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自分の気持ち

 「ほ、他に聞きたいことはある?」

 唯の圧がまだ残っているのだろうか、少女は言葉を詰まらせる。


 「ちなみに、俺達はどうしたら魔王に勝てる?」

 宗田は少女に聞く。

 「簡単だよ。位階のレベルを上げるだけ」

 少女はすぐに返事をした。


 「お姉さんはちょっとやばい部類だけど、お兄さんも充分おかしいからね?

 そんなホイホイといろんな魔法使える分けねーんだよ! べらぼうめっ!」

 少女が宗田の顔にビシッと人差し指を向ける。

 

 「お姉さんの中から見てたけど……創造? あれは世界の法則ねじ曲げるレベルでやばい代物だからね!むしろ、神の領域……なんで使えるの」

 なんでと言われても、頭の中で勝手に聞こえる声が教えてくれるだけだから、返事のしようがなかった。

 そう言えば、アスエラも魔法について何か言ってたような。

 解剖して調べるとかどうとか。

 すると、今度は宗田に向かって少女が近くに寄ってくる。 

 

 「ちょっといい? あ、お姉さん、ちょっと触るけどやましい気持ちないからね」

 銀髪の少女が宗田のおでこに手を当て目を瞑ると、ぶつぶつと何かを呟いている。

 

 「あ……そう言うこと……これも、何かの因果かな――こんなところで出会えるなんてさ」

 そんなことを口ずさんで、すっと離れた。


 「ん? 何か分かった?」

 「まあ、ね。でも、これは内緒。お兄さんが自分で見つけて」 

 それから何度聞いても少女は首を横に振って答えてくれなかった。


 ――――

 

 「それでさ、二人は結局魔王をどうするの?」


 その問いにたいする答えは宗田の中でなんとなく、まとまってはいた。

 ただ、自分のような量産型日本人(一般人)がそんな役目を担えるかどうか、それだけが不安で重圧のように押しかかってくるのだ。

 真っ直ぐに見つめてくる少女の瞳から逃げるように、視線を下に落とす。


 「いいんだよ? 無理しなくても。ただ、魔王を倒さなければ、家族も友人も誰も戻らない。

 もし、他の誰かが魔王を倒した場合は、元に戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。それだけは、覚悟してね」


 その言葉は宗田の心を容赦なく突き刺し、胃を押し潰すかのようにプレッシャーを与えてきた。

 どちらを取っても後悔が付きまとうのは間違いないなく、さらに言えばこの決断で未来が変わる可能性すらあるのだ。

 何度も自分の心に問いかけるように、意識を集中した。

 

 自分が死ぬのは嫌だ、怖い、死にたくない。

 それは何度も思ったこと。

 家族を失い、葵まで消えてしまった。

 このままのんびりと暮らしたいと思うが、いつ死の魔の手が唯に伸びるかも分からない。


 自分の中には常に唯がいる。

 彼女がいるから、ここまでこれた。

 彼女がいるから、生きている。

 彼女ためにゾンビを殺し、彼女ために闇に手を伸ばす。


 彼女の、彼女のために、彼女がいたからこそ……。

 だから、この領域に足を踏み入れようとする全てを許せない。


 唯は最後の過去の記憶。

 それが消えれば、俺が"俺"であったことが消えてしまう……そんなのは絶対に嫌だ。

 

 だから――彼女に死んでもらっては困るんだ。


 殺してと言っても殺さないし、ずっと傍にいてもらわないと。

 

 宗田が思考の中に首まで浸かり、自分へ問いかけ続けると、妙に気分が良くなった。

 そして、勝手に口が動いて言葉を紡いだ。


 「魔王……倒すよ。そして、世界を元に戻さないとね」

 宗田が出した結論がこれだった。

 「唯も、それでいい?」

 唯に視線を向けると、そう問いかけた。


 「え、あ……はい。私は宗田さんにどこまでもついて行きます」

 返事をした唯は少しぎこちなく見えた。

 心でも見透かしているのだろうか、瞳に映っているのは宗田じゃないものを見ているように思える。

 宗田がその瞳を眺めていると、少女から力のこもった言葉が返ってくる。


 「よし! そうと決まれば魔王討伐に向けて、とにかく位階を上げて強くならないとね」

 「あぁ、そうだな。後はどこに魔王がいるかだな」

 「チッチッチッ! お兄さんさん甘いね。僕を誰だと思ってるの? 僕が連れてってあげるよ」

 魔王の居場所を言ったら滅びると言っていたが、今は偉そうに連れて行くと言っている。

 どう言うことだ?


 「居場所は言えない。だけど、君達が自分の力で僕を利用して辿り着くのは問題ない。つまり、僕を利用するといいよ」

 「利用するって言ったってどうやって?」

 

 「魔法でちょいちょいってね。ただ、この肉体を意地するのにも魔力が必要だし、君達を取り押さえたのにも魔力を使った。そして、魔王が張った結界を抜けるのにも魔力が必要……つまり、魔力が全然足りないと言うわけで――魔石たくさんちょうだい」

 

 催促するように少女が両手を差し出してくる。

 どれくらい魔石が必要になるか分からないが、自分達がこれから何をする必要があるか見えてきた。

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