しょんぼり
あれから九回目の朝日を目にしました。
でも、彼は見つかりません。
流石にしょんぼりです。
「ほんと、どこに行ったんでしょうか」
会いたい。だけど、今の自分の姿は見せられない。
今日、探して見つからなければ一度体をきれいにしよう。
こんな汚れた体は見せられません。乙女ですからね。
さて、白い怪物をもっと狩ってレベルでも上げましょう。
「――と、思ったけど流石にこれは」
全部あいつら、腐った肉達。どこまでも、私を不快にするのが上手です。
そう言えば、ずっと無視してましたけど。
――行っちゃだめ。
頭に声が聞こえてました。
正直こいつなんかより、宗田さんの方が大事。
いつも、危険を教えてくれた気がしますが、今回は耳を傾けるべきでした。
「おなか、すいたー」
白い怪物。
「ぁあ……あぁぁあ……」
それとゾンビ。
問題は数です。
近くのホームセンターに来てみれば、目の前がゾンビだらけ。
中に人でもいるのでしょうか? ほとんどが建物へ侵入しようとして、その一部がこちらへ振り返ります。
「まずい……です」
一旦、退避しようとしましたが、白い怪物が行く手を伏せぎあっと言う間に囲まれました。
隙間からはゾンビが這い出し、間もなく私に到達です。
だからこんな世界は嫌い。
――カチリ
と言う音と共に、胸の奥が焼けるように熱く憎かった。
だから、こんな世界――破壊してやる。
触れようとしたゾンビの腕を引きちぎり、顔を殴るとそのまま貫通する。
白い怪物が上から振ってくるが、顔を失ったゾンビをぶつけて軌道を逸らし、落ちてきたとこに蹴りをかますと、大量のゾンビ達を巻き込みなぎ倒す。凄く気持ちがいいですね。
だが、怪物達の攻撃は執拗に私を追いかけ、鬱陶しい。どんなに倒しても、吹き飛ばしても、むしろ羽虫のように増える。勘弁してくださいよ。
気づいた頃には、ホームセンターに入ろうしていたゾンビのほとんどがこちらに向かっていた。
遠くの人影が私を見ている気がする。何もしてくれない。ムカつく。助けてもくれないし。
あぁ、許せない。
あいつら、ただ見てるだけなんて……。
こっちが終わったら――
「――くぅっ!」
一体のゾンビが私の腕に噛みつくと、焼ける痛みに悲鳴が出ました。酷い! 許せない。
だから、反対の手で頭をぐしゃりと。
でも、振り払う最中に指を食いちぎられ、あっと言う間に腐った中に溺れて、気分は最悪。
腐敗に覆われると、頭が少し冷えました。そして、急に怖くなり、叫び助けを乞います。
でも、ヒーローは来ないし、宗田さんも来ない。
こいつらに食われるなんて嫌だ。
やだよ。死ぬことよりも、宗田さんに会えないほうが嫌。なんで、みんな邪魔するの。
絶対に死なない。
頭だけになっても生き残ってやる。
――だから、言ったのに。
頭の声が妙に響き、無性に腹が立った。
最近は怒ってばかり、流石に疲れたんでこういうのは今日までにしたいところです。
――次を探さないとかー。
勝手にしろ。
「あ、あぁぁ……ぎぃ……ぎぎ!」
うるさい。ゾンビ野郎は黙れ。
「たべるー」
本当にうるさい。なんなのお前らは。
私は宗田さんがいればいい。宗田さんだけでいい。ゾンビも生存者も、そんなの知らない。
まして、頭の中の異物なんてどうでもいいの。
早く会わせて彼に。
そして、隣にいてよ。
渡さない、渡さない、渡さない。
世界の誰にも渡さない。
地獄に落ちても、天国に行っても、私が絶対に連れ戻す。
こんな狂った世界は壊れてしまえ。
――ああ、愛しい人。
「――加速」
頭に浮かんだその言葉を呟いた時には、全て終わっていた。いや、終わらせました。
当たりにあのゾンビの群れは、残らず全て駆逐。
だけど、流石に疲れたんでホームセンターの人間達はいいです。
帰りましょう。
そして、おやすみなさい。
「あ、えっ? ゆ……い?」
ようやく聞こえたその声に、私の中の黒は密かに消えていきました。
やっと帰ってきたんですね。遅いですよ宗田さん。
って、あれ声が出ない。
――いやー、驚いたよ。君、何者?
まだ、頭の中にゴミがいた。
――もう少し一緒にいようかな。じゃね。
うるさい虫が静かになり、宗田さんの声に耳を傾ける。
早く起きたいです。
待ってました私の希望――愛しき人。




