20.何人[やった]んだっけ?-ゴメンね、変なこと聞いて-
全47話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「この試験が上手く行けば、生体コンピューターと補助リンクのシステムが確立するんだ。あとは隣のセクションが作ってる腕と足に接続してそれぞれテストかな。俺も顔を出してるんだけど、結構いいものが出来上がりつつあるよ。テストの段階ではメカメカしさがほとんどなくて、それはしなやかだったよ」
カズがタブレットを操作してその資料を出す。
「それから、現在継続してやってるスーツのテストもね」
そう言いながら、タブレットを操作しようとして止める。
「っと、これは流石に食事時に見るもんじゃあないよな」
パイロットスーツの実験、とりわけ、のちにコアユニットと呼ばれるユニット用のそれは、別の班が行っているテストである。それは、どんな状況下でもコアユニットを保護する目的で作られている。その為の実験も当然行われているのだが、物理的な試験の他に生理的な、つまり人体を使った試験も行われているのだ。
人体の表皮の代わりに、スーツを着せてどれくらい生き残れるか、そんな身の毛もよだつ実験を重ねている。このスーツはコアユニットになる人体の表皮と癒着、結合してあたかも皮膚の一部になるように設計されている。
初めは皮膚呼吸の点から失敗に終わったが、のちに改良され、今では[体表皮なしで生存出来る]ところまでもっていっているのだ。
「ねぇ、今更なんだけど、何人[やった]んだっけ?」
ボソッと恵美が口にする。
「番号で数えれば六十六体だな。俺たちが入って来てからは三十体強か。そのうち、今生きてるのが十一体、半分生きてるのが三体だけど、どうして?」
カズが疑問を返すと、
「そう、だよね。もうそんなに実験に[使った]んだよね」
「恵美、それ以上は」
千歳が止める。何が言いたいのか分かったからだ。
「あたしたちはもう以前のあたしたちには戻れない。それはここに来る前から分かっていた事でしょ?」
「襟坂さんの言いたい事は分かる。だけど、ここを選んだからには」
二人の目は、ギラついている。
「そう、だよね。ゴメンね、変なこと聞いて」
恵美がすぐに謝る。だが、その表情は確かに以前の彼女のそれに似ている。それが分からない二人ではないのだが、あえて触れはしない。
「そう言えばさ、今の日本の立場がどうのって話がミーティングにあがったみたいだけど、あれって結局のところ何なの? ここの研究所がどうのって話。移転するんでしょ? なんか的を得ない話を延々聞かされたような」
恵美が話題を変える。
「ああ、それね。上もハッキリ言えないんじゃあないかな。要するに、だ」
そう言ってカズが説明をする。
今の日本が置かれている環境はかなり危機的な状況にある。[大陸の国]が露骨に軍事的に併合しようと動き出しているのだ。それに対抗するには駐屯している駐屯している国の軍だけではどうにもならないらしい。かと言って軍を増強して駐屯出来るほどここは彼らにとってもう魅力的な土地ではなくなってきている。
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