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24.千歳は炎にさらされていた-会えますか?-

全47話予定です


日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)

 カズたちが渡航から三年が過ぎたとき、千歳は研究所の所長にまで上り詰めていた。


 千歳の持っている基礎理論から応用理論、さらにはカズや恵美、他の研究者たちの行う研究から結果を上手く引き出す能力。日本にいたときに副所長をしていた、というのも大きいのだろう。


「私は、優秀な人がやればいいと思っていますよ」


 所長の座を譲ったクリスチャンはいつもと変わらず笑顔でそう言う。


 だが、そうは言うものの、よそから来た人間が、自分の立場と入れ替わって所長を務めているというこの現実は、普通なら面白くないと考えるのが妥当だろう。


 だがクリスチャンの微笑は以前と何も変わらない。


 事件はそんなある日に起きた。


 千歳がいつも使っている実験台。中は陰圧に保たれていて外に空気が漏れないようになっている。その、千歳がいるであろう研究所の場所から[ドーン]という爆発がした。その音と衝撃は離れて作業をしていたカズに届いていた。


 カズはすぐその場所に向かう。


 するとそこには、千歳が倒れていた。


「千歳!」


 本来なら自動で直ぐに消火装置が働くはずなのだが、今回はどういう訳か作動しなかったのだ。その為にカズたちが来るまで千歳は炎にさらされていた。


 カズは状況を把握しようとした。


 とっさに起こそうとしたが止めたのは、カズが薬学だけでなく医学の知識を得ようとしている、まさにそのさなかだからだろうか。


 カズはこの国で医師の免許を取ろうとしているのだ。もちろん、研究所から出る事はおいそれとは行かないが、そこはこの研究所だ[実習材料]は掃いて捨てるほどある。その為、実技はその[実習材料]で、学科は講師を呼んで空いた時間に集中的に行っている。そしてこの施設だ、国から特別扱いされているのもあるが、六年ほどかかる免許の取得を特例で三年で取れるように計らいがされているのだ。このままいけば来年には免許が受けられるという位置にある。


 そんなカズが千歳を見ると、顔から胴体にかけて広範囲に焼けている。そう、千歳はひどい火傷を負っているのだ。さらには、爆発に伴う衝撃によるものだろう、彼女の両腕が無くなっていた。


 ――これは、うかつには動かせないな。


「誰か、メディックを呼んでくれ!」


「はいっ、分かりました!」


 それからしばらくして千歳はメディックによって施設内の病棟に移された。


 直ぐに手当の処置が施される。カズはそれを部屋の外で待っていた。しばらくして処置室のドアが開き、中からメディックが現れる。


「状況はどうなっているのですか?」


 真っ先にカズが聞くと、


「両腕の切断、これも大きい怪我ですが、火傷の状態が特にひどく、体の前側を中心に相当の範囲がやられています。顔、胸、下腹部のあたりまで二度から三度熱傷の状態です。何とかして手を打たないと、このままでは命にかかわります。皮膚移植も検討しましたが、なにぶん広範囲なのが響いていて、処置が出来ない状況です。あとは人工皮膚か……」


 カズは[何故こんな事故が起きたのか]と一瞬は思いもしたが、それよりも千歳の命のほうが、つまり[起こったあと]の事を考えていた。


 後ろ向きな事をいちいち考えていても仕方のない事である。今起こった事象に対応する、それに全精力を使うべきだ。


 その頃には主要な研究所の人物が集まっていた。もちろ、その中にはクリスチャンの姿もある。


「幸い、というべきか、不幸にも、というべきか、本人には現在意識があります。先程も言いましたが、両腕を失い、体表面の前部が二度から三度熱傷なので相当の痛みがあると考えられます。今は鎮痛剤と鎮静剤を投与して様子を見ています」


「会えますか?」


 カズの問いに、


「本来なら医療スタッフだけなのですが、立場が立場の方ですので、数名でしたら」


 との答えが返って来る。


「分かりました。私と」


 とまで出たカズの言葉を、


「私が付き添いましょう」


 そう続けたのは、クリスチャンだ。


「副所長として、いや、大切な友人としてそばにいたいのです。よろしいですかカズ?」


「もちろんですとも。では」


 そう言ってカズたちは感染症防止のための防護服に身を包んで部屋に入る。


全47話予定です



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