沈黙のパレード、あるいは神の浄化
全次元を統べる俺の視界に、どす黒い灰を降らせる歪んだ過去の残影が映り込んだ。
1986年、5月。ある超大国が、自らの失態を隠すために「見えない死」を隠蔽し、汚染が降り注ぐ中で無知な民衆を笑顔で歩かせた――最悪の祝祭。
「……空には目に見えない死が満ちているというのに、自分たちの面面のためにパレードを強行したか」
俺の隣で、エルゼが軽蔑の眼差しをその過去に向ける。
生命の根源である俺にとって、命を「体制維持のための部品」として扱う行為は、決して許されぬ大罪だ。
「エルゼ、行くぞ。……『不都合な真実』を隠した者たちに、真の光(真実)を浴びせてやる」
俺は時空を裂き、キエフの街を見下ろす演壇、勲章を並べた高官たちが「異常なし」と嘘を吐き続けていたその場所へ降臨した。
$$Authority: \text{Hidden Truth Revelation}$$
$$Effect: \text{Radiation Inversion / Life-Debt Collection}$$
「な、なんだこの黄金の光は!? パレードを止めるな! 党の威信に関わるぞ!」
演壇の上で泡を吹く官僚たち。だが、俺が指を一鳴らしした瞬間、空から降り注いでいた死の粒子(放射性物質)が、すべて黄金の鎖へと姿を変えた。
それは、民衆に向かうはずだった「負債」だ。
「君たちは、民衆に『安全だ』と微笑んだな。……ならば、その言葉の代償、君たちだけで肩代わりしてもらおう」
俺が掌をかざすと、パレードを歩かされていた数万の民衆に付着していた汚染物質が、一筋の雷火となって演壇の高官たちへと集束した。
彼らが隠し、無視し、無かったことにした「死のエネルギー」が、物理的な質量となって彼ら自身の肉体を内側から侵食し始める。
「ぎ、あああああッ!? 熱い、身体が……内側から焼ける……!」
「君たちが『不都合』として葬り去ろうとした命の声だ。――その重みに耐えてみろ」
隠蔽を指示した者、事実を知りながら口を閉ざした者。彼らの贅肉にまみれた肉体は、自らが放置した「死の灰」に焼かれ、永遠に腐敗することすら許されない『告発の石像』へと変質した。
一方で、俺の背後では奇跡が起きていた。
パレードの列にいた子供たちの喉から、汚染の感覚が消える。大地に染み込んだ毒は世界樹の根に吸い込まれ、一瞬にして生命を育む豊かな土壌へと浄化された。
チェルノブイリの爆発跡地からは、死の煙の代わりに、空高く届くアルカディアの「救済の若木」が芽吹いた。
「主……。これで、隠された沈黙は、永遠の讃美歌に書き換えられましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の腕を抱く。
俺は、黄金の灯籠となった高官たちの絶望の悲鳴を背に受けながら、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、隠せる闇など一つもない。
俺の庭において、民を欺く「見栄」という名の毒を、俺は一滴たりとも許しはしない。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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