬきが声を上げる。するとジジイ芳松「情けねぇから情けねぇ、って言ったんだ」と若たぬきに負けていない。


「勝負に勝てる見込みがねぇから場所を変えようって? はっ! 最近の若いモンは言い訳ばかりしよる。情けねぇ!」

「なんだとジジイ!」

「もう一度言ってみろ!」

「勝負に勝てねぇことを場所のせいにしようってのが情けねぇってんだ! 得意不得意あっても勝負の本質はあくまで芸だ。優劣は芸でつけるものだろうが、場所がどこかなんてものは関係ねぇ!」

「昔とは違うんだよ! わかってねぇクセに口出しすんじゃねぇ!」


 若たぬきと老たぬき。バチリバチリと火花舞い散る様はまさに一触触発。


「俺の若い頃は、そんなつまらねぇ弱音は恥ずかしくて吐かなかったもんだぜ」

 

 すると委員長ニヤリとして「芳松さん、そこまで言うなら一つ我らに手本を見せていただくことはできますか?」と申し出る。若たぬきの鋭い視線が芳松に集中。その視線を受けて、芳松カツンとキセルの灰を落として言う。


「いいだろう! 次回変化勝負はこの芳松が一席披露してやろうじゃねぇか!」


 ジジイの啖呵に一同沸き立つ。

 かくして、老たぬきが一匹芳松の一席、開演の運びと相成りました。



   破



 舞台となりますのは、いろは第三中学校から少し離れた細い路地にございます。

 中学校からほどよく離れたこの道は、ほどよい暗さに、ほどよい直線。この道を使う生徒は少ないけれど、いないことはないという何ともほどよい感じの裏道的通学路。

 今宵はこの最高にほどよいの路地を舞台に、下校する中学生を観客として招待する計画にございます。

 すでにこの道を見下ろせる建物や屋根の上にはたぬき観客達が集まり準備は完了。その中には若たぬき達はもちろんのこと、あの会議で昼寝をしていた老たぬき三匹の姿もございます。


「ジイさんらも来たのか? 芳松ジジイの応援ってわけか?」

「あれで?」


 老たぬきが一匹、通称飲んだくれのたつみはすでに出来上がり、観客である若い娘のしっぽを追いかけるのに夢中にございます。あの時昼寝をしていた老夫婦、かえでは奥さんであるヨネの膝枕でやはりスヤスヤ眠り、そのヨネは旦那である楓の頭を枕にしてやっぱり寝ているではありませんか。

 とても芳松の応援をしに来ているとは思えません。

 

「歳はとりたくないねぇ、あいつら芳松ジジイの昔からの仲間だろ? 仲間がこれからやるってのに応援する気ゼロかよ」

「しょうがねぇだろ、失敗するってわかっているものをまともに見ていられっかよ」


 そう、今回の演目はいつもの变化勝負とは一味違います。

 いつもであれば「きつね対たぬき」の勝負でございますが、今回は「対きつね」というよりも、若たぬき対老たぬきのプライドをかけた一席でもあるのです。

 ここに集まる多くの若たぬきの目的は生意気ジジイである芳松が失敗し「やっぱり若いモンには敵わない」と言わせること。これこそ、若たぬきの宿願にございます。おそらく失敗した芳松はガックリ肩を落とすに違いありません。肩を落として、背中を丸め「ああ、時代は変わったのか。俺達の時代とは違うんだな……」などと呟くことでしょう。そうやってジジイに一頻り反省させれば今回は満足というわけです。

 もちろそんなことを望んでいても、若たぬき達も決して鬼ではございません。ジジイを懲らしめたあとはちゃんとジジイを慰めるための慰労会の準備だってしてあります。そこでめでたく仲直りという計画です。

