発明の檻、あるいは神の絶縁体
全次元を統べる俺の指先に、パチパチと弾ける火花と、恐怖を煽るために無慈悲に流された高電圧の振動が伝わってきた。
19世紀末、アメリカ。エディソンは、自身が推し進める「直流」の優位性を守るため、テスラが提唱する効率的な「交流」を徹底的に貶めた。
「交流は死の電流だ」
そう叫びながら、彼は公衆の面前で動物たちを電気椅子にかけ、その無残な死を『科学的実演』として見せしめにした。それは叡智への探求ではなく、独占欲という名の泥沼から放たれた悪意の放電だった。
「……光を灯すための電気を、命を消すための恐怖に変えたか。自らの名声を守るために、言葉なき命を宣伝の道具に使い潰した罪、高くつくぞ」
俺の隣で、エルゼが瞳に冷徹な雷光を宿し、その血塗られた実験記録を見つめている。
生命の根源であり、エネルギーの純粋な循環を司る俺にとって、利権のために進化を妨げ、命を「見せしめ」にする行為は、存在の法則に対する冒涜だ。
「エルゼ、行くぞ。……『電気の恐怖』を売った者に、真の電導が何をもたらすか教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて動物を処刑して喝采を浴びた公開実験場と、自らの特許を盾にテスラを追い詰めたメンロパークの執務室へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Circuit of Retribution}$$
$$Effect: \text{Dielectric Breakdown / Perpetual Static Feedback}$$
「な、なんだこの黄金の磁界は……!? 指先から火花が止まらない! 身体が巨大な蓄電池になったようだ!」
かつて他者の技術を「危険」と呼び、動物たちの悲鳴を金に変えた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『超伝導回路』へと変貌し、外界のあらゆる微細な電位差を激痛として受け入れ始めた。
「君たちは、電気を恐怖という名の鎖として人々に巻き付けた。……ならば、君たち自身の肉体を、君たちが奪った命の『怒りの電荷』を蓄え続けるコンデンサに変えてやろう」
俺が掌をかざすと、中傷工作を主導した者たちの肉体に、物理的な「静電気の牢獄」が刻まれた。彼らは触れるものすべてから黄金の電撃を受け、自らの思考が走るたびに、脳髄を焼き切るような「テスラの交流」の波動が全身を駆け巡る。
彼らは絶縁体になることも、放電しきることもできない。
ただ永遠に、自分が殺害した象や犬たちの最期の震えを、自らの鼓動として刻み続けられる『生きたフィラメント』として、次元の暗闇に放置される。
一方で、俺は掌を広げ、利権争いの影で犠牲になった動物たちの魂、そして不遇の天才テスラの無念へ、生命の光を降り注いだ。
見せしめにされた命はアルカディアの「不滅の霊獣」へと昇華され、黄金の雷を纏いながら自由な宙へと駆け出す。
そして、歪められた電流の真理はアルカディアの「不滅の回路」へと統合され、世界中に隠し立てのない『無限の無償エネルギー』を供給する聖なる導脈へと書き換えられた。
「主……。醜い利権の火花が、今、貴方様の力で『世界を照らす真の光』へと昇華されましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、自らの神経を走る雷光に焼かれ、永遠に「通電」し続ける「発明の亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、科学の独占は不可能だ。
俺の庭において、恐怖を煽って進化を阻む不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの感電」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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