日用品を探そう
「そう言えばさ、ベリルってポーション知ってるの?」
ポーションによる惨事を未然に防いだ宗田は、ベリルに質問をすることにした。
「ん〜、一応知ってるけど、どうして?」
「いや、知ってるなら試さなくて良かったんじゃないかと思ってさ」
「あ〜、それね。ポーションってさ、作り手によって効果とか使い方バラバラなんだ〜。飲むタイプもあればかけるタイプもあるし」
「へ? もしかして、これが飲むタイプじゃなかったらどうなってたの?」
ベリルに咄嗟に渡されて、治癒ポーションを一気に飲んでしまっていた。
さらに、スタミナポーションまでも。
宗田は口元を手で押さえると、急いでトイレに向かおうとする。
「ちょいちょい、お兄さん大丈夫だよ。飲むタイプじゃなかったら、口にした瞬間に吐き出すレベルで不味いから」
ベリルの言葉に宗田は息を漏らし、押さえた手を下げた。
「それなら多分大丈夫だと思う……なんか、普通の栄養ドリンクみたいな味だったしさ」
「そんな味なんですね。私も飲んでみたかったです」
唯が宗田の言葉に反応すると、宗田はスタミナポーション(超極小)を渡した。
「あ、お兄さん。魔石の無駄遣いした」
「別に少しくらいいいだろ。味を知っとけば咄嗟の時に躊躇しないからな。んじゃ、唯も飲んでみて」
宗田に「ありがとうございます」と返事をすると、唯がスタミナポーションに口を付ける。
「あー、これは……本当に栄養ドリンクみたいですね。不味くはないです」
空になったビンをことりとテーブルに置く。
「でしょ! 治癒ポーションもそんなに変わらなかったよ。しいて言えば酸味のような酸っぱさがないくらいかな」
「そうなんですね! ちょっと気になりますが、もう少し試します?」
「いや、一旦はいいかな。ドライヤーとか買おうか」
そう言って、ポーション製造機を部屋の隅に片付けて、各々がテーブルを囲うように座る。
「どれどれ……ドライヤーはどこに……」
テレビを付けると"記憶商店"と言う名前が前面に表示されて、数秒後に商品を選択する画面に切り替わる。
その中から日用品の項目を選択すると、お目当ての物を探した。
「あ、ありました。いろんな種類ありますね。えーっと、安いので魔石(小)三十個で高いので……ひぇっ!」
「値段……と言うか、その振り幅大きすぎるって、魔石(小)一万個はやばいでしょ。何が違うんだよ」
試しに一番高いドライヤーを選択して、説明を見てみることにする。
『記憶商店、最高級のドライヤー。
魔力炉を利用した画期的な商品。
わずか十秒で乾かしきるだけじゃなく、髪がツルツルの艶々に。
いつもの日常に贅沢な一品はいかがでしょうか?
不良品または未使用に限り、返品を受け付けます』
十秒で髪を乾かせるとかさ、どう言うレベルなのだろうか。
しかも、魔力炉? なんだそれ。
その説明に記憶商店の底知れなさを垣間見た気がした。
「気になるけど……さすがに無理だ」
「……そうですね。普通のにしましょう」
そう言って、魔石(小)が百個で買えるドライヤーをカートに入れる。
「お兄さん、記憶商店は"魔具"でも武器でもなんでも売ってるから、よく見たほうがいいよ」
「え? ベリル知ってるの? それに魔具って?」
「知ってるもなにも、一部ではめちゃくちゃ有名だよ。記憶商店は生活をだめにする、なんて言われるくらい便利なんだよね」
ベリルが説明する。
「まぁ、そう中々会えるもんじゃないんだけどさ。それと、魔具は魔力を元に作られた便利道具だよ。人間で言う……そうだね。スマホとかパソコンとか、後は車とか、そう言う便利な奴だよ」
「なるほどね……知ってるなら教えてくれよ」
宗田がベリルに文句を言うと、素直に謝ってきた。
「ごめん、ごめん。まさか、記憶商店の通販を使えると思ってなくてさ。僕も知ってるだけで、初めてなんだよね。だから、いろいろ見てみようよ」
ベリルが急かすように言うと、宗田は適当に画面を操作する。
「なんか、ちょっとワクワクしますね!」
「あぁ、俺も思った……って、魔具のメニューあったわ」
宗田がそのメニューを選択する。
「ん〜……名前を見てもピント来ない」
とりあえず適当に見てみることにした。
・グリフォン製の靴 素早さアップ大
・ゴブリンの牙のネックレス 攻撃力アップ小
・死者の肉片 対象を毒にする。確立(小)、使用回数一回
・血みどろの心臓 対象を即死させる。確立(超極小)
「軽く見ても、気になるものしかない。てか、即死なんてあるのかよ。やばいわ」
「本当ですね……でも、ゲーム好きからしたら、ビルドをどう組むか、考えるのが楽しいです。ジュルリ……」
互いに食い入るように画面に見入る。
「僕も初めて見たけど、記憶商店はさすがとしか言いようないね。これは凄いや」
「そんなに?」
「うん。そんなに。普通は"ダンジョン"の宝箱で生成されるか、どこかの専門の鍛冶屋じゃないと作れない物も、魔石で買えるとかチートだよ?」
宗田と唯には価値が分かりづらいが、ベリルからすれば相当凄いことらしい。
「でも、かなり高いですよ……まったく手が出ないです」
唯が嘆くようにそう言ったが、その気持ちは分かる。
最低でも魔石(大)からで、高いと上質魔石(超特大)とかになってる。
最早、日用品に表示されるような魔石(小)の文字は存在していなかった。
落胆に肩を落とす唯と宗田を尻目に、ベリルが勝手に画面を操作して見ていると、突然声をかけてくる。
「あ、二人ともこれはどう? ちょっと見てみて」
宗田と唯はベリルに言われるままに、画面を見た。