 それにはともかく、芳松ジジイにはサッサッとやってもらって、できるだけ惨めに失敗してほしいというわけです。


「しかし、芳松のジジイは何をやる気だ?」

「なんだ、お前知らねぇのか? 芳松のジジイ、っていったらアレに決まってんだろ?」


 と、若たぬきの疑問に答えるは紙タバコを吹かす中年たぬき。


「アレって何だよ?」

「芳松のジジイの十八番と言えば、口裂け女さ」

「口裂け女!?」


 口裂け女と申しますのは、一九七八年に起こった都市伝説にございます。口元に大きなマスクをした若い女性が学校帰りの小学生や中学生に「私、綺麗?」と問いかけ、「綺麗」と答えると「これでも?」と言って、マスクをとり世にも恐ろしい裂けた口を見せて驚かせ、もし「綺麗じゃない」と答えると追いかけ回されるというもの。

 この口裂け女に追いかけられた時の対処法として、口裂け女が苦手な「ポマード!」という言葉を叫べば助かる、というのは口裂け女全盛時を生きた小中学生にはあまりに有名なお話にございます。


「どうして芳松のジジイと言えば口裂け女なのさ?」

「口裂け女は芳松考案の演目だからさ」

「ええっ!?」


 今は流行っていないとはいえ、一時の流行りだけに留まらず、世代を超え、その時々でアレンジをされ何度もお客を恐怖で楽しませてきた「怪談・口裂け女」はまさに名作中の名作と言っても過言ではありません。


「あの口裂け女を芳松のジジイが考えたってのか!?」

「ああ、そうだ。ほれ、見てみろよ、芳松が出てきたぜ」


 下校途中の中学生を待つため、舞台袖である路地の陰からソッと姿を現したのはスラリと立つ女の姿。

 モデルを思わせる高身長に、ピシリと伸びた背筋。目鼻立ちの整った顔には薄くメイクが施された雪のように白い肌が何とも目を引きます。切れ長の瞳はどこか淋しげに潤み、背中まで垂らされた黒髪と羽織った黒いコートが美しさと怪しさを引き立てているようでございました。これには観客たぬき達も見惚れてしまうほど。

 しかし、一度顔を横に向ければ、その白い頬は熟れたザクロのように大きく割かれている。大型犬のように割かれた口からはヨダレがヌメリと垂れ、反対側の美しい顔とはまるで対照的。まさに美しさと恐ろしさが混在する見事な口裂け女に若たぬき達も思わずゾクリとしっぽを震え上がらせます。


「これは大したもんだ!」

「現役を離れて長いはずだが、上手いもんだな」

「だがよ、綺麗、美人に化けるだけなら誰でもできらぁ! 变化之術は常に進歩しているんだぜ?」

「おおぅ、そうだそうだ! 肝心要はその内容よ!」


 喧々諤々。観客席はざわめき立つ。そうこうしている内に見張りのたぬきからの合図。

 学校帰りの中学生がもう少しでこの道へとやってくる。それがわかるといなや観客たぬきは静まりかえり固唾を飲んでそれを待つ。

 芳松は気合を入れてマスクを装着、準備は万端。


 まもなくいろは第三中学の制服を来た女の子が路地へと入場。

 ショートカットで細身の可愛らしいJC(女子中学生)にございます。

 JCは何も知らずに舞台を進行。ほどよく人気もなければ、街灯も少ないほど良い暗さのこの道でいつ声をかけるか機会を伺う。入り口付近ではすぐに逃げらてしまう。これは路地出口でも同じこと。この手の演目はタイミングが重要かつ難しい。

 もちろん、舞台の真ん中までやってくるまでジッと待機が最善策。しかし、最善はわかっていても、それができるかどうかは話が別。緊張しきりで速い遅いとズレるもの。上手くできるかどうかで度胸が見える。

 JCは軽い足取りで通りの半ば手前に差し掛かる。

 それを見図らい、目麗しい口裂けジジイいざ出陣。口裂けジジイは音もなく背後からJCに接近。

 登場のタイミングもさることながら、その足取りに若たぬき達「ムムッ」と唸り瞠目する。

 足音を立てないように抜き足差し足忍び足であるはずなのに、その歩く姿は少しも美しさが損なわれていない。足は地についているはずなのに、まるで少しもついていないかのように滑るようにススゥーと進んでいく。

 もし、この光景をたまたま通りかかったお客が目にしたならば、その不可思議で見事な動きに言葉を失うに違いありません。


「ねぇ、あなた……」


 か細いながらもしっかりと耳に届く芯のある声。口裂けジジイが声をかける。


「はい?」と振り向くJC。その瞬間、驚きに大きく目を開かれる。

 

 直接捕まえていなくても圧迫感を感じる絶妙な間合い。

 気づかれずにこれほど近くにいくとは! まさに逃げるに逃げれない絶妙な距離感!

