第3話 存在
春。
朔は中学生になった。
玄関を出ると、ランドセルを背負っためぐが待っていた。
めぐ「朔にぃ、行こ!」
朔「どこに」
めぐ「学校」
朔「俺、中学生」
めぐ「知ってるよ?」
朔「学校、別だろ」
めぐ「……あ」
朔「今気づいたのかよ」
めぐ「途中まで!」
朔「方向逆」
めぐ「じゃあ、途中の途中まで」
朔「どこだよ、それ」
めぐは家の前を指さした。
めぐ「ここ!」
朔「一歩も進んでねぇじゃん」
めぐ「じゃあ、ここまで一緒!」
朔「はいはい」
めぐ「帰りは待ってるね」
朔「待たなくていいよ」
めぐ「えー」
朔「ほら、遅刻するぞ」
めぐ「はーい。いってらっしゃい!」
朔「おう。いってらっしゃい」
二人は反対方向へ歩き出した。
朔「……」
静かだった。
隣から聞こえていた声がない。
朔「……あいつ、朝からうるさかったんだな」
ただ静かになっただけ。
そう思っていた。
放課後。
朔が家の前まで帰ってくると、隣の家からめぐが飛び出してきた。
めぐ「あ! 朔にぃ!」
朔「待つなって言っただろ」
めぐ「今日ね、学校でね!」
朔「もう話すの?」
めぐ「それでね――」
朔「聞いてねぇし」
めぐ「今日ね!」
朔「……はいはい」
朝から聞こえなかった声が、また隣に戻ってくる。
めぐ「朔にぃ、聞いてる?」
朔「聞いてるよ」
めぐ「ほんと?」
朔「うん」
めぐ「じゃあね――」
朔「まだあんの?」
めぐ「ある!」
朔「……そっか」
やっぱり。
こっちのほうが、いつも通りだった。
NEXT…




