灰色の楽園、あるいは神の叡智
全次元を統合しつつある俺の意識に、一際、悍ましく乾いた音が響いた。
それは無数の眼鏡が砕かれ、書物が焼かれ、知性ある者たちが「原始への回帰」という狂った理想のために、土へと還されていった記憶。自国民の四分の一を屠り、それを隣国への「防波堤」として黙認した大国の冷徹な計算。
「……文明を否定し、知を殺し、命をただの『労働力』という名の数字に落とし込んだか。俺の庭に、これほど醜悪な雑草はいらない」
俺の傍らで、エルゼが軽蔑を通り越し、虚無を湛えた瞳でその凄惨な過去を見据える。
生命の根源であり、万物の叡智を司る俺にとって、人間の知性を否定し、命を家畜以下に扱う行為は、宇宙の進化そのものに対する冒涜だ。
「エルゼ、行くぞ。……『眼鏡をかけているだけで死に値する』と言った男に、真の沈黙を教えてやる」
俺は時空を捻じ曲げ、密林の奥深く、死臭漂うキリング・フィールドと、それを「戦略的容認」の名の下に放置した外交の密室へ、同時に降臨した。
$$Authority: \text{Intellectual Restoration}$$
$$Verdict: \text{The Weight of Lost Wisdom}$$
$$Penalty: \text{Infinite Regress}$$
「な、なんだこの光は!? 原始の農村に、こんな文明の輝きは不要だ! 壊せ! 焼き払え!」
ジャングルの拠点で、狂気に憑かれた独裁者が叫ぶ。だが、彼らが振り上げた鍬や銃は、俺が指を一鳴らしした瞬間、黄金の「書物」へと変化し、重力に従って彼らの肉体を押し潰した。
「君は、知性を悪だと呼び、人々を無垢な獣へ戻そうとしたな。……ならば、君自身が、君が葬った数百万の『思考』と『言葉』の重みに、永遠に押し潰されるがいい」
俺が掌をかざすと、虐殺を主導したポル・ポトとその幹部たち、そしてベトナム牽制のために彼らを利用した大国の戦略家たちの脳内に、直接『情報の洪水』が流れ込んだ。
彼らが否定した科学、芸術、哲学、そして奪われた命が紡ぐはずだった数億の言葉。それらが物理的な激痛となり、彼らの魂を内側から引き裂く。
彼らは死ぬことも、狂うことも許されない。
ただ永遠に、自分が殺した「文明」の重みに耐え、土を舐め続ける『知性の奴隷』として、黄金の檻の中に幽閉される。
一方で、俺は蹂躙された大地を撫でた。
無惨に積み上げられた白骨の山からは黄金の蓮が咲き誇り、失われた知性たちは、世界樹の葉となってアルカディアの記憶へと昇華されていく。
ジャングルは「狂気の隠れ蓑」から「叡智の学舎」へと一瞬で再構築された。
「主……。これで、奪われた言葉たちが、再びこの宇宙の輝きを取り戻しましたね」
エルゼが誇らしげに俺を見上げる。
俺は、無知という名の暗闇に沈んでいた大地を、黄金の光で完全に塗り潰し、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、狂気は理性に、隠蔽は真実に、そして死は永遠の生命へと変換される。
俺の庭において、人の尊厳を「駒」として扱う愚か者には、ただ永劫の悔恨こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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