 一見何でもないようなことをしているように見えますが、どれも一級の技量にございます。

 さらにJCが息を飲んで言葉を発しようとした絶妙なタイミングでジジイは台詞をかぶせてくる。


「私、綺麗?」


 JC、思わず言葉に詰まる。聞かれたままに突然現れたマスク美女を上から下へ下から上へと視線を上下させては数度確認。

 返答困窮。少女の答えに観客たぬきも息を飲んで前のめり。


「えっと……たぶん綺麗かな……?」


 ざわり。「答えた!」「答えたよ!」「綺麗だって!」「綺麗って言った!」

 口裂けジジイはニヤリと一笑。たぬき観客ゴクリと注目。

 ジジイ、ここぞとばかりにマスクに手をかけた!


「これでも?」


 あらわになる不気味に裂けた口。


「きゃああああっ!」


 白い頬に不気味に大きく裂けた赤い口。瞬間、JCは悲鳴と共に脱兎の如く駆け出した!

 さすが熟練! 見事な運び! お客のウケは上々です!

 これには観客たぬき達の視線も熱い!


(だが、今回はここでは終わらん!)


 JCが驚き逃げて退場とともに口裂け女終幕かと思いきや、なんと口裂けジジイ、その場でかがむとクラウチングスタートで逃げるJCを追いかけ始めた。激しく振られる腕にピシリと伸びた指先、躍動する両腿になびく黒髪! その姿はマスクをとった時以上のインパクト。


「「「おおっ!?」」」

 

 どよめいたのは観客たぬきでございます。


「おい、綺麗って答えたんだからここで終わりじゃねぇのかい?」 

「芳松のジジイ、後半もやる気か!?」


 と中年たぬき。口裂け女は、お客に二択を迫りその選択により演者の行動が変わるという出し物。綺麗と言えば、怖いものを見せられ、綺麗じゃないと言えばそれよりも怖い目にあってしまうのです。

 ですが、こういった出し物では矛盾が生まれると、不気味さ怖さが薄れてしまうもの。一方を選んだことでこの結末が生まれたという事実がお客自身の心に後悔を生み、そのことが恐怖を煽る演出となっているのです。もし理不尽な展開に持っていたとすれば、その演出が無駄になってしまうかもしれません。


「どう整合性をつける気だ? 綺麗と言われたのに追いかける理由もないだろうに?」

「無理やり続ける気なのか?」


 するとスプリンターのように走り出した口裂けジジイ、走りながらこう言った。


「これでも? さあ、もう一度よく見て! これでも私は綺麗!?」


 口裂けジジイ、マスク無しの状態でもう一度確認しろと迫る!

 なるほどこれならそれほどおかしな展開ではありません。

 この機転に若たぬき達また唸る。そしてこの内心「ジジイやるな」と思い始めてしまう。

 まさにジジイ大活躍。口裂けつつも得意満面。

 さらに逃げ道は気づかないうちに人気のない方へと黒子たぬき達が誘導するという周到ぶり。

 JCは恐怖におののき必死の激走。

 

