黒い黄金の呪縛、あるいは神の油田改革
全次元を統べる俺の視界に、砂漠の底から湧き上がる黒い粘液と、それを「自分たちのもの」だと強弁する強欲な男たちの影が映り込んだ。
1953年、イラン。石油を国有化し、国の富を民に返そうとしたモサデク政権。だが、それに激怒した旧宗主国と、共産化の恐怖を煽られた諜報機関(CIA)は、金と暴力で暴動を演出し、民主主義を根こそぎ破壊した――アジャックス作戦。その身勝手な「成功」が、のちの数世代にわたる憎悪と、混迷の中東を生む火種となった。
「……パイプラインの一滴一滴に、他国の主権を弄んだ代償を混ぜたようだな。利権を吸い上げることに夢中で、未来の悲鳴が聞こえなかったのか」
俺の隣で、エルゼが軽蔑の眼差しをその暗黒の歴史に向ける。
生命の根源である俺にとって、大地が育んだ恵みを、武力という名の汚泥で塗りつぶして奪い去る行為は、断じて許されぬ大罪だ。
「エルゼ、行くぞ。……『他人の富を吸い上げる』快感を知る者に、真の逆流を教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて「民主主義の破壊」を祝杯で飾った秘密会議の場と、それを指示した謀略の司令塔へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Reflux of Causality}$$
$$Effect: \text{Petroleum Rejection / Infinite Internal Combustion}$$
「な、なんだこの黄金の粘液は……!? 口の中から、石油のような味が……呼吸ができない!」
かつて冷酷な天秤を弾いていた工作員たちが叫ぶ。彼らの喉の奥からは、俺が指を一鳴らしした瞬間、彼らが奪った「黒い黄金」が黄金の奔流となって溢れ出し、彼ら自身の肉体を内側から満たし始めた。
「君たちは、砂漠の富を自分たちのエンジンを回すための油だと信じていた。……ならば、君たちの魂そのものを、君たちが奪った石油を燃やし続ける『永劫の機関』に変えてやろう」
俺が掌をかざすと、謀略を主導した者たちの肉体は、黄金の『生きたピストン』へと変質した。彼らには、自分たちが壊した民主政権が生むはずだった「数十年分の幸福な記憶」と、その代わりに生み出してしまった「数十年分の憎悪の炎」が、交互に爆発的なエネルギーとなって流れ込み、その精神を永遠に焼き、削り続ける。
彼らは消えることも、停止することも許されない。
ただ永遠に、自分が奪った資源の「重み」に喉を詰まらせ、自分が蒔いた「怨嗟」の熱に焼かれ続ける『利権の残骸』として、歴史の裂け目に繋がれる。
一方で、俺は蹂躙されたイランの大地に生命の光を降り注いだ。
石油に依存せずとも豊かな命を育めるよう、砂漠の地下水脈はアルカディアの「不滅の浄化」によって清められ、大地からは資源を巡る争いを無効化する『神の恩寵の花』が咲き乱れる。
もはや、そこには他国の干渉を許す余地などない。民衆の瞳には、奪われたはずの自尊心が黄金の輝きとなって蘇った。
「主……。資源という名の鎖が、今、貴方様の慈悲によって『真の自立』という光に変わりましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、自らが吸い上げた富の重みに悶絶し続ける「謀略者」たちの末路を見届け、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、不当な利権は毒となり、奪われた権利は神聖なる守護を得る。
俺の庭において、他国の未来を石油のために売り払う不遜な者には、ただ永劫の渇きと、自らが蒔いた火に焼かれる罰こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
https://ncode.syosetu.com/n4871gn/




