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第1話 知らない

春。


ずっと空いていた隣の家が、朝から騒がしかった。


大きなトラックが止まって、知らない大人たちが荷物を運んでいる。


その中に、男の子が一人いた。


めぐ「ねえ」


朔「……俺?」


めぐ「うん。今日からここに住むの?」


朔「そうだけど」


めぐ「ふーん」


聞いておいて、それだけだった。


朔「それだけ?」


めぐ「うん!」


朔「なんだよ、それ」


男の子の名前は、久世朔。


小学三年生。


めぐより二つ年上だった。


翌朝。


新品のランドセルを背負っためぐが玄関を出ると、隣の家から朔も出てきた。


めぐ「あ」


朔「あ」


二人とも足を止める。


めぐ「学校?」


朔「そのランドセルで学校じゃなかったら、どこ行くんだよ」


めぐ「朔くんも?」


朔「俺は今日から転校」


めぐ「めぐは今日から一年生!」


朔「知ってる」


めぐ「じゃあ、一緒だね」


朔「どこが?」


そこへ、家から母親たちの声が飛んできた。


「せっかくだから、一緒に行ったら?」


朔「えー……」


めぐ「行こ!」


返事を待たず、めぐが歩き出す。


朔「おい、そっちじゃない」


めぐ「え?」


朔「学校、こっちだって」


めぐ「知ってたよ」


朔「絶対知らなかっただろ」


めぐ「知ってた!」


朔「はいはい」


昨日引っ越してきたばかりの朔も、本当は学校までの道なんてよく知らない。


それでも母親から教えてもらった道を思い出しながら、めぐの少し前を歩いた。


知らない町。


知らない道。


これから通う、知らない学校。


なのに。


めぐ「朔くん、明日も一緒に行こうね」


朔「……なんで?」


めぐ「だって、朔くんも学校行くでしょ?」


朔「行くけど」


めぐ「じゃあ決まり!」


朔「勝手に決めんなよ」


そう言いながらも。


次の日の朝。


朔は、めぐの家の玄関が開くまで待っていた。


NEXT…


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