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貧乏テイマーだけど成り上がりたい ~魔法学園の貧乏学生は世紀の大発見をするようです~  作者: 液体猫
第一章 愚か者のスライムと自信過剰のマンドラゴラ
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取引の裏側で(リゼット)

 リゼットは少々困った事態に陥っていた。ソラとの今後の付き合いについてである。

 本来指導が行われるはずのマンドラゴラの育成について、教師が明らかに指導を放棄していた。どうやらソラは従魔学科の教員に嫌われている――あるいは何かしらの理由があって指導を受け辛い立場にあるらしい。


(お嬢様の評判にも関わるのよね……)


 自分一人の問題ならいいのだが、リゼットはお嬢様の使用人であり下手な相手と付き合いがあると知られるとお嬢様に迷惑がかかってしまう。側仕えであるクラールからも何度も注意されていたし、リゼット自身も恩人であるお嬢様に迷惑をかけることは避けたかった。


 リゼットの父は細工物を作って商会に卸している職人だった。娘の自分も多少の心得はあったが女の手遊び程度の児戯である。やがては職人の婿を迎え入れて家庭に入るものだと思っていた。

 そんなリゼットに魔力があり、しかも無属性の魔力を持っているとわかった時、仕事で付き合いのある商会がリゼットの後見を申し出た。リゼットが錬金術を学び、魔道具を作れるようになったら商会に商品を卸す。そういう契約でただの職人の娘だったリゼットは錬金術学科に入学して懸命に勉強に励んだのだった。


 そんな状況がまた大きく変わったのはお嬢様の存在である。

 リゼットの後見人であった商会と取引のあった貴族の家から無属性の娘が魔法学園に入学した。女性の身で騎士団に入りたがるような酔狂な性格でもなく、恐ろしい魔物よりも煌びやかな宝石などを扱う方を好んだお嬢様は錬金術学科を選んだ。

 基本的に無属性魔力持ちの貴族は男子ならば従魔騎士を、女子ならば錬金術士を志すことが多い。お嬢様もご多分に漏れずその道を選んだというわけだ。


 そんなわけで今年から錬金術学科に入学したお嬢様だが、取引のある商会が貢献している少女がたまたま錬金術学科の三年生に在籍していた。これを好機と捉えた商会側の推薦と、学園に慣れ錬金術の心得がある使用人を欲した貴族側の思惑が一致し、はれてリゼットはお嬢様の使用人として取り立てられたわけである。

 一言で表すならリゼットは商会に売られたというのが正しいだろう。


 ただ、お嬢様が使用人をいびって喜ぶような醜悪な性格をしているわけでもなく、使用人としての先輩であり上司にあたる側仕えたちも学園に詳しく錬金術の基礎をしっかりと修めていたリゼットをそれなりに重宝したので、苦労よりはいいことの方が多かった。

 直接的なメリットで言うとまず給金が貰えるようになった。次いで、後ろ盾が商会から貴族に格上げされたので周囲から一目置かれた立場に立った。よほどの大商会でもない限り、商人より貴族が後ろ盾についている方が強い。

 リゼットの制服につけているお嬢様の家、シャルマイト子爵家の家紋がついた白いブローチは魔除けのお守りとして非常に心強かった。


 そんな風に貴族の庇護を堪能していたリゼットからすると、醜聞の種になりそうなものは非常に困る。リゼットがお嬢様の顔に泥を塗ったとなれば、今までの厚遇がひっくり返り地獄を見ることは間違いない。

 ソラが成績優秀で将来有望なら、そのうちお嬢様に紹介してもいいかな、などと考えていたのだが。ソラに【落ちこぼれ】や【不良】のレッテルを貼られるようなことがあれば、そんな相手と取引していたリゼット自身の評判も落ちてしまう。


(今回の取引が終わったら、少し様子見した方がいいかも……)


 すでに何度も廃ポーションの取引を行ってしまった。特に隠していたわけでもないのでリゼットとソラの交流を知っている人間はいるだろうし、ここで慌ててリゼットが取引を断ち切ってもソラに恨まれるだけで何の意味もない。

 それなら最初の約束通りにスライムが進化するまで廃ポーションの取引を行い、その後はソラの評判を確かめながら付き合いを考えた方がいい。


(仲良くできそうだって思ったんだけどなぁ……)


 ソラ自身の性格に思うところはないし、従魔術師と錬金術師はいろいろと助け合えることも多い。ソラの持ち込む魔石も魔道具作成の基本中の基本となる素材であるためあればあるだけ欲しい。自分でダンジョンから魔石を拾ってこれる(という設定になっている)ソラと、錬金術の練習としていろいろな物を作成して処分に困っているリゼットたちはお互いにとても相性が良かった。


(年度末の試験でソラくんがいい成績を取れますように)


 なみなみと廃ポーションが入った水瓶を運びながら祈りを捧げるリゼットだった。

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