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荒野の慟哭、あるいは神の野生回帰

 全次元を統べる俺の指先に、腐りゆく数千万頭の肉の臭いと、奪うべき命を「弾丸一発の標的」としか見なかった傲慢な火薬の熱が伝わってきた。


 1870年代、北米大陸。かつて地平線を黒く染めるほど群れていたバッファロー。米国政府は、先住民ネイティブ・アメリカンの生活と信仰の根幹である彼らを根絶やしにすることで、民族を飢えさせ、土地を奪い、降伏へと追い込む計略を実行した。


 肉を食らうためではなく、ただ「殺すため」だけに放たれた銃弾。皮だけを剥ぎ取り、山のように積み上げられた頭蓋骨。それは大地の鼓動を止めるための、最も冷酷な「兵糧攻め」だった。


「……命を兵器に変え、大地を空腹という名の檻に変えたか。腹を満たすためではなく、支配のために他者の糧を奪った罪、その枯れ果てた魂で贖わせよう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に大自然の荒々しい怒りを宿し、無惨に放置されたバッファローの骸の山を見つめている。


 生命の根源であり、万物の循環を司る俺にとって、戦略のために一種の生命を絶滅寸前まで追い込む行為は、宇宙の均衡に対する宣戦布告だ。


「エルゼ、行くぞ。……『撃つ快感』に酔いしれた者たちに、真の『命の奔流』がどれほど抗いがたいか教えてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「バッファローを殺せばインディアンは消える」と豪語した将軍の執務室と、娯楽で虐殺を楽しんだ射撃手たちの祝宴へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Great Migration of Retribution}$$

$$Effect: \text{Species Karma Influx / Eternal Stampede}$$

「な、なんだこの地鳴りは……!? 部屋の中に、巨大な黒い影が……! 助けてくれ、踏み潰される!」


 かつて安全な場所から引き金を引き、命の重さを笑っていた者たちが叫ぶ。彼らの周囲は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『無限の草原』へと変貌し、彼らが殺した数千万頭のバッファローの『霊的質量』が、地響きを立てて押し寄せ始めた。


「君たちは、バッファローを消し去ることで未来を掴もうとした。……ならば、君たち自身の魂を、永遠に止まることのない黄金の群れの足跡あしあとの下に置き、その咆哮の中で一生を反芻させてやろう」


 俺が掌をかざすと、虐殺を主導した者たちの魂に、物理的な「蹂躙の循環」が刻まれた。彼らはどれほど高い壁を築こうとも、その壁ごと黄金の蹄に粉砕され、大地の怒りを全身で受け止める。


 彼らは消えることも、逃げ出すこともできない。


 ただ永遠に、自分が奪った生命の巨大な奔流に飲み込まれ、自分が「無価値」と切り捨てた骸の重みに押し潰される『生きた地標』として放置される。


 一方で、俺は掌を広げ、荒野で散ったバッファローたち、そして糧を奪われ飢えに苦しんだ先住民の魂へ、生命の光を降り注いだ。


 積み上げられた白骨はアルカディアの「不滅の生命力」により、黄金の毛並みを持つ『神聖なる霊獣』として再構成され、再び大陸を埋め尽くす。


 奪われた大地にはアルカディアの「不滅の豊穣」が宿り、二度と侵略者の弾丸を通さない、神聖なる共生圏へと書き換えられた。


「主……。支配のために引き裂かれた大地の絆が、今、貴方様の力で『永遠の循環』へと回帰しましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、黄金の蹄の音に震え、永遠に踏みにじられ続ける「虐殺の演出家たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、命を支配の道具にすることは叶わない。


 俺の庭において、他者の糧を絶って屈服を強いる不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの奔流」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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