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帰り道

 宗田が先頭に立ち、次に葵と唯。

 挟むようにして自分のアパートへと向かうが、平和な帰り道に決してならない。

 道を一つ横に移動するだけで、ゾンビがひしめき合い、腐敗臭がそこかしこで立ち上がっていた。

 

 「宗田さん!」

 「――っぅ! くそっ!」

 脇道から現れたゾンビから奇襲を受けてしまった。

 倒れ込むよう覆い被さり、地面に押しつけられる。

 唯が慌てて近寄ろうとするが、それより早く頭に武器を突きたてて始末する。

 だらりと垂れ下がる肉の塊を押しのけて立ち上がり、服についた皮膚がゴミのように落ちた。

 

 「……危なっ」

 喉の奥の詰まった息を吐き出すと、胸の辺りが熱くなる。

 

 「あ、レベルアップした」

 「宗田さん、おめでとう」

 唯が祝福の言葉を送ってくれる。

 「あの〜。大丈夫ですか? それに、レベルアップって」

 葵の浮いた声色が、すぐ近くで聞こえた。

 「葵さんは知らない? ゾンビを倒すと、こう胸が熱くなって」

 「いえ〜。その、ゾンビを殺したことはないんで」

 それもそうか。わざわざ危険を犯すのは極少数なんだと思う。

 ゾンビは見なれてるかもしれないけれど、こうやって殺されるのを見て彼女は大丈夫だろうか?

 そう思い宗田は葵に声をかける。

 「葵さん、気持ち悪くなったりしてない?」

 葵は宗田の言葉に優しく微笑みを返す。

 「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます〜」

 彼女もこの世界に毒された一人なのだろう。

 人の成れの果てを見ても、笑顔を振る舞うことができるのだから、自分達と同種。 

 「それじゃぁ、先に進もう」

 「はーい」

 「は〜い」

 と二人は返事をすると、宗田は再び歩みを再開させる。


 「お二人はお付き合いしてるんですか〜」

 それは突然だった。

 緊迫した空気に爆弾を放り投げて、葵は容赦なく爆弾させてきた。

 「な、違うよ! 俺達はそんなんじゃない」

 足を止めあわててまくし立てた。

 「そうなんだ~。とても仲良しそうで。ふふふ」

 葵さんと話すと調子が狂う。

 

 ただ、今の言葉は唯にも聞こえている。

 彼女をちらりと見ると、怒っているような照れているような、表情がころころと変わっていた。

 「そんな否定しなくても。でも、そう見える? それはそれで……」

 まんざらでもない唯を置いて歩き出すと、「待ってくださいよ」と声が聞こえて追いかけてくる。


 緊張の中にたわいない会話を混ぜて進んでいると、間もなく家に到着する距離まできていた。

 後では唯と葵が何やら話ている。 

 「佐川さんって、私より年上だったんですかっ!」

 「そうみたいです~。あ、唯ちゃんも葵でいいですからね~」

 「びっくりですね。こんなに小さいのに……ね」

 聞き耳を立てると、唯の口ぶりには何か毒が混ざっているような気がした。

 だけど、葵は気にした様子もなく言葉を返す。

 「えへへ~。そうかな? ありがとう。唯ちゃんも可愛いですよ~」

 「いえいえ。そんなことは、葵さんなんて高校生みたい……」

 と、嚙み合わない会話を続けていた。

 「ほら、二人とも。もう少しだから油断しないでね」

 そう、注意をするとまたお互いに返事を返してくる。


 「おじゃまします~」

 無事に到着した三人は、新しい仲間を迎え入れる。

 宗田と唯は定位置に座り、葵は開いているところに腰を下ろした。

 

 「宗田さーん! 私、お風呂入りたいです」

 帰るや否や、唯が要望を投げかけてきた。

 「って、早速――」

 抗議を送ろうとしたら、唯が目で合図を送る。

 視線の先を追うと、葵の姿があった。

 肩より少し上くらいまで伸びた黒い髪を、今は後ろでまとめているが、毛先が飛び跳ねてぼさぼさ。

 頬も黒ずみ、お世辞にも綺麗とは言えなかった。

 

 「あー、分かったよ。準備するから待ってて」

 そう言って立ち上がると、背後から状況をまだ掴めない葵の言葉が聞こえていた。

 「え? お風呂……入れるんですか?」

 浮いた声色には嬉しさと驚きが混ざっていた。

 「そうですよ。だから、さっぱりしましょう!」

 唯と葵の会話が聞こえる。

 

 「それじゃあ、お願いしますね。宗田さん」

 唯に「はいよっ」と返事をし、浴室へと移動する。

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