魔石の選別
今日の予定は休むことにする。
激しい戦いの後で、まだ疲れが抜けないのと、いろいろあり過ぎて心の疲弊が激しいと判断したからだ。
と言うことで、回収した魔石をベリルに見せていた。
「んと〜、これが魔石(小)で、これが上質魔石(小)ね。ふむふむ」
「いや……まったく違いが分からんのだが」
「目で見るんじゃなくて、魔力の流れを感じるんだよ。じゃぁ、混ぜるからお兄さんが次に当ててみて」
色とりどりの石をごちゃ混ぜにして、ぶちまけるようにベリルがテーブルに魔石を置いた。
散乱した魔石が外の光を反射して、キラリと光る。
宗田が食い入るようにそれを眺めた。
「う〜む」
座りながら宗田が唸ると、横から影が伸びてきた。
「分かりそうですか?」
「いや、さっぱし。唯は分かる?」
唯が魔石を凝視すると、すっと手を伸ばし赤色の魔石を指で摘んだ。
「これは、上質でこれは普通の魔石で――」
淡々と、切り分けていくのを呆然と宗田は眺めていた。
そして、全て分け終えるとベリルが感嘆の声を上げる。
「お姉さんやば! 全問正解! どうなってんの?」
「え? 勘ですよ」
「勘……この量を普通は全部当てられるわけないでしょ! 見て、お姉さんのせいでお兄さんが……」
宗田の苦労を野生の本能が一瞬で上回り、やるせなさに机に突っ伏した。
最早、自分は隅の方で見守る方がいいんじゃないかと思えるくらい、唯のチートっぷりに宗田からやる気が抜けていく。
「ほら、お兄さんも落ち込んでないで続きやるよ! 起きて!」
ベリルに諭されるように宗田起き上がると、再びごちゃ混ぜにされた。
「いい? 教えるから、その通りにしてみてね」
ベリルが先生のように丁寧に教え始めた。
「一つ、魔石を手に取って見て」
言われるままに宗田が魔石を一つ手に取る。
「そしたら、目を瞑って手の平に握り込んで、魔石に集中して」
宗田はゆっくりと目を瞑り優しく握り込むと、手の中の魔石に集中する。
「そしたら、後は――ガーッ! ってやって、こう、ほいって掴むの」
次の瞬間には、血管が浮き出るくらい手を強く握り込んでいた。
「ね? 出来たでしょ?」
できたたでしょ、じゃねーよ。
最後だけなんであんなに適当なんだ? 舐めてんの?
宗田はベリルの言葉を完全に無視することにして、自分なりに考える方向へと頭を切り替える。
――イメージはサーチ
心の中でいつもの呪文を唱えると、瞼の裏にわずかな光が浮かび上がるのが見えた。
それは豆電球のように小さく、闇を僅かに照らすことしかできない。
他の魔石を手に取ると次の魔石はもっと明るく見えた。
例えるなら、部屋全体を照らすことができる照明のように眩しく見える。
「これが、魔石(小)で……こっちが上質魔石(小)……だと思う」
明るさが弱い方を魔石(小)、大きい方を上質と切り分けると、恐る恐るベリルを見た。
「正解ー! お兄さんやったじゃん!」
「おおーっ! 宗田さん凄いです」
二人に褒められて、ようやく肩の力が抜ける。
試しに自分の中の魔力も見れるのかと、今の感覚を忘れない内に体の内側へ意識を向ける。
すると、魔石よりも遥かに大きな光の塊が
「これができれば、魔石の鑑定もそうなんだけど、魔物の強さもなんとなく分かるようになるから、ちゃんと練習してね。と言うことで、お駄賃にこれをもらいまーす」
上質魔石に手を伸ばし、手の平から魔石の魔力を吸い出してしまう。
あっと言う間に魔石はただの石ころに変わり、それをそっと机に置いて手を合わせた。
「んまんまっ、ごちでーす」
その一連の行動を宗田は唖然と見ていると、唯と目が合いお互い肩を竦める。
「てか、魔王のところに行くにはどれくらい魔石必要なんだ?」
宗田が質問する。
「ん〜、この部屋いっぱいに上質魔石があっても足りないくらいかな?」
その途方もない数の掲示に宗田の瞳が大きく開く。
「え? そんなに必要なの?」
「そりゃ、そうだよ。上質と言っても小さいし、せいぜい一つで僕の体を三日くらい、この世界に具現化させるので精一杯なんだからさ」
少しだけ光が見えたが、それは途方もなく遠くて手が届かない。
それでも明日から、魔石の収集に尽力しよう改めて決意した。
「先は長いね」
唯に声をかけた。
「そうですね。でも、宗田さんと一緒に入れるなら私は大丈夫です」
どこまでも真っ直ぐな彼女に、宗田は苦笑いをこぼし、魔石の仕分け特訓を再開することにした。




