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崩壊する意識、あるいは神の精神安定(リブート)

 全次元を統べる俺の指先に、幻覚剤によって歪められた極彩色の悪夢と、頭蓋を焼き焦がす電気ショックの火花、そして「自我」という名の聖域を泥足で踏み荒らされた人々の、声にならない叫びが伝わってきた。


 1950年代、冷戦下の闇。CIAの『MKウルトラ計画』。彼らはマインドコントロールのすべを得るため、自国民を含む無実の一般市民にLSDを盛り、数日間にわたる睡眠剥奪と感覚遮断を強いた。病院を、大学を、監獄を実験場に変え、人間の心を「部品」のように分解して再構築しようとした。それは神のみが許された領域――「魂の器」に対する、あまりに無機質で冷酷な侵略だった。


「……他者の精神をキャンバスのように汚し、自意識を破壊して人形に変えようとしたか。心の静寂を奪い、悪夢の中に突き落としたその罪、神の『絶対知性』をもって清算させてやろう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な否定の冷徹さと、自我を粉砕された犠牲者への深い憐れみを宿し、マジックミラー越しに被験者の発狂を記録する工作員たちの幻影を見つめている。


 生命の根源であり、個の意識の独立性を宇宙の多様性として尊ぶ俺にとって、他者の精神をハッキングし、人格を消去する行為は、生命の最も核となる尊厳へのテロリズムだ。


「エルゼ、行くぞ。……『人の心を弄べる』と確信していた者たちに、真の『意識の深淵』を見せてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「国家のためには個の精神など消耗品だ」と豪語したリチャード・ヘルムズら計画首謀者の秘密オフィスと、非人道的な実験を主導した科学者たちの隠れ家へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Sanctity of Infinite Consciousness}$$

$$Effect: \text{Cognitive Feedback Loop / Eternal Dissolution of the Ego}$$

「な、なんだ……!? 世界が歪む! 壁が溶け、床が私の脳を吸い取っていく! 自分の名前が思い出せない……! 私という存在が、霧散していく!」


 かつて薬物と拷問で他者の人格を破壊した者たちが叫ぶ。彼らの精神は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『共鳴回路』へと変貌し、彼らが犠牲者たちに味わわせたすべての「精神的苦痛」と「自我の喪失感」が、幾千倍のフィードバックとなって彼ら自身の意識を直撃し始めた。


「君たちは、他人を『空っぽの器』にしようとした。……ならば、君たち自身の魂を、永遠に終わらない悪夢と黄金の幻覚が渦巻く深淵へと幽閉し、自らのアイデンティティがミリ単位で削られ続ける『意識の流刑地』に落としてやろう」


 俺が掌をかざすと、実験に関わった者たちの魂に、物理的な「人格の崩壊」が刻まれた。彼らはどれほど自分を繋ぎ止めようとしても、記憶は黄金の砂となって指の間から零れ落ち、逆に彼らが壊してきた人々の「恐怖」と「混濁」が、唯一の現実として彼らの魂を永遠に覆い尽くす。


 彼らは正気を保つことも、忘却という救いを得ることもできない。


 ただ永遠に、自分が「支配できる」と信じた精神という名の迷宮の中で、自分自身という出口を失い、黄金のノイズに揉み消される『生きた廃墟』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、洗脳の犠牲となり、廃人と化し、人生を奪われたすべての人々へ、生命の光を降り注いだ。


 粉砕された「自我」はアルカディアの「至高の知性」へと再接続され、彼らは失った記憶、誇り、そして自分自身という名の聖域を完璧に取り戻す。


 大地には「いかなる権力も、個人の精神を蹂躙することはできない」という神聖なる人格不可侵の法が刻まれた。


「主……。闇の実験で切り刻まれた人々の心が、今、貴方様の力で『穏やかな凪』へと戻されましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の悪夢の中で自分自身という存在を見失い、永遠に虚空を掴み続ける「精神の略奪者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、魂の書き換えは通用しない。


 俺の庭において、他者の意識を道具とする不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの精神の解体」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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