砲口の祈り、あるいは神の不燃不滅
全次元を統べる俺の指先に、硝煙の熱さと、弾薬筒を噛み切るたびに兵士たちの心に広がった「魂の汚染」が伝わってきた。
1857年、インド。セポイ(インド人傭兵)たちは、支給された銃弾に牛と豚の脂が塗られていることを知る。それは彼らの信仰を根底から汚す侮辱だった。憤怒はやがて反乱となり、鎮圧に回ったイギリス軍は、見せしめとして捕虜を巨大な大砲の口に縛り付け、その身体を四散させる「風砲」という地獄の処刑を繰り返した。
「……信仰を弾薬の潤滑剤に変え、命を空への供物に仕立てたか。他者の神を嘲笑い、その肉体を塵に変えた罪、その重さを教えてやろう」
俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な粛清の雷鳴を宿し、その砲口に縛られた人々の絶望を見つめている。
生命の根源であり、あらゆる祈りの帰結である俺にとって、信仰を盾に他者を支配し、爆風で尊厳を吹き飛ばす行為は、宇宙の法に対する明確な反逆だ。
「エルゼ、行くぞ。……『爆風で消し去れる』と信じた者たちに、消えることのない真実の熱を食らわせてやる」
俺は時空を穿ち、かつて冷酷に点火命令を下した指揮官の執務室と、血飛沫に沸き立った広場へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Immutable Sacredness}$$
$$Effect: \text{Explosive Reflection / Eternal Integration of the Broken}$$
「な、なんだこの黄金の静寂は……!? 火をつけたはずの大砲が火を噴かない! 逆に、自分の身体が熱くなっていく!」
かつて高笑いとともに処刑を眺めていた将校たちが叫ぶ。彼らが誇った巨大な大砲は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『内省の鏡』へと変貌し、あらゆる物理的爆発を内側へと反転させ始めた。
「君たちは、他人の信仰を汚し、その肉体を四散させることで恐怖を刻もうとした。……ならば、君たち自身の肉体を、君たちが吹き飛ばしたすべての魂の『重み』が収束する永遠の核に変えてやろう」
俺が掌をかざすと、処刑を主導した者たちの肉体に、物理的な「因果の着火」が刻まれた。彼らは体内で永遠に爆発が起き続けながらも、決して死ぬことも飛散することもなく、黄金の檻の中にその衝撃だけを閉じ込められる。
彼らは消え去ることも、許されることもない。
ただ永遠に、自分が他者に向けた砲火の熱量を、自らの心臓の鼓動として聞き続け、四散しようとする魂を無理やり繋ぎ止められる『生きた不発弾』として放置される。
一方で、俺は掌を広げ、砲口の先で散ったセポイたち、そして尊厳を奪われたインドの人々へ、生命の光を降り注いだ。
空に飛び散った彼らの肉体はアルカディアの「不滅の再結合」により黄金の蓮となって集い、失われた命はより高潔な『神聖なる守護者』として蘇る。
汚れた弾薬はすべて黄金の供物へと変わり、大地からは、いかなる侵略者の鉄をも溶かす「聖なる不変の炎」が立ち上がった。
「主……。爆風の中に消えた祈りが、今、貴方様の力で『揺るぎなき神の盾』へと変わりましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、自らの内で終わらない爆発に悶絶し、外に逃げ出すことも叶わぬ「支配の亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、暴力による沈黙は不可能だ。
俺の庭において、他者の信仰を蔑み、その肉体を蹂躙する不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの収束」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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