↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/239

練習

 暇な時間を持て余してる宗田は、魔法の練習をすることにした。

 小さい水の玉を浮かせて、右に左に上下に動けと念じる。すると、宗田に答えるように魔法の水球が移動する。

 ただ、テーブルの端まで移動すると、糸が切れたように落ちて弾けてしまった。

 

 「何してるですか?」

 魔法の練習が気になったのか、唯が持っている漫画を置いて近寄ってくる。

 それに釣られるように、葵も傍にきた。

 「魔法の練習……と言うか、検証かな」

 「検証ですか?」

 「そうだよ。例えば、――イメージは水球」

 魔法で再び出現させると、唯が食い入るように凝視する。

 いつもより濃いイメージを持って作り出したため、胸の奥が抉られたような感覚があった。

 

 「それでね。自分の手から離れた状態でも、魔法を連続で放てないかなって」

 「ほへー。なんか凄い事をしてるのは分かりました」

 気の抜けた唯の声に苦笑いを返す。

 「例えば……。――水鉄砲」

 水球がギュッと縮まったと思ったら、ぶるりと震えて、その先から水が押し出される。

 「――にゃーっ!」

 それが唯の顔に直撃すると、変な叫びをあげた。

 

 「おおー。できたぞ。それに小さくなったけど、まだ残ってる」

 「できたぞじゃないですよっ! 顔が酷いことになりました!」

 「唯ちゃん〜。楽しそう――」

 魔が差した。ただ、それだけだった。

 唯の悶絶する姿に味を占めて、ついて手が……いや、思考が滑った。

 結果として、魔法で出来た水の玉は消失したが、葵の顔がずぶ濡れとなる。

 

 「うふふふっ」

 何も言わずに笑っている葵に宗田は戦慄を受けた。

 「――ごめんっ! 葵さん、ごめんってば! ついさ。ほら、唯! ボケっとしてないでタオル持ってきて」

 「んなっ! 私だけ酷くないですか! もう、嫌いです!」

 と言いながら、その手には純白のタオルが握られている。

 「いや〜。葵さん、ごめんね〜」

 顔に一滴も水を残さないように拭き取るが、宗田のその手が震えていた。

 その間も、笑顔を絶やさず無言の圧力に、肝が縮みあがってしまう。

 

 「びっくりしました〜。でも、楽しかったですね〜」

 ようやく口を開いたと思えば、少し嬉しそうに声が高い。

 だけど、無言で笑顔を見せられるのは非常に怖い。

 だから、もうしない。絶対。

 「いや、酷い目にあったよ」

 宗田がぼやく。

 「それはこっちのセリフですって! もう!」

 「でもさ、おかげでいろいろと分かったよ」

 「むー。何が分かったと言うのさ」

 「範囲は限られてるけど、離れた魔法も思うように操作できるってこと」

 しかも、いつもより多くを注ぐことをイメージしたことで、一発では消えず、二発目でようやく消失した。

 後は他の属性で安定するかと、実戦で使えるかだな。

 

 「それなら、イメージ次第では連射も可能になる?」

 「そう。俺のアドバンテージは魔法だから、連射できればと、複数を同時に操作できればってことかな」

 欲を言えば、自分に同期して追尾してくれれば距離の問題も解決するんだが。

 これに関しては今度検証しよう。

 「ところで葵さんは……何してるの?」

 視界の隅でずっと身を乗り出してる葵に声をかける。

 「まだかなって、思って〜」

 さっきの水鉄砲が気に入ったらしく、待っていたみたいだが、あの笑顔を思い出すと素直に怖いんで、丁寧にお断りした。


 今日で何日目だろうか。火が落ちて眠気がほどよく襲ってくると、宗田の瞼が下に落ちかける。

 「ふぁ〜。二人とも俺は寝るからね」

 「はーい。宗田さんおやすみ。あ、葵さんこれ面白いよ」

 「おやすみなさい〜。わっ、本当ですね〜。なんかこのシーン、目が飛び出してかっこいいです」

 葵の奇抜なセンスには慣れてきた。

 唯も普通に会話を続けている。

 二人の微妙にずれた会話を子守唄に、瞼が完全に塞がれた。


 ――コン……コン。


 微睡みに手を引かれ、深淵を覗こうとしている時に、窓から音が鳴る。

 意識が一気に引き戻される。

 「唯、ランタン消して」

 部屋が暗闇に包まれ、その奇妙な音だけが波紋のように広がっていた。

 向こう側の気配に、唯と葵は話すのを辞めて窓を凝視する。

 愛用の武器を持ち、宗田はゆっくりと立ち上がった。

 「二階なのになんで……窓から?」

 思わず宗田は呟きが漏れる。

 ゾンビが窓を叩くのもありえない。

 白い顔なら破壊して入ってくるだろう。

 となれば、あの新種の怪物……。

 そう思った瞬間、肌を嫌な汗が伝い服に染み込んだ。

 「唯は……葵さんをお願い」

 ゆっくりと伸ばした手は異様に湿り気を持ち、肺が空気を拒絶する。

 ざらついた布の感触が指先に触れると、カーテンを一気に引いた。


 「――見つけた〜」


 知らない顔がこちらを見ていた。

アップデート人類を手に取っていただきありがとうございます。

ブクマ、評価、していただけますと幸いです。


現在毎日投稿継続中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。