35.どうやら友達が出来たよう-レイリアは確かに似ている、千歳に……-
全47話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
カズはそんな[身体検査]が終わって自由時間になり、壇上にはオブジェが並んでいるその部屋の中で過ごしている娘たち、とりわけその中にいるレイリアを見ていた。
見れば、レイリアにはどうやら友達が出来たようで、二人の女の子と話をしている。
「あの二人は?」
「トリシャ・エカードとクリス・アンダーソンです。トリシャは両親が、クリスは母親と弟が確保してあります」
直ぐに回答が返って来る。
すぐさま、
「二人の適正は?」
と続ける。
「二人とも基準値より上にいます。クリスのほうは内向的ではありますが、このままいけば三人ともパイロット候補になるかと思われます」
と、これも直ぐに回答が返って来る。
「ちなみに、クリスはどうしても恥じらいが捨てられないようで、幾度となく[オブジェ]にしています。その際、男性への恐怖心でしょうか、複数人で近寄って[処置]すると必ずそそうしてしまいます。適性値は良好ですが、そこが気になるか、と」
職員はそう言うとカズにファイルを手渡す。
そこにはクリス・アンダーソンに関して、恥じらいが強いが男性への恐怖心があり、日によってそれが天秤のように振れ、恐怖心が勝れば素直に自分から進んで検査を受ける、羞恥心が勝れば前述のとおり、そそうしながら[オブジェ]にしている旨の記載がなされていた。そして、このままでは[不適合の可能性もあり]と書かれている。
それはそうだ、男性恐怖症の人間があんな仕打ちをされれば、そそうの一つや二つするだろう。だがここよりもっと厳しい軍隊ではどうなる事か。
――でもな、これって使い方によってはいけるんじゃあないか? [こちら側]に引き込む事だってできるのでは。
「あの三人は第一世代の候補に内定する。クリスに関しては[壊れない程度]に[処置]するように伝えて。なので、三人からは特に目を離さないように。他に例の適正がある娘はいるかな?」
カズがそう尋ねると[あぁ、あのテストの事ですか]と言ったあと、
「二人姉妹が二組います。これらはどうしましょうか?」
「それは第二世代の試験体にするので。なのでその四人ともこれからは別カリキュラムだ。あぁ分かっていると思うけど……」
とまで続けたカズの言葉を、
「はい、相思相愛に持っていくように[調律]します。ですが……」
「どうした?」
職員は言いにくそうだ。それを、
「ああ、確か一組はクリスチャンさんの子供だろ? それは当の本人が提供してきたんだ、有効に利用しないとね。確かにきみの言う事も分かるよ。確か母親には」
とまで出た言葉を、
「ええ[調律]は施しますが[クスリ]は使うな、との命令です。ですが、いっそ使ってしまったほうがいいのでは?」
と繋げる。
だが、
「ああ、それについては、大人を薬なしで[調律]すると、どこまで順応出来るかを調べる為だ。それにパイロットが実の子供である事、レズビアンに仕立てる事も伝えてある。その上で[調律]するんだ」
そう言ったカズの口元には[チトセの心も躰ももっといじってみたい]と思う時のそれが現れていた。
歪んだ笑み。
大好きなおもちゃを目の前にした、子供の心とと大人のそれが混在している笑み。子供には出来ない事が大人の、カズの立場なら出来る。
だが、それにはカズも直ぐに気が付き、グッと口元に力を入れて邪念を消し去ろうとしていた。
職員はしばらく言葉が出ないようであったが、直ぐに、
「わ、分かりました。ではそのように手配します」
下手にこの研究に首を突っ込んだらどうなるか。被検体にでもされたら。なるべく関わり合いたくない、ここの職員ならそう思うだろう。特に男性の職員は。
この、カズに応対した職員は男性の中でもずっといる者なのだ。女性にも、男性にも興味を示さない、稀な存在である。だからここの施設の中では若いながらも所長までやっていられるのだ。
そのくらい、この非道な実験は各所の隅々まで密かに、しかし公然と浸透していた。
そんな職員の動揺を知ってか知らずか、カズはまた鏡越しに彼女たちを見る。
「ねっ? 慣れてしまえばこんなの……」
「ですがこんな検査、お願いですからすぐに止めてほしい……」
「しっ、それ以上は言わないの。あんた、今日はよかったけど……」
そんな彼女たちの会話を聞きながら、カズは、
――レイリアは確かに似ている、千歳に……。
そんな事を考えていた。
全47話予定です