「ちっ! ジジイのクセに!」

「確かにこれなら噂になるな!」


 昔とった杵柄。ジジイはまさに歴戦のジジイだったのでございます。

 悔しいが、してやられたのは自分達の方だったか! そんな風に誰もがこの一席の成功を予感したその時でございました。

 まずはじめに異変に気がついたのは観客席にいた子だぬきにございます。


「ねぇ、口裂け女さんと女の子はいつまで追いかけっこするの?」

「そりゃあ坊主、口裂け女があの子を追い詰めるまでだろうな」

「追い詰めるって、どういうこと?」

「口裂け女があの女の子に追いつくか、もしくは女の子が疲れて追いつかれるか、ってとこだな」

「じゃあ、女の子が捕まるまでってこと? それまで口裂け女さんは女の子を追いかけ続けるの?」

「まあ、そう言うこったな」

「ふーん、でも、口裂け女さんと女の子の間が広がっている場合はどうなるの?」

「間が広がるって、それは……なに?」


 とある都市伝説によれば、口裂け女は百メートルを六秒、つまりは時速六十キロで走る俊足なんだとか。

 しかし、この伝説は芳松の口裂け女を元ネタにして人間が作り出した都市伝説でございます。

 变化之術は姿を変えたものの性質をそのまま再現することが可能です。鳥に化ければ空を飛べるし、魚に化ければエラ呼吸で泳げてしまう。もし、芳松がヒグマに变化をしていたならば、全速力で時速六十キロで走れたかもしれません。

 ですが、今の芳松は口裂け女であり姿は人間。口は裂けておりますが、中身はジジイのうら若き乙女なのでございます。

 とても時速六十キロなどで走ることなどできません。

 加えて、もう一つ新たな事実が明らかになりました。


「あ、あれ? よく見たら、あれって、明日香ちゃんじゃない?」

「ああ! 本当だ! 大石明日香だ!」


 声を揃えたのは、普段人間に化けていろは第三中学に通うTJC(たぬき女子中学生)達。


「大石明日香? 有名人なのか?」

「有名も有名! いろは第三中学の陸上部は全国レベルなんだけど。明日香ちゃんは全国大会常連なの!」

「強豪高校からスカウトが来るくらいの有名人だよ!」


 きゃいきゃい自分達のことのように自慢するTJC達の言葉にたぬき達は汗タラリ。


「陸上の全国大会出場の猛者? おいおい、ってことはよ……」

「中学生でも、普通の大人より全然走れるだろうな」

「じゃあ、芳松のジジイはあの子に追いつけない?」

「追いつけないどころか逃げ切られるかも?」

「待てよ!逃げ切られたら、これをどう締めるってんだ!?」

「走り続けるしかないのか?」

「ジジイが? このまま!?」


 そんな事実に観客たぬき達が青ざめていた頃、口裂けジジイも異変に気がついておりました。

 差が縮まらない。いえいえ、それどころか差は広がってきている。錯覚ではなく、目の前を走る小さな背中が離れていっています。

 激走大石明日香はすでに学生カバンを投げ出し荷物はなし。部活帰りということもあり、靴はローファーではなく運動靴。スカートの中には短パン装着。躍動する強靭な腿によっていくらスカートが跳ね上げられようとも少しも臆することはありません。

 細い路地も凸凹の道も、多少の障害物も、急に飛び出したお魚咥えたドラ猫でさえもパルクールマスターの如きの身のこなしスラリと避けて駆けていく。そのうえ走り始めてから数十秒でスイッチが入り、さらに加速していく始末。

 それを追う口裂けジジイは、最初の勢いはどこかやら、すでに息はあがるし腿は重い。履いたヒールで足も痛い。

 これはあれか? タバコのせいか? 

 息が苦しい。苦しいなんてもんじゃない。このまま昇天する勢いだ。

 それとも酒か? 酒を飲みすぎたせいか?

 体が重い。重いなんてもんじゃない。いい一撃をもらったボクサーが膝から崩れ落ちていくように、今にも膝から崩れおちそう。


「ハヒィ、ハヒィ……」


 垂れる汗に鼻水、ヨダレに涙でジジイの異様さは当者比で五割増し。


(止まるわけにはいかん、止まるわけには!)


