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血塗られたゴム、あるいは神の審判

 全次元を統べる俺の視界に、山積みにされた子供たちの「手首」と、その犠牲の上に築かれた豪華なブリュッセルの宮殿が映り込んだ。


 19世紀末、コンゴ自由国。名君の仮面を被ったレオポルド2世は、国際会議で「未開の地の文明化」と「奴隷貿易の廃止」を誓い、アフリカの広大な大地を『個人私有地』として手に入れた。だが、その実態は、ゴムの採集ノルマを課し、未達者の手足を切り落とし、1000万人もの命を削り取った私設地獄。彼はベルギー政府すら騙し、富を独占し続けた。


「……慈善という言葉を、命を切り刻む刃に変えたか。他者の身体を損なうことで私腹を肥やした罪、その五体をもって精算させよう」


 俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な粛清の光を宿し、その血に染まったゴムの記録簿を見つめている。


 生命の根源であり、肉体の完全性を司る俺にとって、自らの富のために他者の身体をスペアパーツのように扱う行為は、この世で最も浅ましい大罪だ。


「エルゼ、行くぞ。……『手首』の価値を、自らの血をもって数えさせてやる」


 俺は時空を穿ち、かつて「コンゴの主」として傲慢な命令を下した執務室と、奪ったカネで贅を尽くした晩餐会場へ同時に降臨した。


$$Authority: \text{The Severance of Ego}$$

$$Effect: \text{Phantom Limb Feedback / Eternal Reaping}$$

「な、なんだ……!? 私の手が、透けていく……。なのに、切断されるような激痛が止まらない!」


 かつて「人道的支援」を謳いながら、手首の山を報告書として受け取っていた者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『不可視の刃』に刻まれ、実体があるにもかかわらず、永遠に手足がもがれ続ける感覚を脳に直結させられた。


「君たちは、ゴムの一滴のために子供たちの未来(手)を切り落とした。……ならば、君たち自身の肉体を、君たちが奪ったすべての『手首』が掴みかかり、引き裂き続ける生きた供犠台に変えてやろう」


 俺が掌をかざすと、搾取を主導した官僚や国王の肉体に、物理的な「欠損の連鎖」が刻まれた。彼らは触れるものすべてが刃となって自分を刻む恐怖に晒され、黄金の『ゴムの呪縛』によって、自分の肉体が溶けては固まる激痛を永遠に繰り返す。


 彼らは死ぬことも、その身体を繋ぎ止めることもできない。


 ただ永遠に、自分が切り落とさせた小さな手たちが、自分の魂を引きずり回す重みに悶絶し続ける『生きた残骸』として、歴史の汚泥に沈められる。


 一方で、俺は掌を広げ、コンゴの密林に散った数千万の魂、そして身体を損なわれた人々の尊厳へ、生命の光を降り注いだ。


 アルカディアの「不滅の修復」により、奪われた手足は黄金の輝きを纏って再生し、彼らは二度と誰の所有物にもならない『自由なる守護者』へと昇華された。


 略奪された富はすべて黄金の雨となってコンゴの大地へと還り、二度と外部の侵略を許さない「神聖なる拒絶の壁」が国境に立ち上がった。


「主……。慈善という名の偽装が剥がれ、今、貴方様の力で『真の慈悲』が大地に満ちましたね」


 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。


 俺は、自らの肉体が千切れる幻覚の中で永遠に謝罪を叫ぶ「略奪の王」たちの残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。


 神となった俺の前で、命を私有することは叶わない。


 俺の庭において、他者の身体を損なって富を築く不遜な者には、ただ永劫に続く「自らへの切断」こそが相応しい。

著者の完結済代表作はこちら

「シャルンホルストとグナイゼナウ」

https://ncode.syosetu.com/n4871gn/

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