そして次のステップへ?
――欲張り過ぎた。
何でもかんでもやろうとし過ぎた。全部を手に入れようとした。シドたちの問題を解決したかった。エイトを叩きのめしたかった。自分が一番活躍したかった。
エイトと同じだ。俺の提案を断って最大限の利益を追求した結果破滅したように、俺もできることを全てやろうとして、やり過ぎた結果がこれだ。
要するに、かっこつけたくて失敗した。
――英雄になれなかった愚か者。
それが今の俺だ。
◆
一年の最後の授業。教室の中は二つに分かれていた。長期休暇が待ちきれないとワクワクした様子で友達とおしゃべりを楽しんでいる生徒と、暗い顔で黙り込んでいる生徒。後者は俺やシドたちだ。
特に俺は暴力事件のことがバレてから距離を置かれているので教室内でも孤立していた。シドたちは同じ詐欺被害者同士で一か所に固まっているのに、俺の周りだけ誰もいなかった。
休み明けでマシになってくれると嬉しいけど望み薄かな。まあ仕方ない。自分のやったことだから素直に受け入れよう。
時間になってスコット先生が入ってきたが手に大きな木箱を持っていた。スコット先生の後ろには見たことのない教師が連れ立っていた。
「紹介する。こちらはフレンダ先生。次のお前たちの教師だ」
「皆さんはじめまして。フレンダよ。来年は私が担当するからよろしくね」
フレンダ先生は優しそうな先生だったけど、教室の中には困惑した空気が漂っていた。先生が変わるとか初めて聞いた。
「ではフレンダ先生、後はお願いします」
「ええ。スコット先生お疲れさまでした」
スコット先生が紹介だけ終わらせてさっさと教室から出ていく。一秒でもこの教室に居たくないと言っているような態度だった。
「さて、では改めて説明します。この学校は国内の魔力持ちの子供を集めて教育を与えている場所です。攻撃魔法、回復魔法、騎士団、錬金術、従魔術とそれぞれの学科に分かれて別々の教育を受けています。
従魔術学科の一年生はスライムとマンドラゴラの扱いを学んできました。この二つは従魔術が使える人間なら誰でも扱うことのできる魔物で、スライム関係の工房や魔草の栽培場に就職すれば将来食うに困ることはないでしょう」
一年で学習したことを思い出す。確かにこれだけしか使えなくても飢えることはない。まじめに働けばそこそこ裕福な暮らしだってできるだろう。
「二年生はその次のステップに進みます。より明確に従魔たちと意思の疎通が取れるようになることを目標にします。具体的には従魔たちと会話をしたり、イメージの送受信や感覚の同調という段階に進みます。
これができるようになると更に様々な職業に就けるようになりますし、その次のステップに進むために必要不可欠な技術となります。最初は上手くいかないかもしれませんが、練習すれば誰でもできるようになるのでがんばっていきましょう」
そして次のステップは従魔たちとの会話らしい。
……ん? 会話?
(おーい)
――なにー?
――魔力ー?
――水ー?
――石ー?
パスを通じてスライムたちに呼びかけると普通に会話が返ってくる。
(そっちの様子どんな感じ?)
――こんな感じー。
スライムたちが部屋の中の風景を映像として送ってくれる。
(ありがとう)
――わーい、魔力ー!
お礼に魔力を少しだけ分けてやるとプルプル震えて喜びだすスライムたち。
……普通に会話もイメージの送受信もできるんだけど、これ二年になって習うことなのか?
「では皆さんに新しい従魔を配ります、受け取りに来てください」
スコット先生が置いて行った箱からフレンダ先生が中身を取り出した。
乳白色の卵だった。模様もなく上から下まで真っ白で、大きさは鶏の卵くらいの大きさだった。
「これはワイルドピジョンの卵です。皆さんは冬季休暇の間にこの卵に魔力を注いでください。この魔物を使って来年の授業を行うので、絶対に卵を割ったりなくしたりしないように気をつけてください。それでは受けとりに来てください」
一人ずつ前に出て、フレンダ先生から恐る恐る卵を受け取って席に戻っていく。もしも落として割れたりしたら大変だ。みんな緊張している。
「では、今年度の授業は以上で終了です。皆さんよくがんばりました。気をつけて過ごしてくださいね」
穏やかに一年の終了を告げるフレンダ先生だったが、手の中の卵のことが気になって誰一人としてまともに喜ぶことができなかった。
こうして俺たちの一年は終了した。




