第8話 踏み込む
数年後。
めぐ、二十五歳。
朔、二十七歳。
二人はまだ、実家の隣同士だった。
ある日の夜。
めぐ「ただいま」
朔「おかえり」
めぐ「……また彼女?」
朔「うん」
朔の隣には、知らない女性。
めぐ「この前の人は?」
朔「別れた」
めぐ「早いね」
朔「そう?」
女性「朔、行こ」
朔「うん」
二人が家へ入っていく。
めぐ「…………」
いつものこと。
昔から、何度も見てきた。
別の日も。
また別の日も。
朔「おかえり」
めぐ「……ただいま」
隣には、違う女性。
めぐ「…………」
最近。
なぜか、それを見るのが嫌だった。
数週間後。
めぐは一人暮らしを始めた。
朔には言わなかった。
住所も教えていない。
新しい部屋。
新しい生活。
めぐ「静かだ……」
もう、見なくていい。
そう思うと、少しだけ安心した。
それから、しばらくして。
ピンポーン。
めぐ「はい?」
『隣に越してきたんですけど』
めぐ「……?」
モニターを見る。
誰も映っていない。
めぐ「挨拶ですか?」
『まあ』
めぐ「ちょっと待ってください」
玄関を開ける。
朔「久しぶり」
めぐ「…………」
朔の手には、アイスが二本。
朔「アイス食う?」
ドアを閉めようとする。
ガッ。
隙間に、朔の足が入った。
めぐ「ちょっと!」
朔「危な」
めぐ「自分で入れたんでしょ!」
朔「挟まれるかと思った」
めぐ「挟みにいったんだよ!」
朔「ひど」
めぐ「なんでいるの!?」
朔「引っ越してきた」
めぐ「どこに!?」
朔「隣」
めぐ「なんで!?」
朔「空いてたから」
めぐ「そうじゃなくて! なんでカメラに映らなかったの!?」
朔「たまたま」
めぐ「絶対うそ!」
朔「アイス溶けるけど」
めぐ「今アイスどうでもいい!」
朔「俺は食いたい」
めぐ「自分の家で食べて!」
朔「じゃあ半分やる」
めぐ「いらない!」
朔「二本あるのに?」
めぐ「一本丸ごとじゃん!」
NEXT…




