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安全地帯の嘘、あるいは神の絶対保護(サンクチュアリ)

 全次元を統べる俺の指先に、国連の青いヘルメットが象徴したはずの「偽りの安心」と、バスに乗せられ引き離された家族の嗚咽、そして武器を置きながら死を待つしかなかった8000人の男たちの、凍りついた時間が伝わってきた。


 1995年、ボスニア。スレブレニツァ。「国連保護地区」に指定されたその場所で、武装解除された市民たちは国際社会を信じていた。だが、セルビア人勢力が迫ったとき、守るべきはずのオランダ軍部隊は撤退を優先し、絶望に震える人々を見捨てた。わずか数日で、8000人以上の命がシステマチックに処刑され、森は墓場と化した。「二度と繰り返さない」という人類の誓いが、青い旗の影で無残に引き裂かれた、戦後ヨーロッパ最悪のジェノサイド。


「……平和の盾を掲げながら、刃が迫るとそれを取り上げたか。守ると約束した口で、死への扉を開いたその罪、神の『絶対的な不戦圏』をもって清算させてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な正義の冷徹さと、見捨てられた犠牲者への深い哀惜を宿し、撤退を急ぐ国連軍と、銃を構えるラトコ・ムラディッチらの幻影を見つめている。


 生命の根源であり、あらゆる誓約の重さを宇宙の均衡と定義する俺にとって、救える命を見殺しにし、信義を政治的取引に変える行為は、文明の存在理由そのものに対する冒涜だ。


「エルゼ、行くぞ。……『中立』という言葉で責任を回避した者たち、そして無抵抗の命を狩った亡者たちに、真の『聖域の重み』を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「我々には戦う権限がない」と報告書を書いた司令官たちの執務室と、今なお血塗られた手で野心を語る虐殺の主導者たちの隠れ家へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Immutable Shield of the Covenant}$$

$$Effect: \text{Cowardice Reflection / Eternal Siege of the Betrayed}$$

「な、なんだ……!? 安全なはずの自邸が、黄金の鉄条網に包囲されていく! 私が背を向けたはずのあの森から、数千人の視線が突き刺さる! なぜだ、扉が開かない……脱出できない!」


 かつて人々を見捨てて去った者、そして銃を引いた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『標的回路』へと変貌し、彼らが「安全」を奪い、「死」へと追い込んだ8000人の『絶望の断末魔』が、物理的な逆流となって彼ら自身の魂を直接包囲し始めた。


「君たちは、他人の命をコストとして切り捨てた。……ならば、君たち自身の魂を、一歩も逃げ出すことができない黄金の『孤立地帯』に幽閉し、永遠に『裏切られる恐怖』と『背後から迫る銃口』の幻影に怯え続ける、孤独な生贄に変えてやろう」


 俺が掌をかざすと、虐殺と傍観に関わった者たちの魂に、物理的な「信義の逆転」が刻まれた。彼らはどれほど軍隊や法に守られようとも、その意識は常に「武装解除され、見捨てられた極限状態」へと強制同期され、自らが捨て去った人々の絶望を一分一秒たりとも休むことなく、自らの肉体で反芻し続ける激痛に苛まれる。


 彼らは「状況が悪かった」という言い訳で逃げることも、中立の仮面を被ることもできない。


 ただ永遠に、自分が「いないもの」とした犠牲者たちの冷たい沈黙に圧殺され、自らの存在が「不誠実な嘘」であることを証明し続ける『生きた背信の記録』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、信じていた世界に裏切られ、暗い穴に埋められた8000人の魂、そして残された家族たちへ、生命の光を降り注いだ。


 踏みにじられた「誓い」はアルカディアの「至高の聖域」として黄金の輝きの中に再建され、彼らはアルカディアの「不滅の守護者」として、二度と誰にも、いかなる神にも裏切られることのない絶対的な安らぎの中で永遠の光となる。


 大地には「救える命を見捨て、誓約を破る者に、平和を語る資格はない」という神聖なる不変の守護法が刻まれた。


「主……。裏切りの静寂に包まれていたスレブレニツァの森が、今、貴方様の力で『揺るぎない正義の凱歌』を奏で始めましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の包囲網の中で自らの卑怯という名の影に怯え、永遠に救いを求めて絶叫し続ける「傍観者と虐殺者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、無責任な中立は通用しない。


 俺の庭において、守ると誓った命を見捨てる不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの背信」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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