25.千歳、分かるか?-千歳をコアユニットにするなんて-
全47話予定です
改めて千歳を見ると、皮膚にはまだ衣服が付着しているが、無理に剥がすと危険と判断されたのだろう、そのままの状態で箇所箇所に手当のあとがある。顔は皮膚がまだ少し残っているところもあるが、助かったとしてもフェイスマスクが一生必要であろうと想像は出来る。腕については、応急的に包帯が巻かれ、止血処理が施されているが、両方ともないのだ。
「千歳、分かるか? 俺だ、カズだ」
話しかけると、
「あぁ、カズ。ゴメンね、心配かけて」
鎮静剤が効いているのか、トロンとした声で答える。
「これは一体どうしたんだ?」
「かなり危険な可燃物を、扱ってたんだ。でも、ちゃんとバキュームの、スイッチは入れていたんだけど」
とまで言って、痛がる。それはそうだ、ただでさえ腕を吹っ飛ばされて痛いのに、体の前面のほとんどのところは熱傷だ。神経が生きている為、痛いのだ。そして両腕が無いため、傷に触れる事さえ出来ないのだ。
「無理はするな、何とかするから」
そうは言ったものの、カズは次の手が考えられないでいた。一番現実的なのはやはり人工皮膚なのだが、定着性が良くない。広範囲をカバーするには用が足りないのだ。
――何とかしないと、命の危険がある。それだけは避けたい。
カズがそんな思案をしていると、
「パイロットスーツを使ってみてはどうだろう?」
そう提案したのは、クリスチャンだ。
「だが、それには問題もある。全身の皮膚を代用するとなると」
そう、クリスチャンがそう続けたように、パイロットスーツは皮膚の代わりに全身を覆うように包んでバイタルを安定させるようには開発されていないのだ。あくまで健康な体の持ち主のバイタルを護るようにしか出来ていない。
一方、コアユニット用のスーツは脱ぐのを想定していない作りになっている。着衣したその時点から皮膚への浸食、融合が始まり、一週間ほどで皮膚の一部になる。つまり、一度着たら一生そのまま、という事になる。
もちろん、実験的に被検体の皮膚を剥いでスーツを着せる実験もしたが、それはコアユニットに着せる為のスーツの実験なのだ。
逆に言うと、コアユニット用のスーツの、皮膚の表皮のない状態での生存実験は既に成功している、という事になる。
それは……。
――千歳をコアユニットにするなんて。
今更ながらに自分でも[むしがいい話だ]と思う。さんざん他人の命を蹂躙してきた自分がいざ身内に必要性が生まれたらその使用をためらう。
「メディック、このまま人工皮膚という選択肢は残されてますか? 他人の皮膚は……ダメでしょうが」
カズが一途の望みをかけるが、
「この範囲となると、安全は保障しかねます。私もパイロットスーツ、特にコアユニットのスーツの性能は知っています。現状、生命維持を第一に考えるなら、それが得策かと」
他人の皮膚の移植は、一卵性双生児を除いて成功例がないのだ。皮膚よりももっと複雑な心臓や腎臓の移植には成功して、なぜ皮膚では出来ないのか、すごく矛盾しているようにも見えるが、事実がそうなのである。
全47話予定です




