40.他に不都合とかないかな?-きみはゼロゼロと呼ばれるんだ-
全47話です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「その様子だとちゃんと繋がっているみたいだね、よかった、安心したよ。他に不都合とかないかな? 試せる範囲でいいから機能を試してみて」
その言葉をうけて恵美は直ぐに行動に移した。実際のところレイドライバーは一ミリも動いてはいない。だが、その内部ではコアユニットとのやりとりやレイドライバーの各部系統のチェック、さらには思考するだけで読み出せる情報の確認。
どのくらい黙っていただろうか。恵美が機能を試している間、カズもあえて声はかけずにいた。そのほうがどうみても集中出来るからだ。初回起動だ、というのもある。これが慣れてくれば会話しながら処理を行うくらいは出来るようになるのだが。
――すごい、これはすごすぎる。こっちが追い付いていけない。
「すごい……ね」
沈黙からの第一声はその一言だ。
「こんなに、こんなに色々な情報を、肉体に縛られていた頃の自分じゃあ想像も及ばないくらいの速さで処理出来るんだね」
恵美はまずこの処理能力の高さに驚いていた。
「生体コンピューターになったおかげ、と言ったらいいのかな、一度タスクを思考するだけであとの面倒な計算や演算はコンピューターがやってくれるからね。きみはいわば指揮官みたいなものかな。その分、周りの情報に目をやってくれればいいよ。そういったのはコンピューターは苦手分野だからね」
カズは相手をせかさないように落ち着いて話した。
「ありがとう、気を使ってくれて。考えるだけでプログラムが走るこの違和感にはまだ慣れないけど、おいおい慣れていくよ」
「そうしてくれると助かるよ。分からない事があったら俺だけでなく、ここのスタッフに聞くといい。それと、きみの名前なんだけど」
カズはそのあとの言葉を続けにくそうにしている。
「うん、今まで通りには呼べなさそうだね」
――私はもう部品の一部なんだよね。
「そうなんだ。本名を呼ぶことは、情報漏洩の観点から禁止されている。ちなみにオレの名前も知っての通り[カズ]で通ってる」
それはカズが所長になったとき、職員全員に伝令されたのだ。[軍事機密だから、フルネームで呼ぶのはは禁止]と。元々がこっちに来た当時から[カズ]としか名乗ってないのでこちらの人間にはフルネームを教えていないし、聞かれもしなかった。だが、日本から一緒に渡ってきた人間はカズのフルネームを知っている。それをカズが所長に、パイロットになった時点で禁止したのだ。
そして、この国に渡って研究を再開する前、日本にいた頃から被検体は番号で呼ぶのが通例になっている。それはここでも同じだ。存命を含めて被検体の番号は、向こうにいた時と合わせて二三四番まで来ている。
「じゃあ、私は二三五号検体になるのかな?」
「型番はね。登録はその通り二三五号となるけど」
――けど?
その疑問は直ぐに解消される。
「きみはゼロゼロと呼ばれるんだ。それはこの機体の名称がゼロゼロなんだよ。なので、オレがゼロゼロと呼んだらきみの事を指しているんだと思ってね」
「そうかぁ、機体名なんだね。あれっ、コアユニットは……あ」
とまで言って恵美は気が付く。
「そう、呼称はされない、してはいけない事になってる。まさにレイドライバーの[部品]の一部なんだ。あぁ、でも品番は付いているよ、検体番号に識別番号がくっついてね。それを言ったらサブプロセッサーも[部品]ではあるんだけども、さっき言った通りこの機体は特別でね」
そういうカズの口調は嫌なことでも話しているかのようだ。まぁ、彼からしてみれば[チトセ]の名前を呼ぶことも出来ないのだから当然か。
「とにかく、だ。ゼロゼロはその機能にまず慣れてもらえるかな。今までサブプロセッサーを搭載していなかった分、この機体でのテストも増えると思う。それまでにその[体]によく慣れておいてね」
カズはそう言うと[じゃあ、他にすることがあるから]とその場をあとにしようとした。
「ねえ、カズ君」
[ゼロゼロ]がそう呼び止める。
「何だい?」
と聞き返すカズに、
「今日は晴れているよ」
と言ったのだ。
「ん?」
カズが問い返すと、
「ううん、何でもない。今日は晴れてるなぁって」
その言葉をカズは理解出来ないでいた。レイドライバーにはネットも接続されているので天気情報、何なら現在いる地点の正確な風速、日照状況も読み出せる。それが分からないカズでもないのだが、この状況でゼロゼロが言った意味が分からない。
天候など見れば分かるのに。
だが、勘のいいカズだ、しばらくしてそれが[チトセ]の体調の事を指して言っているのだと気が付いたのだ。ゼロゼロはそんなところまで気を遣ってくれていた、それがカズには、一人残された彼にはとてもありがたかったのだろう。
「一緒に頑張ろうね」
との言葉に、
「ああ、みんなで一緒に頑張ろう」
カズはそう答えたのだ。
二人は、
――まだ戦える、まだやれる。
そんな気分に浸っていた。
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