掘り出しもの
学生ギルドの建物を出て街を歩く。最初は炭でも買って帰ろうと考えていたけれど、思った以上の金額で魔石が売れたので他にも良さそうなものがないか商店を回ってみた。
俺はまだ飲めないが酒なんかも良さそうだ。安酒でも酔えればいいという人間にスライム酒を販売してみたら意外と売れるんじゃないだろうか。もちろん他の物でいいけど、スライムを使って生産した物を売れるようになると金稼ぎが一気に楽になる。
街の人に聞いてみたところ、店を持てないような流れの商人や一般人が要らなくなった不用品を持ちよるバザーがこの街にもあるらしい。管理している人に場所代を払うと露店や屋台を開けるらしく、常に大勢の客や商売人で賑わっているらしい。
今後の参考になるかと思ってそこまで足を延ばしてみた。
「へえ、この通り全部がバザーの会場なのか」
特に祭りがあるわけでもないのになかなかの賑わいで、気をつけないと他の通行人にぶつかりそうになるくらいの人通りである。両脇には敷いたゴザの上に適当に商品を並べているやる気の感じられない露店もあれば、大きな台を持ち込んで見栄え良く商品を展示している店、いい匂いをさせて軽食や菓子を販売している屋台など数多く出ている。
手近な店を覗いてみたところ、その店は金属製の生活雑貨や調度品を扱っている店だった。鋳物で大量に作られた品らしく同じ形の商品が所狭しと並べられていて、値段もかなり安かった。
「この商品ってどこから持ってきたの? この街で作ったものじゃないよね?」
「ああ? こいつはクホガから持ってきた品だが、知らんのか? この辺で金属品と言ったらクホガに決まってるだろ」
「へえ、そうなんだ。俺、シスから来たからあんまり知らないんだよね」
「シス……ああ、確かダンジョンのある街だったか。あそこにもうちの商品は流れているはずだぞ」
暇そうに店番をしていた男に聞いてみたところ、他に客もいなかったお陰かクホガの街について色々と話をしてくれた。クホガの街にはすぐ側に鉱山があって鍛冶が非常に盛んらしい。この露店に並んでいる雑貨や小物だけではなく、魔法学園の騎士たちが使う金属製の武具の生産もクホガの街で行われているので腕のいい職人が大勢いるらしい。ダンジョンに挑む冒険者たちにもクホガの武具は有名なんだとか。
そんな高そうな装備を買える冒険者は知り合いにいなかったから俺が知らないのも当然だろう。スラムの周りに居るのはくたびれた革鎧と錆びの浮いたナイフやショートソードを持ってるような落ちこぼれ連中ばかり。高価で高品質な装備に手が届くはずがない。
俺がクホガの装備を買う日はたぶん来ないが、鉱山には興味がある。メタル系のスライムをいつか従魔にして魔金属をつくってみたいのだ。その為に餌として大量の鉱石か金属のインゴットを買う必要があるけど、たぶん鉱山の街で買った方が安い。
「まいどあり。うちに来たら歓迎してやるよ、坊主」
「ありがとう。その時はよろしくね」
クホガの街の様子を聞いて、いつか行ってみたいと話した後に金属のカップを一つ購入した。街の人が使うような物ではなく、冒険者や行商人が移動中に使うような軽くて丈夫な奴だ。このカップを持っていつかクホガの街に行ってみよう。
思いがけず長話をしてしまった男と別れた後も、面白そうな露店を回ってみた。
◆
バザー通りを半分くらい歩いたところで変わった屋台を見つけた。
店主は俺より少し年上くらいの女の子で、売っている物は透明のガラスのような瓶に入った緑色の液体。ほんの少しだけ魔力を感じる。
「これって、魔法薬?」
「違うわよ。これは廃ポーション」
「廃ポーション?」
何それ?
「廃ポーションはポーションの出来損ないね。作成途中で素材の魔力が抜けちゃったから回復力が弱いの。それに置いておくだけでどんどん魔力が抜けちゃうから劣化が早いわ。使うなら早めに使った方がいいわよ」
ポーションの出来損ない……って、もしかして。
「錬金術学科の人?」
「あら、もしかしてあなたも魔法学園の生徒なの?」
どうやらこの人も魔法学園の生徒らしい。意外とこのバザーを使っている人って多いんだろうか。