 ジジイは予定を大幅に超えて走りつづけておりましたが、追い詰められない以上走るのをやめるわけにはいきません。

 今ここで諦めれば「口裂け女が現れたけど走ったら逃普通にげ切れたよ!」などという不名誉な噂が街中に広がることでしょう。

 そんなものは口裂け女の本当の結末ではありません。

 年老いたとは言え、变化たぬき芳松、一度始めた物語を不完全な形で終わらせることなどプライドが許さないのです。

 しかし、どんなに意地を張ろうとも、どんなにプライドが許さなくても、タバコと酒に浸る日々が戻るわけではございません。

 そう、これは間違いなく追いつけない。誰の目にもその差は明らかにございます。

 しかしこのままでは終われないのもまた事実。と、その時、ハッとして中年たぬきが声をあげる。


「ポマードだ!」


 それは口裂け女を退ける合言葉「ポマード」。


「あの明日香って子がポマードと言えば、この一席を締めることができる!」

「そうか、ポマードに恐れて逃げるってことで口裂け女は退場できる!」

「振り返らなくてもいい、走りながらでもいい、呟くだけでもいい、とにかくポマードと言ってくれればそれでいい!」

「明日香ちゃん! ポマードだ! ポマードって言うんだ!」

「ポマードが弱点なんだ! ポマードって言ってくれ!」

「聞き逃さないから! 頼むポマードを頼む!」



 観客席から若たぬき、中年たぬき、子だぬき、TJCが一斉に祈りのようなポマードコール。


「「「「ポマード! ポマード! ポマード!」」」」


 口裂け女を終わらせ、ジジイを助けるにはもはやこれしかありません。

 しかし、観客たぬき達は一緒にポマードコールをしていたはずのTJCの言葉に我が耳を疑いました。


「ねぇ、ところでポマードって何?」

「「「「はぁっ!?」」」」


 先程のポマードコールがうそのように静まり返る観客席。たぬき達それぞれ顔を見合わせる。そして恐る恐る中年たぬきはこう尋ねる。


「お、お前ら、ポマードを知らないのか? じゃあ、口裂け女の噂は? 口裂け女の弱点は!?」

「はぁ? 口裂け女の苦手なもの? 整髪料でしょ? ちゃんと学校で広めておいたよ!」

「整髪料って……お前ら、整髪料って言ったら?」

「うーん? ワックスとか?」

「「「「ワックス!?」」」」


 ここにいるTJC達は口裂け女が出るという噂を事前に学校で流しておく係。これは演目をより一層楽しめるように、その演目のルールや予備知識をあらかじめ広めておく宣伝のようなもので变化勝負では必ず行われるものにございます。

 口裂け女という恐ろしいものが出現するかもしれないということはもちろんのこと、その弱点が「ポマード」という言葉であることもそれとなく広めて置くことでよりこの舞台を楽しんでもらうという手はずです。


「こいつらが知らねぇとなると、あの逃げている子が知っているはずがねぇ!」

「ってことは、あの子は口裂け女への対処法を知らないから一生懸命逃げているのか!?」

「口裂け女との差は縮まらない上に走るのが得意……。だとしたら、あの子は逃げ続けるよな?」 

「なんてこった! 止まらねぇぞ、これは!」


 明日香ちゃんは止まらない。となれば、ジジイは限界突破をしても止まれない。


「誰か、ジジイに伝えろ! いますぐ口裂け女を締めるんだ!」

「でもこのまま終わったら、口裂け女は中途半端になっちまうぞ!」

「バカ! ジジイがピンチだろうが! このままジジイを走り続けさせるつもりか!」

「黒子の奴らに壁を作らせろ! 明日香ちゃんの足を止めるんだ!」

「もう遅いよ! あんな先まで黒子はいないし、追い詰めてもポマードが言えなんじゃ締まらない!」


 口裂け女の途中退場。それはこの一席が失敗したことを意味します。とはいえ、最後の決め手であるポマードがない今、どうすることもできません。たとえ口裂け女が失敗したとしても今は走り続けるジジイを救うことが優先です。


「とにかくジジイを止めるしかねぇ! ジジイに明日香ちゃんがポマードを知らねぇって伝えるんだ!」

「どうやって!?」

「誰がやるんだよ!?」


 と、その時「その役目、俺達に任せろ!」と響く凛々しい声。

 黄昏の空を舞飛ぶ七つの影。赤タヌ、青タヌ、緑タヌ、黒タヌ、紫タヌ、黄色タヌ、桃タヌ登場。シュタッと観客席に舞い降りる!

