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あの日……

 葵を殺すしかないと言われた時に、腹の内側が酷く暴れたが、それを何かが押さえつけるような感覚があった。

 これは少女が言っていた"封印"なのだろうか。


 そのせいか、アスエラに対する怒りや憎しみと言う感情は今も燻るだけで、発火するまでにはいかない。

 むしろ、部屋に戻った時に目についた葵の荷物に、心が泣きそうなくらい軋んでいた。


 「それじゃ、さっそく本題に入ろうか……っとその前に僕の名前なんだけど――■■■■■」

 さっきと同じだった。

 耳では聞こえるが、頭が理解できず、宗田の奥には届かなかった。

 唯に顔を向けるが、こちらを一瞥すると目を伏せて首を振る。


 「やっぱり……だめだったね。こればかりか"位階"が低いから仕方ない」

 少女から出た聞き覚えのない言葉に、唯が口を開いた。

 「その……位階ってなんですか?」

 銀髪の少女が、ジュースの入ったコップに口を付ける。

 「なにこれ! めちゃくちゃ美味しい! お兄さんおかわりっ! あっ、ごめん! 位階の話だったね。それは――魂の器の大きさだよ」

 宗田は少女のコップにオレンジジュースを注ぎながら、耳を傾ける。


 「お兄さん、ありがとう! こんな美味しい飲み物初めて飲んだよ!」

 「どういたしまして。んで、位階ってのを詳しく教えてくれ。それと、葵さんを助ける方法を早く」

 「まぁ、まぁ、焦らないで。ちゃんと今分かる範囲で、全部教えるからさ」

 そう言う、少女はチビリとジュースを口に含む。


 「お兄さんもお姉さんも、胸に違和感があった時あるでしょ? それが位階が増えて、器が大きくなったってこと」

 「それが、君の言葉を理解できないことと、どう関係があるんだ?」

 宗田が聞き返すと、少女はたっぷりと間を置いてから、口を開いた。


 「ふっふっふっ。位階が上がると、こう。凄くなるの。こっちの世界で言う、超常的な力が使えるんだよ。二人はちょっと……特殊過ぎるけど、普通の人間から――上位の存在に近づく。それが位階レベル」

 少女は話を続ける。

 「つまり、君達二人は低すぎで、上位存在の僕の言葉を理解できない時があるんだよ。世界の核心に触れるには、それなりの制約があって、その一つが魂の器を大きくすることなんだ」

 

 自分を上位存在と言った少女は、ジュースを嬉しそうに飲んでいる。

 その姿からは想像できないが、アスエラを含めて唯と自分を簡単に制圧してしまう実力を持っていた。


 「なら、どうやったら器は大きくなるんだ?」

 宗田はそう聞き返す。

 「簡単だよ。魔石を持つ生物を殺すこと。今も、えーと、こっちの世界では"ゾンビ"だっけ? ちゃんとした名前は"喰らう者"なんだけど〜……まっ、ゾンビでいいや。そいつを殺せばいいよ」

 知らない単語が次々に現れて、宗田の理解が追いつかない。

 それを悟ったように少女が一度口を閉じると、ただ笑顔を向けてこっちを見ていた。


 「その? 喰らう者? ってゾンビでいいんですよね」

 唯が聞き返した。

 「そうだよ。色欲の王"暴食"が作った世界のルールだね。この世界ではなかったけど、魔素がある世界ではありふれた存在で、ただの雑魚だよ。彼も暇つぶしで作ったみたいだし」

 今度は別の色欲の名前が出てきた。

 「と言ってもゾンビが世界を滅ぼしたんじゃなくて、魔王が滅ぼしたのには変わりないんだけどさ」

 

 少女の口ぶりから、色欲の王と魔王は別の存在と言うことなのだろう。

 なら、どうしてこんなにゾンビが大量に発生しているのだろうか?

 宗田はその疑問を少女に投げかけることにする。


 「なら、なんでこんなにゾンビが出現したんだ?」

 「それはね〜。魔王が使った魔法に関係があるんだよね。そもそもゾンビは、死んだ生物が火葬されなかったり、聖者の祝福を受けないと誰でもなるんだよ」

 

 明かされる真実に、宗田の鼓動が少しずつ早くなる。

 少女は息継ぎに一度空気を大きく吸い込むと、再び口を開いた。


 「お兄さんもお姉さんも、あの日に――死んでるよ」

 その言葉に、宗田の脈が強く跳ねる。

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