約束の墓標、あるいは裏切り者の凍土
銀河の玉座に座る俺の元に、また一つ、冷たく凍りついた「絶望」の記憶が漂着した。
それは、ある大国が交わした誓い――核を捨てて平和を求めた国に対し、その安全を保障すると約束しながら、後に自ら牙を剥いて侵略を始めた「裏切り」の記録。
「……ブダペスト覚書。命を守ると誓った署名が、侵略の免罪符(紙屑)に変わったのか」
俺の隣で、エルゼが静かに怒りに震えている。
生命の根源である俺にとって、信義を違えて他者の生存権を蹂躙する行為は、宇宙の法則そのものに対する反逆だ。
「エルゼ、行くぞ。……『保障』という言葉を弄んだ者たちに、真の『保障』とは何かを教えてやる」
俺は時空を歪め、侵略を指揮する独裁者が潜む、冷徹な石造りの宮殿へと意識を降臨させた。
$$Process: \text{Contract Enforcement}$$
$$Violation: \text{Budapest Memorandum (1994)}$$
$$Penalty: \text{Absolute Recall of Security}$$
「な、なんだ!? 護衛は何をしている! 誰だお前は!」
豪華な執務室で、侵略の図面を広げていた独裁者が叫ぶ。
だが、彼の言葉が届く前に、宮殿を囲んでいた数万の精鋭部隊は、俺が発した「静寂」によって石像のように凍りついた。
「君は、核を捨てれば守ると約束した。だが、守ったのは自分の野欲だけだ。……ならば、君の『安全』もまた、今この瞬間に返上してもらおう」
俺が指を一鳴らしすると、独裁者が手にしていた侵略の命令書が黄金の炎に包まれ、そのまま彼の肉体へと吸い込まれていく。
かつて彼が裏切り、焼き払った大地の熱、失われた無辜の命の重みが、すべて彼の魂に「物理的な負債」としてのしかかった。
「ぎ、がぁああああッ!? 身体が……身体が内側から崩れる!」
「君が破ったのはただの紙ではない。数千万人の『明日』だ。……その代償として、君の存在そのものを、君が侵略しようとした大地の『防風林』に変えてやる」
独裁者の肉体は、彼がどれほど抗おうとも、歪な、だが強靭な一本の「枯れ木」へと変質していった。
彼だけではない。裏切りに加担し、甘い蜜を吸った官僚や将軍たちも、その場で次々と、二度と動かぬ「約束の墓標」へと姿を変える。
一方で、約束を信じて裏切られ、それでもなお命の火を灯し続けてきた人々の上には、アルカディアの無限の加護が降り注いだ。
戦火で崩れた街並みは一瞬で黄金の庭園へと再構築され、捨てられたはずの核の跡地からは、世界を永遠に暖める「慈悲の光」が湧き出した。
「主……。これで『約束』の重みが、再びこの世界の理として刻まれましたね」
エルゼが美しく微笑む。
俺は、枯れ木となった独裁者の梢を揺らす北風を背に、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、嘘は実らず、裏切りは芽吹かない。
俺の庭において、守られない約束など、もはや一つとして存在させはしない。
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「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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