表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12回目の人生、与えられた選択肢を全て拒否して永遠の泥沼を楽しみます『三人の怪物を鎖で繋いだ至高のティータイム』  作者: あとりえむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/19

第9話

王宮のシャンデリアが、マリアの金糸の髪を神々しいまでに照らし出していた。


ヴァレリア公爵家の令嬢としての、彼女の正式な社交界デビューの夜。


かつての安っぽい男爵令嬢のドレスとは違う、最高級の絹と魔石の装飾を纏った彼女は、誰もが息を呑むほどに可憐だった。


本来のシナリオであれば、ここで彼女は無垢な笑顔で青年貴族たちを虜にし、アルヴィンとの愛を深めるはずの甘いイベントだ。


実際、彼女の周りには獲物を狙う羽虫のように、多くの男たちが群がっていた。


しかし、今のマリアにとってこの煌びやかな舞台は、甘いロマンスの場などではない。


愛するお姉様、リゼットの不利益になる害虫を駆除するための、絶好の狩り場だった。


マリアは恥じらうように目を伏せながら、アルヴィンの側近の一人である若手官僚に微笑みかける。


「まあ、そんな素晴らしい政策を考えていらっしゃるのですね。でもお姉様、いえ、ヴァレリア公爵家は別の案を推していると伺いましたわ」


甘く舌足らずな声で煽られた官僚は、マリアにいいところを見せようと、自派閥の裏工作や弱みを次々と得意げに口走り始めた。


愚かな男、とマリアは心の中で冷笑する。


彼女は完璧な純真さを偽装したまま、男たちの欲望を操作し、有益な情報を引き出し、リゼットの敵となり得る者を静かに社会的に抹殺していく。


かつてヒロインであったはずの少女は、今や最も美しく、最も恐ろしいリゼットの猟犬へと変貌を遂げていた。


◇ ◇ ◇


一方、王宮の執務室では、王太子アルヴィンが苛立ちと共に書類を床に叩きつけていた。


マリアは完全に自分から離れ、リゼットの忠実な手駒として動いている。


自分が救い出し、愛を注ぐはずだったか弱い少女は、もはや彼に向けられていた甘い視線を一切見せない。


そして何より彼を狂わせているのは、自分を歯牙にもかけないリゼットの冷ややかな横顔だった。


かつては自分の愛を乞うていたはずの女が、今は圧倒的な力で彼を見下ろしている。


その事実が、彼の砕け散ったプライドを醜く歪ませ、泥のような執着へと変えていた。


リゼットをこちらへ振り向かせるには、どうすればいいか。


まともな手段では、もはや彼女の関心を引くことはできない。


アルヴィンの濁った瞳が、机の上に残された隣国との魔石関税交渉の決議案を捉えた。


国庫の安定を左右する、極めて重要な外交案件。


彼はペンを握ると、その決議案にわざと破綻を招くような法外な条件を書き加えた。


交渉は確実に決裂し、国の財政には取り返しのつかない大穴が開くことになるだろう。


だが、それでいいのだと彼は暗く歪んだ笑みを浮かべる。


国が傾くほどの危機に陥れば、魔石市場を握るリゼットが必ず事態の収拾に動くはずだ。


自分を助けるため、いや、国を支配するために、彼女は再び自分の目の前に現れ、自分を見つめることになる。


かつての清廉なヒーローは、ただ一人の女の関心を引くためだけに、自らの国を炎に包む狂人へと堕ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ainado03.jpg

t_title_novel.png
t_novel_ainado.png t_novel_at.png t_novel_dz.png t_novel_saihate.png t_novel_oshituma.png
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