神崎 唯
私の名前は、神崎 唯 二十四歳。
独身です……っと誰にでもなく自己紹介させていただきました。
色恋沙汰には程遠く、今もゲームに没頭中。
前髪が邪魔だからって、ピンで止めて画面から目が離せません。
ドラゴンズレガシー10。
きっと彼も今ごろやってるのでしょうか?
二人で一緒に……そう思うだけで心が張り裂けそうくらい熱くなりますよね。
そんな私の心を高鳴らせる彼、斎藤 宗田さんは優しくて、弱くて、でも必死に生きようとしてて、その輝きがステキです。
そうですねー。
馴れ初めを話しますと――出会いは突然でした。
元々同じ会社で、見かければ挨拶をするくらいの関係。
それが私達でした。
「お疲れ様です」
「あ……お疲れ様です」
おや? 元気がないですね? 何かあったのでしょうか?
仕事の休憩室で偶然出会うと、彼は項垂れるように座っています。
スマホを持っていましたが、画面も見ないで、ぼーっとしているだけです。
なんだろう? 気になりますね。
ちょっと声をかけてみますか。
「あの……体調悪そうですけど、大丈夫ですか」
普段の私なら絶対に声をかけることはしないのですがどうしてか、その時ばかりは彼が気になってしかたなかったんです。
それが何なのか、自分では分かりませんが……胸の奥で何かが疼いているような感じがしたんです。
部署も違うし、たまに見かけて挨拶くらいはしますけど、ただの同僚と言う関係です。
よく、缶コーヒーを飲んでましたが、今日は飲んでないみたいです。
「あ……そんな酷い顔してたかな? でも大丈夫だよ」
そう言って乾いた笑みを浮かべて私を一度チラ見して、すっと立ち上がっていなくなってしまいました。
でも、これが―運命でした。
去っていく彼の姿をなんとなく眺めるていると、胸の奥がぞわぞわと熱くなって、心臓の鼓動が耳に聞こえるくらい高まっていました。
胸に手を当て聞いてみましたが、返ってきたの激しい脈の振動だけ。
それからは偶然が続き、
「お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です」
「今日は顔色が良さそうですね。えっと、私は神崎 唯っていいます」
「神崎……あぁ、君がそうなんだ。俺は斎藤宗田だよ。この前はありがとう」
彼は何故か私を知っています。
それが自分を見ていてくれたみたいで、凄い嬉しかったな。
今回は軽く談笑してお別れ。
明日も会えるといいな。
「お疲れ様です」
「お疲れ様ー」
「これ、良かったらどうぞ」
「ありがとう。イチゴミルクか。んっ、美味しい」
また、談笑してお別れ。
それを何度か繰り返すと、だいぶ心を開いてくれたのか、彼から話してくれるようになりました。
「それがさこの前、彼女にふられちゃって、今もなんかなーって」
「えっ!? でも、どうして? あっ、話したくなかったら大丈夫ですよ」
「今は少し落ち着いたから大丈夫だよ。ゲームばっかりやっててかまってくれないからだってさ。他に好きな人ができて、別れましょうって」
この前落ち込んでたのはそれのせいだったんでしょう。
少しだけ、そのことに胸が締め付けられますが、終わった話です。
どうでもいいってことですね。
でも、こうして自分から話してくれたのが凄く嬉しくて、彼には申し訳ないけど少しだけテンションが上っちゃいました。
「それは……なんと言うか……」
「答えにくいことを言ってごめんね。でも、あの時声をかけてくれて、驚いたけど一人じゃないんだって思えてさ。その、ありがとう」
宗田さんに真っ直ぐ目を見つめられそんな事を言われたら。
あぁ、耳が熱い。絶対に顔が赤くなってるの気づいてますよね。
次の日はゲームの話。
どんどん距離が縮まって、いい感じです。
「ところでどんなゲームするんです? 実は私もゲーム大好きで、休日はほとんど家でゲームを」
「神崎さんもゲーム好きなんだ。俺は、んー、そうだな。RPGが多いけど、アクションもFPSもやるね。今度発売するドラゴンズ・レガシー10がめちゃくちゃ楽しみでさ」
ゲームの話しをする彼は饒舌でとても、楽しそう。
その笑顔に私も楽しくなってきました。
「ドラゴンズ・レガシー10! 私も予約しました。実は限定版予約出来たんですよね!」
「えっ、マジ! 俺も限定版予約できたんだ。良かったよー」
「いいですねー。どっちが先にクリアできるか勝負しましょう。あっ、差し支えなかったら連絡先教えてください。先にクリアして自慢しますから!」
そして、会社だけの繋がりから、外の世界でも私達は繋がることになりました。
これは、一目惚れに近いと思います。
なんだか気になって話してたら、もっと彼を知りたくて、傍にいたくて。
確か、以前の彼女は「真奈」っていいましたかね。
宗田さんには申し訳ありませんが、感謝してます。
――ありがとう。
…………。
これが、私と宗田さんの馴れ初めです。
ただ――二つ嘘をつきました。
一つは、一目惚れの瞬間。
本当は、ずっとあなたを――見ていました。
帰る時も、会社に来るときも。あなたは気づいてましたか、よくすれ違うなと。
そして二つ目は、そんな偶然が何度も続くと思いますか?
何度も同じとこで出会ったら、それは偶然じゃなく必然ですよ。
凄い気分いいですね。
でも、なんでなんでしょう。
分からないけどずっと彼に惹かれて――狂おしいほど愛しい。
――欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。
彼は私だけの、そのためなら――
――なんで、こんなに愛しいんでしょう。
……ねぇ、どうしてこんなに愛しく感じるの。
あなたは――私の世界。
今度は離さない。
例え"闇"に飲まれようとも、底から這い出して彼から離れるつもりはないですよ。
邪魔しても無駄です。
――あはっ。ははは
「起きたらまた、たくさん話しましょうね。ずっと、傍に……」




