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再び

 この世界の女性は強いか、気が狂ってるかの二種類しかない。

 今、目の前で沸き上がる熱を堪能している女は狂っているように見えた。

 それも、また別種の。


 「そんなに見つめてどうしました?」

 唯も宗田も、葵に引き寄せられていた。

 驚きや警戒。唯に至っては完全な敵意だ。

 

 「怖い顔しないで。私は敵じゃないですよ~」

 そう言って近づいてくる葵の瞳からは涙が流れているのに気づく。

 それを見て、宗田の心を罪悪感が蝕む。

 

 「ご、ごめんね。驚いちゃってさ」

 そう言って近づこうとすると、唯に止められる。

 「宗田さん! 近づいちゃだめっ!」

 「唯ちゃんにとって、宗田さんは凄く大事なんですね~。羨ましい」

 語り掛けるように唯に話す。

 

 「でも、本当に大丈夫ですよ~。今、ほら武器もありませんし。二人ならすぐに私のこと、殺せますから」

 葵が一歩近づく。

 「仮に殺しても、今は咎める人いません。なので~。いいですよ」

 葵が手を胸の前で組み、目を瞑る。

 まるで天に祈る聖女のように、太陽の光が葵を照らす。

 

 「……分かりました。信じます。そして、葵さんごめんなさい」

 葵が祈って数秒、唯が折れた。

 構えた武器を下ろし、葵に謝罪を述べる。

 「信じもらえてよかったです~」

 二人の様子を見た宗田はどうにか落ち着いたようで、ふっと息を吐きだした。

 「つぅ~! あいつらの噛みつきやばいな」

 痛覚が戻った瞬間、顔が強張る。

 「急いで治しますね。"治って"」

 

 「唯、いつも、ありがとう」

 唯の言葉に優しく包まれると、腕はすぐに戻る。

 それを見ていた葵が近寄って来る姿が見えた。

 「わぁ~。これが唯ちゃんの魔法なんですね。凄いです~」

 まるで品定めするかのように、宗田の腕を見て言葉を発する。

 指でつついたり触ってみたりと、柔らかい肉質がこそばゆかった。

 

 「ちょっ、宗田さんに触らない――」

 そう言い切る前に、背後で再び音が聞こえた。

 多い被さった死体をから、這い出るように生き残りが出て来る。

 頭の一部は抉れているが、致命傷にはならなかったらしい。

 「――しつこい!」

 唯の怒声で頭を蹴り上げると、回転しながら宙を舞う。

 どさりと地面に落ちるのを見届けると、ようやく終わったことに宗田は体の強張りが解けた。

 「唯、助かったよ。ありがとう……ん? どうした」

 唯は無残に転がったゾンビを真っ直ぐに射抜くように見ている。

 「宗田さん、あいつ……変。見て、今ので――死んでない」

 

 唯が指差す。

 その先を宗田が見ると、ゾンビがむくりと立ち上がっていた。

 顔はへこみわずかに原形が分かる程度。だけど、致命傷にはならずゆらゆらと揺れていた。

 こんなにも騒がしいのに、近づいてこようとすらしない。

 

 「――なにが」

 突然ピタリとゾンビの動きが停止する。ピンっと直立し関節の全てが綺麗に真っ直ぐに伸びていた。

 ちょうど、太陽を雲が隠すと薄っすらと暗くなり、まるで災厄を運んでくるようで、全ての神経が震える。

 次に太陽が出てきた時、それが始まった。

 

 「せまいー」

 聞いた時のある幼くて怖気るような声。

 逃げようにも、どうしてかそれに釘付けとなり、三人の時間が停止する。


 「だして」

 次の瞬間、ゾンビが再び動いた。だけど、それは不格好なダンスをする、壊れたロボットのようであった。

 奇怪な動きは中から何かが出てこようと、強引に動かしている。

 より動きが激しくなると、胸を白い手が突き抜けた。

 大きい白い手の指先がナイフのように鋭く、それが皮膚を裂き、ゾンビの体を簡単に引き裂いた。

 

 「でれたー。あ、ごはん――みーつけた」

 赤い宝石のような眼球が、ぎょろりとこちらを向くと、心臓を射抜かれたように体が硬直した。

 白い死神の巨人が目の前に出現する。


いつも読んでいただきありがとうございます。

評価、感想、ブックマークしていただけますと励みになります!

よろしくお願い致します。


また、本日は6話投稿致しましたが、毎日投稿はまだまだ続きます。

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― 新着の感想 ―
面白そうだなと思って実際に読んで面白い作品でした。 パニック風味のローファンといったところでしょうか。緊迫した世界観のなかにあるゲーム感と繰り広げられる物語は僕が言うところの「現代神話」に通じますね…
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