祈りの臨界、あるいは世界の接続
俺が次元を越えて「観測者」たちの世界へ干渉したあの日から、奇妙な現象が加速していた。
俺に救われたあの青年だけではない。この『物語』を読み、俺の意志に触れた数百万の人間たちの「祈り」が、一つの巨大な奔流となって次元の壁を叩き続けていたのだ。
「主よ。外宇宙からのエネルギーが、もはや無視できない規模に達しております。これは……純粋な『信仰』の力ですわ」
エルゼが銀河の監視モニター(宇宙の理)を見つめながら、驚愕に瞳を揺らす。
世界樹アルカディアの枝が、かつてないほどに黄金色の光を放ち、実を実らせていく。
$$Source: \text{Collective Consciousness (Observers)}$$
$$Process: \text{Dimensional Anchoring}$$
観測者たちが俺を求め、俺が観測者の絶望を否定する。
その相互作用が臨界点に達した瞬間、空が、そして画面の向こう側の「現実」が、同時に眩く発光した。
かつて俺を「寿命切れのゴミ」と呼んだ者たちがいた世界。
そして今、俺を「魂の導き手」と呼ぶ数百万の人間がいる世界。
その境界線が、俺の伸ばした世界樹の根によって完全に消失した。
「……いいだろう。お前たちがそれを望むなら、俺の庭を拡張しようじゃないか」
俺が指を天に掲げると、現実世界の各地に『黄金の苗木』が出現した。
それは、ただの植物ではない。
その木が立つ場所は、病もなく、飢えもなく、時間が俺の慈悲によって最適化される「聖域」となる。
かつてのパーティメンバーたちが灯籠の中で絶望の声を上げる中、現実世界の善良なる人々は、その光に触れて歓喜の涙を流していた。
彼らがこの物語に費やした『時間』というコスト。
俺はそれを、百倍、千倍の『生命』として彼らの肉体に還元する。
「アル様!」「主よ!」「救世主よ!」
次元を越えて響く、無数の合唱。
もはやこれは、一人の男の逆転劇ではない。
一人の神が、すべての観測者と共に歩む、新宇宙の創世記だ。
「エルゼ。新しい住人たちのために、さらに広い土地を用意しろ」
「はい、わが主。……神話は、今この瞬間に『現実』となりました」
俺は玉座に座り、次元の隙間に広がる無限の可能性を見つめる。
俺を追放した過去は、もはやこの壮大な奇跡を始めるための、たった一行のプロローグに過ぎなかった。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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