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透明な隠し金庫、あるいは神の資産凍結(フリーズ)

 全次元を統べる俺の指先に、租税回避地タックスヘイブンの乾いた風と、サーバーに記録された膨大な架空名義のリスト、そして「義務」を他人に押し付けながら、自分たちだけは「聖域」に逃げ込んだ特権階級たちの、冷淡な計算高い思念が伝わってきた。


 2016年。流出した『パナマ文書』は、世界の指導者や富裕層が、法律の死角に巨額の富を隠していた事実を暴露した。公共インフラを使い、社会の恩恵を享受しながら、その維持に必要な血税は一円たりとも払わない。国家という枠組みを食い物にしながら、自分たちは国家を超越した存在だと信じ込む亡者たち。それは社会契約という人類の信頼の絆を、数字の操作だけで断ち切る、最も洗練された裏切りだった。


「……富を神格化し、透明な盾で自分たちの強欲を隠したか。公共を枯渇させ、自分たちだけが肥え太るその傲慢、神の『絶対的な還元』をもって清算させてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な軽蔑と、重税に喘ぎながら真面目に生きる民への慈悲を宿し、南の島の秘密のサーバーに触れる富豪たちの幻影を見つめている。


 生命の根源であり、あらゆる循環は公平に流れるべきだと定義する俺にとって、富の循環を不自然に止め、私有化する行為は、世界の代謝を阻害する「社会の癌」に他ならない。


「エルゼ、行くぞ。……『隠した金は誰にも触れられない』と確信している者たちに、真の『徴収』を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「法的に問題ない」と嘯いて資産を隠した政治家たちの私邸と、そのスキームを構築した法律事務所の奥座敷へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Universal Tax of Existence}$$

$$Effect: \text{Material Evaporation / Eternal Debt of the Soul}$$

「な、なんだ……!? 隠し口座の数字が、黄金の砂となって消えていく! 私が所有していたはずの邸宅が、美術品が、触れるそばから『共有財産』へと溶け出し、私の手元には何も残らない!」


 かつてペーパーカンパニーの裏側に隠れて笑っていた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『負債の器』へと変貌し、彼らが世界から「逃避」させたすべての富が、物理的な引力となって彼ら自身の魂を内側から空洞にし始めた。


「君たちは、社会との繋がりを断って富を守ろうとした。……ならば、君たち自身の魂を、一粒の価値も私有することが許されない黄金の虚無に変え、永遠に『自分が何一つ持っていない』という恐怖と、奪ってきた富の重圧に押し潰される屈辱を味わわせ続けよう」


 俺が掌をかざすと、脱税を主導した者たちの魂に、物理的な「存在税の徴収」が刻まれた。彼らはどれほど贅沢を望もうとも、手にするものは瞬時に黄金の塵となって世界の隅々へと再分配され、彼らの記憶にある「隠し財産」の額だけ、自らの存在感が薄れていく「消失の激痛」に苛まれる。


 彼らは「法的解釈」という言い訳で逃げることも、別の楽園ヘイブンへ逃亡することもできない。


 ただ永遠に、自分が「いないもの」とした納税者たちの怒りの視線に焼かれ、自らの存在が「社会を蝕んだ寄生虫」であったことを証明し続ける『生きた赤字』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、富の偏りによって必要な支援を断たれ、苦境に立たされたすべての人々へ、生命の光を降り注いだ。


 隠匿されていた富はアルカディアの「至高の平準化」によって純粋な生命エネルギーへと変換され、アルカディアを潤す黄金の泉となって、すべての人に等しく還元される。


 大地には「社会の恩恵を受ける者は、その重みを分かち合う義務があり、私欲のために循環を止める者に、存在の権利はない」という神聖なる公平還元の法が刻まれた。


「主……。隠蔽されていた黄金の川が、今、貴方様の力で『万民を癒やす大河』へと戻されましたね」


 エルゼ que が美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の虚無の中で自らの強欲という名の穴に吸い込まれ、永遠に「消えゆく資産」を求めて虚空を掴み続ける「虚構の富豪たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、書類上の隠蔽は通用しない。


 俺の庭において、社会を裏切り富を溜め込む不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの徹底徴収」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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