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雨上がり

 雨上がり蒸した日の下を、食料を求めて散策をしていた。運よく、道中はゾンビに出会うことなく、近くの住宅を漁っている。

 数件の家を拝借すると、わずかだが食べられそうな物を手に入れることができた。

 ただ、缶詰やパスタなどがほとんどで、野菜はとうの昔に腐って朽ちていた。

 

 これは、本格的に農業でもしないと栄養バランスがまずいか。

 簡単な食料ならまだ見つかるだろうが、それもいつか尽きる。

 そうなる前に、次のステージとして自給自足を考えねばならないが、そう言った知見がはない。

 少し前なら、ネットで見れば情報は手に入れることができたが、今となってはないものねだり。それが、もどかしく感じられた。

 そんなことを考えながら他人の家を漁ると


 「――誰か! 助けてくれ!」

 突然の叫び声が空気を震わせた。

 「唯っ!」

 彼女の名前を呼ぶと頷きを返し、外に出た。

 音のする方を探すように、集中するとかすかなうめき声が鼓膜を撫でる。

 「こっちだ!」

 宗田が二人に合図を送ると、音がする方へと走り出す。


 「あが、痛いぃぃ! そこを、噛むな――俺を食うな」

 蟻のように群がったゾンビの集団に躊躇なく宗田は魔法を放つ。

 

 ――イメージは銃

 ――指先は銃口

 ――打ち出すは炎の弾

 ――敵の貫く一撃を放つ

 ――炎弾


 唯を助けて以来、久しぶりにこの魔法を使った。

 指先を向けると、トリガーを引く自分をイメージ。そこから放たれた爆音は、一体のゾンビの頭部を貫く。

 その轟音は他のゾンビの注意を引くには十分だった。

 唯が地を蹴ると、一気に前に出る。

 顎から脳に目がけて一突き。ぐるりと白目をむいて崩れ落ちる。

 その横から唯を掴もうとしたゾンビに、宗田が再び魔法を放つ。

 

 「いぎっ」

 奇怪な声を漏らして頭が爆散する。

 「やぁっ!」

 唯が声を張り上げ、爆散したゾンビを蹴り飛ばす。

 群がるゾンビの大部分が転がり地面に倒れると、宗田は唯の攻撃から免れたゾンビを一体ずつ狙撃する。

 唯は宗田を完全に信じ切っているのか、立っているゾンビを気にした様子もなく、刺し壊す。時には踏みつけ砕き、一瞬で殲滅した。

 

 「二人とも。凄い……です~」

 後ろで見ていた葵から自然と言葉が漏れる。

 「ありがと。でも、危ないから俺についてきて」

 そう言って指示を出すと、宗田が唯に近づく。

 「唯……その人は?」

 宗田が問いかけるが、唯は首を横に振るだけだった。

 「――くそっ!」

 抑えきれなかった感情が口から出て、足を踏み鳴らす。

 

 「宗田さん。落ち着いてください」

 肺に空気を送り、それをためらいなく吐き出すと口を開く。

 

 「……ごめん。もう、大丈夫だよ」

 今、死んだ人間は助けを求めていた。だけど、助けることは出来なかった。

 それが、宗田の神経を逆撫でする。

 やっぱりこの世界は嫌いだ。

 そう思うが、唯が死にかけた時のような高鳴りは感じられない。

 罪悪感はあれど、限られた範囲。

 その、薄情とも言える気持ちが余計に自分を嫌いにする。

 

 「帰ろ――」

 そう言おうとした時には遅かった。

 今しがた食われた音が立ち上がり、宗田に襲い掛かる。

 右腕で防ぐが、肉を食いちぎられる。

 意識の外からの攻撃は、宗田も唯も反応できない。

 反撃しようとしたが、今の攻撃で落としてしまった。

 

 「ふふふっ」

 次に行動に映ったのは、唯でも宗田でもない。

 「おいたは――ダメですよ~」

 葵の手には宗田が落とした武器が握られていた。

 それが、ゾンビの右目を貫通し脳をかき混ぜている。

 

 「はい。ねんねです~」

 静かに動かなくなった男を下ろすと、宗田へと振り向いた。

 思わず身を引き、防御する姿勢を取る。

 「これ、返しますね~」

 そっと渡されたのは、落とした武器だった。

 葵の一連の流れはきれいだった。まるで、流れるように命を奪い、それをなんとも思っていない。

 唯の表情は険しく、葵を見据えていた。

 「あ、これがレベルアップですか~。少し、んっ、くすぐったいですね」

 彼女の初めてのレベルアップは艶めかしくて危険な匂いがしていた。

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