第2話 違和感
一緒に学校へ行くようになって、一週間。
最初は母親に言われただけだった。
それなのに今では――
めぐ「朔くーん!」
朔「聞こえてる」
めぐ「早くー!」
朔「お前が早いんだよ」
毎朝、めぐが朔の家の前で待っている。
一年生と三年生。
歩く速さも違えば、話すことも違う。
それでも、めぐはずっと喋っていた。
めぐ「昨日ね、友達できたよ」
朔「へえ」
めぐ「三人!」
朔「よかったじゃん」
めぐ「朔くんは?」
朔「……何が」
めぐ「友達」
朔「いるよ」
めぐ「何人?」
朔「数えてない」
めぐ「じゃあ今日、数えてきて」
朔「なんでだよ」
めぐ「明日教えてね」
朔「だから、なんでだよ」
めぐは楽しそうに笑う。
朔は呆れた顔をしながら、その隣を歩いた。
学校が近づくと、後ろから声がした。
「朔!」
同じクラスの男子が二人、走ってくる。
「今日、放課後遊ぼうぜ」
朔「いいよ」
めぐ「朔くんのお友達?」
朔「まあな」
めぐ「二人だ!」
朔「数えんな」
男子の一人が、めぐを見る。
「妹?」
朔「違う。隣の家の――」
めぐ「朔にぃ!」
朔「……は?」
突然の呼び方に、朔が固まった。
めぐ「朔にぃ!」
朔「なんで二回言った」
めぐ「お兄ちゃんみたいだから」
朔「俺、お前の兄ちゃんじゃないけど」
めぐ「でも年上だよ?」
朔「二つだけな」
めぐ「じゃあ、朔にぃでいいね」
朔「よくない」
めぐ「朔にぃ!」
朔「……好きにしろ」
男子たちが笑っている。
朔は少しだけ嫌そうな顔をした。
けれど。
その日の帰り。
めぐ「朔くん、帰ろ!」
朔「……」
めぐ「どうしたの?」
朔「朝と違うじゃん」
めぐ「え?」
朔「なんでもない」
めぐ「変なの」
朔「うるさい」
めぐ「朔にぃ?」
朔「……帰るぞ」
めぐ「うん!」
昨日までなかった呼び方が。
その日から、ずっと残ることになった。
NEXT…




