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人類領域

 ――パンパカパンパンパーン!

 ――ファンファンファンッ!

 ――ファーファーファーッッツ!


 紫苑達のグループではこの声の事をか"神の声"と呼んでいた。

 それは自分達にとって恩恵をもたらす声だからである。


 闇に沈んだ世界に似つかわしくない、ファンファーレはこれまでにないほど、盛大な音色を奏でていた。

 全員が空を仰ぎ、体育館に避難した人々のざわめきまで宗田の耳に届いた。


 ――ネームドモンスターの討伐を確認。

 ――クエスト『屍の王討伐』を完了致しました。


 アドゥルバ倒したことによる報酬の進呈らしい。

 こんな状況で不謹慎だが、いったいどんなものが今度はもらえるのかと、心が高鳴るのを感じた。


 ――通常報酬数:二

 ――報酬内容:『人類領域』、『無限水源』


 ――ネームドモンスター、ラストキル

 ――対象者:斎藤宗田

 ――報酬内容『血液操作』


 ――進呈を確認します


 今回の報酬は盛りだくさんらしかった。

 恐らく、ネームドモンスターを討伐したことが一番大きかったと思われる。

 

 ――アドゥルバ


 そいつは王と言う名に恥じないくらい、滑稽で強かった。

 あいつが最初から本気で戦っていたら、この拠点の全員が皆殺しにあっていただろう。

 自分もたまたま生かされてた。

 それだけだ。


 本当の屍と化して動かなくなったアドゥルバに目を向けると、その圧倒的強さを思い出して背筋に氷水を流し込まれた気分になる。

 ぶるっと体が震えると、宗田はさっと視線を外した。


 ――進呈開始。『人類領域』

 ――対象範囲を指定してください。


 対象範囲?

 任意で選べるのか?

 それと、効果はなんだ?


 「あー……その、人類領域について教えてもらえないか?」


 反応はないと思うが試しに聞いてみることにした。


 ――報酬内容への質問を確認

 ――……受諾

 ――説明を開始します


 まさか反応を見せるとは思わず、宗田の目がまん丸に見開く。

 唯も驚いたように見つめ返し、二人は再び顔を星がまたたく空へと向ける。


 ――人類領域

 ――これは、人間族だけがその中に入れる領域となります。

 ――対象範囲  :起点から半径二百メートル

 ――効果発動条件:領域内生存者十名

 ――注意点:敵対勢力からの攻撃は防げません。また、領域発動後、内部に人間族以外がいた場合もそのまま保持されます。必要に応じて排除または対処をお願いします。


 それは、人類にとっての希望だった。

 これがあれば人間が生き残れる可能性がぐんっと跳ね上がる。

 小さい範囲かもしれないけれど、ようやく希望の芽が生えてきた。


 「後は起点をどこにするかだが……」

 無難なのはこの学校か?

 避難している人もたくさんいるし。

 そう頭を捻っていると、視界の端に影が映る。


 「宗田君」

 それは紫苑だった。

 「紫苑……言いたいことは分かってる」

 「すまない……心から感謝する」


 会話の中身に触れることはなかったが、お互いに言いたいことは分かっているようだった。

 それに、この領域の起点と考えた時、特段いいところが思いつかなかった。

 なら、有効に活用できる、この小学校を起点として安全を確保するのがベストだと宗田も思う。


 範囲はこの学校の敷地より少しはみ出るくらいか?

 まあ、今回みたいな襲撃を防げるならそれだけで十分だと思う。


 「この学校の中心を起点に、『人類領域』を頼む」


 ――対象の選択を確認。

 ――報酬の贈呈を開始します。


 宗田の言葉に反応した、神の声が報酬の進呈を宣言すると、空から一筋の光がゆっくりと降りてくる。

 それが周囲を眩しく照らして、昼になったと錯覚するくらい、学校の敷地が眩しく照らした。


 その様子が気になった人達は体育館の入口に集まり、全員が無言でこの光景を見つめ、希望に満ちたような眼差しになっていることに気づく。


 「ふーん。この世界の魔王は変なことするね。まぁ、それも仕方ないこと……かな」

 いつの間にか近くに寄ってきていたベリルが、ぼそりとそんな事を呟く。

 「お兄さん、スーパーヒーローになったね」

 そうベリルが微笑む。

 「これで、自分は普通の人間からかけ離れたことに気づいたかな?」

 真紅の眼差しが宗田の両目を射抜く。

 それを真っ直ぐに見つめ返して

 「ああ……そうだな」

 と一言だけ返した。


 宗田がベリルから目を離すと、ゆっくりと降りてきた光が地面に触れる寸前だった。

 そして、その光が地上に到達すると膨張するようにどんどん膨れ上がる。

 限界まで膨らんだ風船のようにパンパンになると、なんの前兆もなく破裂して、辺りに光の波紋が一気に広がる。

 

 突風が突き抜けたように前髪がなびき、それが橋の方まで広がると、再び学校を闇が支配した。  

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