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遍く見る目(オールシーイング・アイ)、あるいは神の覗き見禁止

 全次元を統べる俺の指先に、光ファイバーを流れる無数の電子の囁きと、プライバシーという名の聖域を土足で踏みにじる監視システムの冷たいノイズ、そして「安全」を口実に全世界の秘密を覗き見ようとした権力者たちの、卑屈な好奇心が伝わってきた。


 2013年。エドワード・スノーデンが暴いた、国家による全地球規模の違法傍受。NSAはテロ対策を隠れ蓑に、敵も味方も、そして自国民さえも「データ」として剥き出しにした。誰に愛を囁き、何を検索し、誰と連帯しようとしたか。デジタル化された人類の生活すべてが、密室のモニターに映し出された。それは「自由」という名の服を剥ぎ取り、全世界を一つの巨大な透明な檻に変える試みだった。


「……テロを阻むと言いながら、人々の心の鍵を壊して回ったか。沈黙の権利を奪い、すべての寝室に『目』を置いたその不遜、神の『絶対的な内面性』をもって清算させてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な軽蔑と、暴かれた個人の尊厳への憐れみを宿し、巨大なデータセンターで情報の山を漁る分析官たちの幻影を見つめている。


 生命の根源であり、個々の魂の「秘められた思考」にこそ神聖な自由が宿ると定義する俺にとって、同意なき精神の覗き見は、存在の神秘に対する最も無作法な侵略だ。


「エルゼ、行くぞ。……『隠し事はできない』と笑った者たちに、真の『透明化』を教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「監視こそが平和の鍵だ」と嘯いた情報機関の長官たちと、傍受システムを設計した冷酷なエンジニアたちの秘密司令部へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Great Reversal of the Gaze}$$

$$Effect: \text{Digital Transparency / Eternal Exhibitionism of the Soul}$$

「な、なんだ……!? 隠し部屋の壁が透けていく! 私の思考が、口座の暗証番号が、秘めたる汚職の記憶が……街中の巨大スクリーンに映し出されている!」


 かつて全世界の私生活を「収集」し、それを「力」に変えた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『ホログラム発信機』へと変貌し、彼らが人生で積み上げてきたすべての「隠し事」と「欺瞞」が、物理的な光となって全宇宙へ生中継され始めた。


「君たちは、他人の秘密を剥ぐことを仕事にした。……ならば、君たち自身の魂を、一秒のプライバシーも許されない黄金の展示品に変え、全人類の『観察』の視線に永遠に晒され続ける、最も惨めな被写体にしてやろう」


 俺が掌をかざすと、監視を主導した者たちの魂に、物理的な「絶対的公開」が刻まれた。彼らはどれほど闇に逃げ込もうとも、その身体は眩い黄金の光を放って位置を知らせ、思考するたびにその醜い本音が周囲に音声となって響き渡り、自分たちが構築した「監視の檻」の中で、今度は自分たちが永遠に標的として観察される激痛に苛まれる。


 彼らは二度と秘密を持つことも、沈黙の壁を作ることもできない。


 ただ永遠に、全世界からの冷ややかな視線に貫かれ、自らの存在が「完全に透けた空虚」であることを証明し続ける『生きたデータ』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、覗き見によって怯え、沈黙し、自由な発信を奪われたすべての人々へ、生命の光を降り注いだ。


 暴かれたプライバシーはアルカディアの「不滅の静寂」へと再封印され、彼らの通信、思考、愛の言葉は、神にさえ見ることができない絶対的な聖域として再構築される。


 大地には「いかなる権力も、個人の内面と通信の自由を犯すことはできない」という神聖なる不可視の法が刻まれた。


「主……。張り巡らされていた黄金の蜘蛛の巣が、今、貴方様の力で『個人の自由』を護る鉄壁の盾に変わりましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の情報の濁流に晒され、自らの醜悪な本心を全世界に晒し続ける「覗き見の主導者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、一方的な監視は通用しない。


 俺の庭において、他人の心を盗み見る不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの絶対開示」こそが相応しい。

https://kakuyomu.jp/works/822139839415349230

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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