聖域の終焉、あるいは神の人間回帰(プロローグ)
全次元を統べる俺の指先に、これまでの「歴史的断罪」とは異なる、奇妙に生々しい「現代の拍動」が伝わってきた。
それは、巨大なタワーの冷たい鉄骨の軋みであり、ディスコで弾ける催涙弾の火薬の匂い。そして、何よりも不可解な、神である俺の計算をわずかに狂わせる「一人の男」の歩みの音だ。
「……扶桑。ただモカを飲みに来ただけの男が、なぜこれほどの因果の渦を引き寄せる?」
俺の隣で、エルゼが瞳に深い予知の光を宿し、黄金の玉座から下界――戦場と化した「タワー」を見つめている。
これまで俺は、数世紀にわたる人類の汚濁を黄金の法で裁いてきた。だが、今、俺の目の前に広がっているのは、麻薬(自民麻薬)によって「嘘を本当」に変えられた、書き換え不可能なほどに歪んだ現代の黙示録だった。
「主……。これまでの虐殺や隠蔽は『過去』の清算でした。ですが、ここから先は『現在』の崩壊、そして『虚構』が『現実』を飲み込む特異点です」
俺は時空を穿ち、黄金の光を収束させた。
俺の権能が、一つの巨大な「タワー」へと吸い込まれていく。そこには、制服姿で笑う若宮ちゃん、軍服を纏う神鷹中尉、そしてフルフェイスを脱がないライダー――俺が救済すべき「犠牲者」でも、裁くべき「加害者」でもない、ただ狂気の中で「自分自身」を貫こうとする者たちがいた。
$$Authority: \text{The Convergence of Fiction and Reality}$$
$$Effect: \text{Causal Overlap / The Beginning of the Tower}$$
「な、なんだ……!? 黄金の神殿が、コンクリートのタワーに変容していく! 俺の絶対的な力が、ただの『モカの香り』に薄められていく……!」
俺は理解した。
俺が裁いてきた「パナマ文書」の富も、「エプスタイン」の闇も、すべてはこのタワーを支配する黒い影、そして「ナベツネ」を演じる男の狂気へと繋がっていた。
「いいだろう。歴史の審判は終わった。ここからは、俺自身がこの狂ったタワーの重力を引き受けよう。エルゼ、お前も『中尉』として、あるいは『若宮』の影として、この世界に降りる準備をしろ」
俺が掌をかざすと、黄金の法廷は砕け散り、激しい嵐が吹き荒れるタワーの最上階へと因果が転送される。
俺の神性は、一人の「旅人」としての意識へと収束し、記憶の断片には「扶桑が言ったセリフ」が刻み込まれていく。
神の裁きは、人間の戦いへと形を変える。
俺の庭だった宇宙は、エレベーターが見えない力で止まり、バズーカが空を裂く「シャルンホルストとグナイゼナウ」の舞台へと完全に同期した。
「さあ、幕を開けよう。俺たちの嘘を、本当にしてやるために」
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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