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仲良し?

 「唯ちゃん、この服は。なんか小さいですよ~。特にお胸が苦しい」

 悪気の無い様子で、葵がそう言うと唯は俯き震えていた。

 

 「控えめなんですね~」

 その言葉がトドメとなり、唯が倒れてしまう。

 「うぅ~。私なんて、どうせ。たわわな葵さんには負けるもん」

 倒れながら自分の体に対して不満を漏らし、宗田に助けを懇願するように視線を送る。

 男の宗田にとっては少しだけ気まずいが、葵を見ると目のやり場に困ったのは事実。

 胸元に引き寄せられるのを、横から感じる唯の視線が邪魔をしてきた。

 肩身が狭いな。


 「あ~、葵さん。ちょっと待っててね」

 そう言って自分の服を漁ると、黒い無地のTシャツを取り出した。

 「これ、どうぞ」

 視線を逸らして、手を伸ばす。

 「宗田さん。ありがとう~」

 葵が浴室に向かい、姿が見えなくなる。

 そして、唯は床に沈んだまま唇だけが不満そうに尖っていた。

 

 「それでは……いただきます~」

 手を合わせて深々と頭を下げた葵は、ツナ缶を突きながらコンビニで見つけたご飯を頬張っている。

 「それじゃ、私達も食べましょう」

 「あぁ、いただきます」

 宗田と唯も同じように食べ始める。

 「ツナ缶、美味しいです~」

 「それは良かった。いっぱい食べてくれ」

 葵は箸が止まらず、ずっと食べ続けていた。

 それがこれまでの食生活を表しているようで、宗田は心が重くなる。

 だけど、生きて出会うことができて本当に良かった。

 

 賑やかな食卓に、新しい空気がまじわり、自然と会話が弾んだ。

 現に今も。

 「唯ちゃんも食べた方がいいですよ。立派に育ちますからね~」

 「何が……ですか?」

 「控えめ過ぎるんで~。主張することも大事ですよ」

 とこんな調子で仲良くしている。

 

 本気なのか冗談なのか分からない葵に唯は振り回されている様子だった。

 唯としては勘弁して欲しいかもしれないが、宗田としては見ていて退屈しなかった。

 部屋に広がった新しい空気に肺が満たされ、新しい日常が始まったことに少しだけ胸が高鳴った。

 

 「ごちそうさまでした~。本当にお二人には何から何まで感謝しかありません」

 「いえいえ、ご丁寧に。でも、本当に無事で良かった。そう言えばちゃんと自己紹介してなかったね。俺は斎藤宗田でこっちが、神崎唯ね」

 家まですぐ戻ってきてしまったため、お互いにあまり話をしていなかった。

 だから、唯を含めて改めて話をすることにした。

 

 「何がこっちじゃい。もう。改めてよろしくお願いします。宗田さんとは仕事の部署が違うけど、同じ会社の先輩ですよ」

 「こちらこそお願いします~。私は佐川葵といいます。こうなるまえは事務で働いていました」

 こんな感じでお互いのことを話す時間を設ける。

 ただ、年齢を聞いた時は驚いた。唯より年上だってのは帰りの道中で分からなかったが。

 

 「え? 二十六? 俺の一つ下? ありえん」

 と、葵を眺めるが辛うじて成人しているか、新入社員と見られてもおかしくない。ようするに、童顔ってことだ。

 

 「本当に驚きですよね。それに、お胸なんて……」

 唯はまだ、自分の体形のことを引きずっているようだった。

 すっと手で撫でて、大きく息を吐き唯は肩を落とす。

 

 「平均だもん」

 その言葉は男としては突っ込みにくい内容だった。

 だが、肩に手をポンっと置いて、唯の両眼をしっかりと捉えると、わずかに首を横に振った。

 すると、唯の顔がみるみる赤くなり、勢いよく立ち上がって片づけを始めてしまう。

 いつも、振り回されているから、してやったりと心の中でガッツポーズを決める。

 「もう。知りません。宗田さん、嫌いです」

 捨て台詞まで置いていきやがった。


 やいやいと楽しい時間が過ぎていくと、残り少なくなったお茶を一口、口に含む。

 「美味しいけど、冷たいのが飲みたいよな」

 「宗田さん、それは贅沢ですよ。でも、それ、わかります」

 「贅沢ですけど、欲しいです~」

 三人の意見が一致した。

 それなら、ちょっと試してみたいことがある。

 

 ――イメージは氷り

 ――暑さを和らげ、喉を潤す

 ――冬の残影

 ――小さき氷塊


 いつものフレーズから魔法の言葉を紡ぐと、コップの上に小さい魔法陣が出現する。

 それが透明なコップの内部を照らし、幻想的な光景ができあがる。

 神秘的な光景に、目を奪われるがそれはずっと続かなかった。

 すっと、その光が弱くなり消えると、手の平サイズの氷が出現する。

 カランと軽い音が、広がると部屋の空気が少しだけ涼しくなった気がした。


 「やっぱり――」

 「え? 凄い! 宗田さん、私も」

 「これが……魔法。凄いです~。ください~」

 女性陣からの圧が凄く全ての言葉を言い切ることができなかった。

 だけど、二人の目の輝きをみて少しだけ誇らしい気持ちになる。

 「どれどれ」

 ちょっとだけ、偉そうに言うと同じように魔法を行使した。

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