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操作される投票(インボイス)、あるいは神の意志決定(フリーウィル)

 全次元を統べる俺の指先に、SNSを流れる無数の「いいね」の残響と、ユーザーの深層心理を暴く冷徹な性格診断アルゴリズム、そして「自分の意志で選んでいる」と信じ込まされた数億人の、操り人形のような微かな震えが伝わってきた。


 2018年に発覚した、ケンブリッジ・アナリティカ事件。彼らは数千万人のFacebookデータを不正に取得し、個々の「心の隙」を突く広告を流し込むことで、大統領選や国民投票を裏で操作した。怒り、恐怖、偏見――人間の感情を「変数」として扱い、民主主義という人類の長い苦闘の成果を、単なるデータセットの最適化へと貶めた。それは物理的な暴力よりなお卑劣な、魂の選択肢そのものを盗む泥棒の所業だった。


「……人の迷いを計算機にかけ、情報の毒を盛って未来を歪めたか。自らの意志だと信じたものが、他者の書いたコードに過ぎなかった絶望、その身をもって清算させてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な軽蔑と、操られた群衆への深い憤りを宿し、データセンターの冷たいサーバーの明滅を見つめている。


 生命の根源であり、各々が悩み、葛藤し、自らの足で歩む「自由意志」を世界の至宝とする俺にとって、思考を密室でデザインし、操作する行為は、宇宙の進化に対する最も醜悪な妨害だ。


「エルゼ、行くぞ。……『世界をハックした』と自惚れる魔術師たちに、真の『選択の重圧』を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「有権者の精神を破壊し、再構築する」と豪語したアレクサンダー・ニックスら経営陣の秘密オフィスと、不正データを分析したデータサイエンティストたちの別荘へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Sovereignty of Individual Will}$$

$$Effect: \text{Recursive Manipulation / Eternal Paradox of Choice}$$

「な、なんだ……!? 自分の指が勝手に動き出す! 話したいことと違う言葉が口から溢れ、私の身体が私の意志を無視して動き続けている!」


 かつてアルゴリズムで世界を誘導した者たちが叫ぶ。彼らの精神は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『操り人形の糸』へと変貌し、彼らが世界に仕掛けたすべての「誘導」と「欺瞞」が、物理的な逆流となって彼ら自身の脳内ネットワークを乗っ取り始めた。


「君たちは、他人の心をプログラミングの対象にした。……ならば、君たち自身の魂を、一分一秒の思考さえも他者の意志に支配され続ける黄金の檻に幽閉し、永遠に『自分が自分ではない』という恐怖の中で、自らの自我が消滅し続ける無限のバグにしてやろう」


 俺が掌をかざすと、世論操作を主導した者たちの魂に、物理的な「意志の剥奪」が刻まれた。彼らはどれほど自分の意志で動こうとしても、その行動は黄金のアルゴリズムによって強制的に「最も屈辱的な選択」へと書き換えられ、自分が最も嫌う言葉を叫び、最も恐れる行動を繰り返させられる、永遠の精神的隷属に苛まれる。


 彼らは二度と自分自身の心を取り戻すことも、闇の中で策略を練ることもできない。


 ただ永遠に、自分が「駒」として扱った全人類の意志の重みに押し潰され、自らの魂がデータの塵へと分解されていく『生きた計算ミス』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、情報の濁流の中で自分の意志を汚され、分断を煽られたすべての人々へ、生命の光を降り注いだ。


 植え付けられた偏見と偽りの怒りはアルカディアの「至高の直感」によって浄化され、彼らの思考は、誰にも、いかなる計算機にも左右されない、純粋なる自由意志へと再起動される。


 大地には「いかなる技術も、人の意志を密かに操り、未来を盗むことはできない」という神聖なる精神独立の法が刻まれた。


「主……。データの網に囚われていた人々の魂が、今、貴方様の力で『自分自身の翼』を取り戻しましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金のコードに縛られ、自らの意識という迷宮の中で永遠に迷走し続ける「現代の魔術師たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、思考の誘導は通用しない。


 俺の庭において、自由意志をハックしようとする不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの操作」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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