 たぬき一家を影から支える七つの影、その名を影の七タヌ。


「俺達が口裂け女を終えるように芳松さんに伝えてみます!」


 リーダー赤タヌの言葉に観客たぬき達が沸き立った。

 七タヌはたぬき一家を支える影の存在であり、一家でもエリート中のエリート。正体は秘密のベールに包まれておりますが、その実力は折り紙付き! みんなの憧れの存在でございます。


「赤タヌ達が来てくれたなら安心だ!」

「ジジイを助けてやってくれ!」

「今度は若者の力をジジイに見せてやってくれよ!」


 そんなみんなの声援に受ける赤タヌの肩をポンと柔らかな肉球の手が叩く。


「まあ、待て」

「えっ?」

「芳松が頑張っているんだろう? それなら今回はワシらが一肌脱ぐとしようじゃないか」


 そう言ったのは、夫婦仲良く眠っていた老たぬき、楓のジイさん。


「それに、今日は若いもんに発破をかける日なんだろう?」

「お、おい、楓のジイさん、これ以上話をややこしくしないでくれ! ここは赤タヌ達にまかせておけよ!」

「なに、少しだけ手助けしてやるだけさ。いくぞヨネさん。巽、お前さんも行けるか?」

「はいよ」

「おおぅ、今日はそんな日か。ならいっちょ行くか」


 楓の奥さんであるヨネと若い娘のしっぽに夢中だった酔いどれの巽もよいしょと立ち上がる。


「おいおい、ジイさんとバアさんで何するつもりだ?」


 若たぬき衆が見守る中、楓はジジイとは思えぬ軽快さで宙返り。

 すると楓は赤い仮面に赤いマフラー、背に楓の文字の刺繍の入った羽織をまとって華麗に推参。


「え、ええ!? ジイさん、その姿は?」

「楓さまは初代赤タヌだ」

「なんだって!?」


 見れば、ヨネは白い仮面に白いマフラーをつけ白タヌに、巽は青い仮面に青いマフラーをつけ青タヌに変身しておりました。

 この老たぬき、歴代影タヌキの中でもその名を轟かせた伝説の三タヌだったのでございます。

 三匹の姿に、七タヌは膝をつき頭を下げる。その七タヌの姿に、観客たぬき達はびっくり仰天。


「三代目、この状況お前さんならどうする?」

「はい。芳松さんにお客である明日香ちゃんがポマードを知らないことを伝え、タイミングを見計らい口裂け女がこつ然と消える形で退場できるように仕向けようかと思います」

「なるほど悪くない案だが、それでは芳松の思いも叶うまい」

「ならば如何様に?」

「あの子に「ポマード」と言わせるのさ、そして口裂け女の幕引きだ」


 初代赤タヌの言葉に驚いたのは若たぬき達でございました。


「知らないものをどうして言わせることができるってんだ?」

「ないからできない。知らないからやれない。無理だ、ダメだ、どうにもできねぇじゃねぇんだよ。要は、やる気があるかどうかだ」


 こうして観客たぬきと七タヌが見守る中、初代赤タヌ達は観客席を飛び出していったのでございます。

 飛び出したと言っても、爆走続ける口裂け女と明日香ちゃんは全力高速移動中。その速度と距離はかなりのものにございます。到底たぬきの足で追いつくものではございません。

 すると、飛び出した三匹一瞬にしてハリオアマツバメに变化する。

 飛ぶのが速い鳥と言えばハヤブサが有名にございます。ハヤブサが急降下する速度は時速三百キロを越えるとも言われていますが、水平飛行ではハリオアマツバメの軍配が上がります。その速度は、なんと時速一七〇キロ。


「う、うそだろ? ジイさんらの速度、正気か?」


 若たぬき達は度肝を抜かれました。

 確かに、变化之術は鳥になれば空を飛べ、魚になればエラ呼吸で泳ぐことが可能。

 ハリオアマツバメになれば、水平飛行で時速一七〇キロも可能なのは間違いありません。しかし、その速度を出せることと、実際にその速度を出すのはまた別でございます。

 何せ体は身軽でカッコいい流線型のハリオアマツバメになったとしても、中身はあくまでたぬきハート。

 最高速度で三百キロ出る車があったとしても、実際にその車で三百キロを出す勇気がある人がどれほどいるでしょう?

