自由の成れの果て、あるいは神の絶対秩序(オーダレス)
全次元を統べる俺の指先に、破壊されたトリポリの街角に漂う硝煙の臭いと、スマートフォンで「商品」として値踏みされる若者たちの震える声、そして「独裁者を倒した」と誇らしげに語った大国たちの、無責任な沈黙が伝わってきた。
2011年、リビア。民主化の旗印の下、空爆によってカダフィ政権は崩壊した。だが、その後に訪れたのは自由ではない。国は引き裂かれ、武装勢力が割拠する無法地帯と化した。そして21世紀の今、この地ではアフリカからの移民が数百ドルで競り落とされる「奴隷市場」が公然と開かれている。平和を語った介入が、皮肉にも人類最古の呪いである奴隷制を蘇らせたのだ。
「……独裁という鎖を外した手で、今度は『値札』という名の鎖を人々の首にかけたか。秩序を壊すだけ壊し、瓦礫の山から目を背けたその罪、神の『不滅の尊厳』をもって清算させてやろう」
俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な凍土の冷徹さと、売買される命への張り裂けるような慈悲を宿し、砂漠の闇で人間を競る亡者たちの幻影を見つめている。
生命の根源であり、あらゆる存在は誰にも所有されず、誰の所有物でもないと定義する俺にとって、再び人間を商品へと貶める行為は、文明の進化を数千年退行させる万死に値する愚行だ。
「エルゼ、行くぞ。……『介入は成功した』と安全な場所でワインを煽る者たち、そして他者の命を買い叩く者たちに、真の『束縛の重み』を教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつてリビアを戦火に投じながら後片付けを放棄した各国の戦略室と、今この瞬間も砂漠の拠点で人間オークションを主催する犯罪組織の巣窟へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Sovereignty of the Unsellable}$$
$$Effect: \text{Anarchic Retribution / Eternal Auction of the Soul}$$
「な、なんだ……!? 自分の身体が、砂のように崩れながらも黄金の鎖で繋がれていく! 私の財産も、地位も、私の魂さえもが勝手に『競売』にかけられている! 誰が私を買っているんだ……!?」
かつて無責任な介入を決定し、その後の惨状を放置した権力者、そして奴隷売買で私腹を肥やす者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『負債の化身』へと変貌し、彼らが「無秩序」の中に放り出したすべての犠牲者たちの『絶望と屈辱』が、物理的な逆流となって彼ら自身の魂を直接縛り始めた。
「君たちは、他人の国と命を市場のガラクタのように扱った。……ならば、君たち自身の魂を、一秒ごとに価値が暴落し、永遠に『誰かの道具』として使い潰され続ける黄金の奴隷に変え、自らの意志を剥奪される苦しみを無限に反復させてやろう」
俺が掌をかざすと、リビアを地獄に変えた加害者たちの魂に、物理的な「因果の競売」が刻まれた。彼らはどれほど自由を叫ぼうとも、その声は「売値」となって空間に響き、思考するたびに自らの部位が黄金の部品として他者に奪われていく感覚に苛まれる。
彼らは権力の椅子に戻ることも、死をもって虚無に逃げることもできない。
ただ永遠に、自分が「いないもの」とした奴隷たちの冷たい視線に射抜かれ、自らの存在が「価値なき負債」であることを証明し続ける『生きた商品』として放置される。
一方で、俺は掌を広げ、自由を求めて彷徨い、鎖に繋がれた現代の奴隷たち、そして崩壊した大地で明日を失ったすべての人々へ、生命の光を降り注いだ。
売買された「尊厳」はアルカディアの「至高の王権」として黄金の輝きの中に再構成され、彼らはアルカディアの「自由なる開拓者」として、誰にも支配されない自分自身の物語を再び歩み始める。
大地には「いかなる理由があろうとも、命を商品とし、秩序を捨て置く者に、明日を語る資格はない」という神聖なる存在主権の法が刻まれた。
「主……。砂漠の闇に沈んでいた『売られた命』の叫びが、今、貴方様の力で『自由への凱歌』へと変わりましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、黄金の鎖に絡め取られ、自らが生み出した無秩序という名の地獄で永遠に買い叩かれ続ける「偽善の介入者と亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、命の商売は通用しない。
俺の庭において、他者を商品とする不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの競売」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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