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魔石が必要

 「なあ……これ、本当にやらないとなのか?」

 半透明になった少女へ宗田が目を向けて、話しかける。

 「そうだよ。ねっ! 早く早く。僕、消えちゃいそう〜」

 少女の口調は相変わらず軽いが、さっきより全身が薄くなり切羽詰まってるのは事実のようだ。

 宗田は前を向くと、首長ゾンビの死体が転がっている。


 ちょうどよく縦に引き裂かれ、心臓のような物がわずかにはみ出していた。

 少女はそれを指さして、「早くして〜」と横で騒いでいる。

 唯も隣で心配そうに宗田を見ていた。

 宗田は手を伸びしては引っ込めてを繰り返し、中々先に進めないでいると唯が口を開いた。


 「その……私、やりますか?」

 そう言った唯もわずかに顔が引きつっているが、その目は覚悟が決まっているようだった。

 それを見て男の自分が任せっきりにするわけにいかないと、唯を制止する。

 

 顔を背けたくなるのを我慢して、震える指先が臓物に触れると、体温は無くただ冷たいだけだった。

 スーパーで買った肉のように力なく生々しい。

 宗田は込み上げた酸っぱい液体を喉の置くに押し返すと、両手の指で引き裂いた。

 すると、でろりとした液体の中に混ざって青く小さい石が転がり落ちる。

 それを恐る恐る手で掴むと、服の裾で拭いて綺麗にした。


 「葵さんが、渡してきた奴と一緒だ」

 彼女の名前が不意に出ると、記憶の残影がチクリ胸の内側を刺した。

 少しだけ思いにふけようとしたが、それを壊すように少女が嬉しそうに話かけてくる。


 「お兄さん! やったね! おめでとう! ちょうだい、ちょうだい、早くちょうだい!」

 催促するように両手を突き出してきた。

 宗田は息を吐き出すと、その手に魔石を乗せる。

 「やったね! いただきまーす」

 すると、青く魔石が光りを放ち、夜の空間を明るく照らした。

 数秒それが続くと、ゆっくりと消えて青か灰色のただの石ころに変わる。

 その変化を唯も宗田も食い入るように見入っていた。


 「よし! 次にいこう!」

 少女はわずかに体に色を取り戻したが、完全には戻っていなかった。

 次を急かされると、苦笑いを浮かべる。


 ――――


 「はぁ〜、なんとか消えずに済んだよ」

 少女が安堵の息を漏らす。

 消えかけた体は元通りになり、ようやく満足してくれたようだった。


 「あっ、これ最後です」

 「唯、ありがとう。助かったよ」

 唯が宗田に魔石を一つ渡してきた。

 これで、アスエラが連れてきた怪物達から魔石の回収が終わった。

 唯と手分けして集めたが、少女に渡した分も差し引いてもかなりの数が集まった。


 「改めて見ると……凄い有様ですね」

 「本当だよ……アパートもよく無事だった」 

 「――えっへん!」

 唯とアパートの周囲を見渡して、そう話すと半透明が元に戻った少女が、腰に手を回し威張るように声を上げた。

 「それはねー! 僕のおかげなんだよ!」

 「えーっと、それはどう言う……って、君は誰なのかな? あっ、さっきはそのごめんね」

 少女を襲おうとしたことに罪悪感がまだ残ってるのか、恐る恐る話しかけた。

 宗田は二人のやりとりを見ているが、唯が一方的に気にしてて、少女はなんともないと言うような顔をしている。


 「お姉さん、酷いな〜。頭の中でよく声がしなかった?」

 「え? あっ! あのムカつく声!」

 正直に唯が言うと、少女の口元が引くついた。

 「ん? 唯、知り合い?」

 「あ、よく頭の中で声が聞こえてたんですが、その正体がこの子らしいです」

 たまに唯が誰もいないのに叫んだりしていた。

 その正体がこの少女……

 宗田は上から下までなぞるように見る。


 銀色の髪に赤い瞳が凄い特徴的で、精巧な人形のように、顔立ちも恐ろしいほど整っていた。

 神秘的なオーラを身に纏い、この荒れきった駐車場で、少女には汚れ一つない。

 このまま大人になれば絶世の美女となり得るだろう。

 欠点を言えば、口を開くと残念なことくらいか。

 

 それが唯の頭の中にいた?

 幽霊なのか?


 唯のきつい物言いに項垂れる少女を見ると、薄かった体は、今ははっきりと体が見える。

 宗田の頭が少し混乱していると、少女が再び口を開いた。


 「んもうっ! 酷い! あんなにアドバイスしてたのにさ!」

 「アドバイス?」

 宗田が聞き返す。

 「そうだよ! 危険が迫ってるの教えたり……今だってアパートに障壁張ったり、結界で魔物の侵入防いだりしてるんだよ! 酷いっ!」

 手をバタつかせてその少女が必死に訴えてくる。

 「ようやく外に出れるくらい魔力溜まったのにさ〜。いろいろしたら、すっからかんだよね」


 つまり、この少女のおかげでアパートが壊れないし今も他のゾンビ達が襲ってこないと。

 得体のしれない少女に怪訝な表情を向ける。

 ただ、助けた事実は変わらない。


 「そっか……よく分かんないけど、助けてくれたんだろ? ありがとうね」

 「もっと褒めていいんだよ! 魔石ちょうだい」

 子供が飴玉をせがむように、手を突き出してきたため宗田は一つ渡す。

 「えっと、いろいろ言いたいことあるけど、とりあえずありがとう」

 唯も頭を下げた。


 一旦は丸く収まった。

 まだ、胸の奥が軋むような感覚はあったが、ここで話をしている訳にはいかないため部屋に戻ることにした。

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