 速度が出せるのと、コントロールできることは全然違うということを变化たぬき達はよく理解をしています。ましてや何も身を守るものがない状態です。当然、そんなことやろうとする命知らずたぬきは若たぬきと言ってもいないのです。

 若たぬき達の驚きを尻目に、三匹のハリオアマツバメは瞬く間に口裂け女を目指して飛んでいくかと思いきや、通りを一つ越えと商店街通りを飛んで行く。口裂け女と並走するように通りを一つ挟んで滑空。

 すると三匹の内の一匹が、空中でハヤブサに姿を変えました。


「变化したのは巽のジジイだ!」

「嘘だろ!? あの速度の中、スピードを落とさずに变化した!?」


 そのハヤブサの足を掴むは、ネズミに姿を変えた赤タヌ楓。

 ハヤブサは上空より商店街へ急降下。時速一七〇キロからアッと言う間に三百キロ!


「なんで商店街? 何のために?」


 ハヤブサは地面に衝突する寸前で姿を消す離れ業。あまりの速度に通行人の誰も気がついておりません。

 一方ネズミの化けた楓は何やら背負って、ヨネの背に乗り再び上空に姿をあらわす。ヨネはそのまま口裂け女のあとを追う。



   急



 垂らしたヨダレが、パリパリに乾き始め、口裂けジジイの意地とプライドをかけたダッシュに近いマラソンももはや限界。

 目の前に見える中学生のなんと足の速いことか。なんと体力のあることか。ここに来てさらに伸びているような気がするではないか。

 これが若さというものか……歳をとった。芳松は酸欠の中で痛感する。「このままでは終われない。」その一心で走り続けてきたが、もはや肺と心臓が爆発寸前。

 ふと、視界横に並走するように飛ぶ、ネズミを背に乗せる鳥の姿。


(ちっ、こんなところにハリオアマツバメだと……? 酸欠で幻覚まで見え始めやがった)


「なんだ芳、まだ余裕がありそうじゃないか」


 聞き覚えのあるその声。

 口裂けジジイ思わず声を上げそうになるが、すでに喉はカラカラ声など出ない。


「……おま……かえ……」

「わかっている。久しぶりの舞台で張り切ったんだろ? 昔から変わらないな」


 ネズミの楓はニヤリと笑う。 


「芳、お前の腕は一流だ。だがよ、大ベテランが若い奴らと肩並べてどうするよ? お前がいつまでもこんな場所にいたら若い奴らが出てこれねぇじゃねぇか。昔の俺達がそうだったようによ」


 赤タヌ楓の言葉に、口裂けジジイ芳松は走馬灯のように駆け出しの頃のことを思い出す。


 年寄りどもは何もわかっちゃいない! 昔ながらのやり方や代わり映えのしない出し物ばかりを何度もやらせやがる。

 俺なら、俺達ならもっとできる! 新しくて、面白くて、お客ウケのいいものが作り出せる。そんな風に思って突っかかって、仲間を巻き込んで喧嘩をしたりもした。

 もちろんそれだけじゃない。認めさせたい一心で、普段の稽古だけでなく、自分一人でも芸を磨いた。

 その結果、口裂け女が生まれた。

 口裂け女は空前の大ヒット。その噂は全国に広がり。まさに伝説となった。

 俺が作った! 俺の手柄だ! どうだ、ジジイども! そんな風に思った。

 けれど、それは違っていた。

 あとになって見れば、あの時のジジイや大人達が陰で支えてくれて、それとなく助言してくれて、時には問題児でもあった自分を庇ってくれて、チャンスを与えてくれていた。


 口裂け女の成功を境に、それまで一線で活躍していたベテラン達は少しづつ引退をしていく。

 その時のジジイの顔を芳松は今でも忘れておりません。


(ああ、そうだった。あんなに怖かったジジイらがあんな優しい目をして、あとは頼むってよ……そうか、そうだよな……)


