愚か者のスライムと自信過剰のマンドラゴラ
他の生徒たちが友達と一緒に帰っていく中、一人で寮の自室に戻った。
――おかえりー!
――~~~~♪
俺が帰ってきたことを察したスライムたちとマンドラゴラが騒ぎ出す。机の上にワイルドピジョンの卵を置いて、スライムたちをケージから出して部屋の中で放し飼いにする。ライトスライムとウォータースライムがマンドラゴラの元に向かって水をかけてやり、嬉しそうにマンドラゴラの花が揺れた。釣鐘型の綺麗な紫の花の中心で金色のめしべが輝いていた。
ベッドに座って部屋の中を眺める。これが一年間の自分の成果だ。スライムとマンドラゴラ。人間の友達はいない。きっと今頃、他の部屋では友達同士で労ったり別れを惜しんだりしているんだろう。
本当ならもっとうまくできたかもしれない。俺の周りにも友達がいて、この一年の授業を振り返って愚痴を言いあったり、来年の授業について、新しい従魔について楽しく語り合ったりできたかもしれない。
俺の足元に一匹のスライムが転がってきた。石と見まごう姿をしたストーンスライム。【愚か者のスライム】と呼ばれてみんなからバカにされているスライム。
ベッドの隣で花を咲かせているマンドラゴラは、魔力を与えすぎたせいで使い物にならないと言われた育ち過ぎたマンドラゴラだ。綺麗な花を咲かせているのに、花が咲いてしまえば使い道がない。
世間一般から見ると何の価値もない、ゴミのような魔物たち。
スコット先生からすると俺もこいつらと一緒なんだろう。学園に置いておいても邪魔にしかならない、何の価値もないゴミのような人間だと思われているから、職員会議の時に俺を退学にしろと言っていたんだろう。
――俺はゴミなんかじゃない。
――俺ならもっと上手くやれる。
そう叫びたかった、そう証明したかった。
みんなから認められて、褒めてもらいたかった。
愚かで、自信過剰で、失敗して、何の価値もないと言われた俺だけど――。
「カップをつくってくれ」
――カップー!
ストーンスライムとマナスライムが魔石でカップをつくり出した。
「マンドラゴラ、少し貰うぞ」
――~~~~♪
釣鐘型の花を傾けると、花冠の中からトロリの金色の蜜がこぼれ出た。それをカップで受け止める。
「お前たち、聖水をくれるか」
――聖水ー!
さっきまでマンドラゴラに水を与えていたウォータースライムとライトスライムが光属性の魔水――聖水をカップの中に注いでくれる。
カップの魔力とマンドラゴラの黄金の蜜と聖水が手の中で混ざっていく。黄金色の光が霧のように部屋の中に立ち込めた。口をつけると濃厚な甘さと花の香りが広がり、滑らかに喉の奥へ滑り落ちていく。
胃の奥に滑り込んだ黄金の液体から湧き上がるように魔力が溢れ、体の中に光が広がっていくような気がした。
カップの中身を飲み干し、使い終わったカップを魔石スライムに返す。
力が漲る。ベッドから立ち上がる。
魔石スライムは愚か者のスライムなんかじゃない。
育ったマンドラゴラは使い道のないゴミなんかじゃない。
愚かでも、自信過剰でも、今は何の結果も出せなかったとしても。
ストーンスライムが魔石スライムになったように。
マンドラゴラの花が綺麗な花を咲かせたように。
俺もここから変わってやる――!
第一章 愚か者のスライムと自信過剰のマンドラゴラ 完
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