第18話 過熱した毒
田中と別れてから。
二人で家まで歩いた。
めぐはいつも通りだった。
けれど朔の頭には。
ずっと、あの呼び方が残っていた。
そうちゃん。
高校時代から知っている。
自分の知らないところで、今も繋がっている。
何度も連絡を取って。
何度も二人で会っていた。
マンションに着く。
めぐが自分の部屋の鍵を開けた。
めぐ「じゃあね」
めぐが中へ入る。
その後ろを。
朔もついていく。
めぐ「……なんで入ってくるの?」
朔「だめ?」
めぐ「自分の部屋、隣でしょ」
朔「知ってる」
帰る気はないらしい。
めぐ「……もう」
結局、そのまま部屋へ上げた。
いつもなら。
それだけのことだった。
めぐが飲み物を準備する。
朔「いらない」
めぐ「そう?」
コップを置いて、めぐも座る。
少しして。
朔が低い声で話しかけた。
朔「田中は、そうちゃんなんだ」
めぐ「え?」
朔「俺は朔にぃ」
めぐ「……なに? 急に」
めぐには分からない。
ずっと、そう呼んできたから。
けれど朔には。
さっきからずっと。
その違いが引っかかっている。
めぐ「朔にぃ?」
朔「……それ、やめて」
距離を詰める。
顔が近づく。
朔「朔って呼んで」
めぐ「……なんで?」
朔「いいから」
めぐ「嫌だよ」
残っていた余裕が消えた。
めぐ「……朔にぃ?」
朔「それじゃない」
朔が、貪るように唇を重ねる。
一度離れても。
息をつく間もなく、また唇が重なる。
めぐ「……んっ!?」
驚いて。
朔の胸を押す。
離れようと身体を動かす。
それでも。
昨日までの余裕が嘘みたいに。
朔は何度も、めぐの唇を求めた。
何度も繰り返すうちに。
二人の呼吸が乱れていく。
やがて。
唇が離れた。
近すぎる距離で。
お互いの目を見る。
めぐの指が。
震えるように。
朔の服を掴む。
さっきまで。
離れるために押していた手で。
その変化に。
朔が一度だけ止まる。
朔「……めぐ」
低く名前を呼ばれる。
答えはない。
ただ。
その手も離れない。
それを見た朔が。
もう一度。
貪るように唇を重ねた。
朔の胸の奥にあった毒は。
いつの間にか。
別の熱に変わっていた。
二人の間に残っていた距離が。
熱く、深くなって
溶けてなくなっていった。
NEXT…