 芳松はその後もさらに芸を磨いた。そして現役にもこだわった。舞台から距離を置いている時も、完全に引退するという気持ちもなかったし、稽古を怠ることもなかった。


「……楓、俺は……」


 ジジイらにあとを頼まれてたのによ、クソ、サボりすぎちまったか……。

 芳松はすでに跡取りのいる赤タヌ楓を羨ましく思う。


「なんだ?」と楓。

「……酒が飲みてぇ、たまには付き合えよ」

「ああ、早く帰ろうや、今夜のお客ももうずいぶん楽しんだだろうしな」

「……楽しめて、いたか?」

「もちろん、人もたぬきもな。……さあ、幕を下ろすぞ! 口裂け女、ヌカるなよ!」


 赤タヌの言葉に口裂けジジイ口角上げて不敵に笑う。

 ハリオアマツバメは急旋回。赤タヌは背負っていた荷物を明日香ちゃんの前に投げ出した!

 突然降ってきたそれに明日香ちゃんの速度が緩む。けれど、口裂けジジイが追いつけるほどじゃない。足は痙攣、走るどころか立つのもやっと、そのまま倒れてしまいそう。


「がんばれ! ジジイがんばれ!」

「もう少しだ口裂け女!」

「あとちょっとだ!」

「倒れるな! 踏んばれジジイ!」


 観客たぬき達は思わず声をあげる。

 降ってきたものを確認するために明日香ちゃんの視線がわずかにそれる。その隙きに、ネズミ赤タヌ道を塞ぐ壁に化ける。


「えっ? ええ!?」


 足は止まった。

 迫る口裂け女。明日香ちゃんの足元には先程降ってきた小瓶が一つ。彼女は反射的にそれを手に取ると近づいてくる口裂け女めがけて投げつけた。


「ぎゃああああっ!」


 響き渡る渾身の悲鳴。迫真の口裂け女。


「ポマードぉぉぉぉ!」


 赤タヌが明日香ちゃんに投げた小瓶! 明日香ちゃんが口裂け女に投げた小瓶! それはまさに口裂け女の弱点ポマードにございます。 そのポマード、何故か蓋は緩み中身が飛び出し口裂け女にストライク。


「ポ、ポマード……?」


 口裂け女の絶叫を思わず復唱。口裂け女はひどく怯える。これまた異様で不気味。明日香ちゃんはただただその光景に目を奪われる。

 その勢いのまま口裂け女は退場し、不気味な静けさが残る舞台上に一人残され茫然自失。

 腰が抜けるほど堪能した明日香ちゃん、フラフラになりながらやっとの思いで路地を出る。


 路地裏の喧騒去りて静寂に夜風とともに口裂け女。 


「芳松!」

「よっ! 名人芸!」


 誰もいなくなった路地に沸き起こるは拍手拍手、拍手の嵐!

 これにて老たぬき芳松の「口裂け女」終幕也。


   ☆彡


 その後、以前ほどではないにしろ再び口裂け女の噂が広がりを見せました。


「学校の帰りに道、突然マスクをした女性に声をかけられるらしいよ。「私、綺麗?」って突然聞いてきて「綺麗」って答えるとマスクをとって不気味な裂けた口を見せてくるんだって。逃げようとしても無駄みたい。だって、口裂け女って、とんでもなく足が速いらしいの! 陸上の全国大会に出るようなレベルの子でも逃げ切れないかったっていうから。えっ? じゃあ、どうしてそんな恐ろしい口裂け女から逃げ切れたのかって? そう、忘れちゃいけない大事な言葉があるんだ、それはね……」


 この噂はきつね一門の耳にも届きました。伝説的名作の復活を大変驚くのと同時に、やはり外はたぬき領分と称賛したのだとか。それにたぬき達がどれほど鼻が高かったかは言うまでもございません。


 それから芳松はどうしたかって? 

 ええ、満身創痍だった芳松はしばらく動けず湿布のお世話になっておりました。それからは相も変わらずキセルをつまみに酒を飲む日々にございます。以前と変わったことと言えば、芳松が少し丸くなったと言われるようになったこと、それに彼の元に若いたぬきが教えをこいにくようになったことくらいかと。

 えっ? 芳松の教えとはどんな教えなのかって? 

 それはもちろん……いえ、それは彼の弟子とも言える若たぬきが頭角を見せ始めた頃にでもいたしましょう。



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