盤面支配のピースと、異端編成の完成
俺が残りの3人をスカウトするのに、さほど時間はかからなかった。
なぜなら、俺がピックアップした人材は全員、教官たちから「使い物にならない」と見放され、基地の隅で腐っていた連中ばかりだったからだ。
旧式のブリーフィングルーム。
俺とリン、シオン、トーヤの前に、新たに集められた3人の『外れ値』たちが戸惑った顔で並んでいた。
「これで7枠すべてが埋まった。お前たちの特性はすでに俺のデバイスに入力済みだ」
俺が戦術コンソールを起動すると、ホログラムの盤面に7人の光点が配置された。
リンが呆れたようにため息をつく。
「……カイト。お前が連れてきたこいつら、控えめに言って『狂ってる』ぞ。本当にこれでソウマの第一部隊に勝てるのか?」
「当然だ。第一部隊の『定石編成』は、前衛・中衛・後衛のバランスを重視した汎用型。対して俺たちの『異端編成』は、局地的な一点突破のみに特化した特化型だ」
俺はホログラムの光点を指差し、新たに加わった3人の役割を説明し始めた。
「まず一人目。リク、お前の特性は『広域探知』。半径5キロ圏内のあらゆる動体反応と地形データを完全に把握できるが、情報量が多すぎてお前自身は処理しきれず、戦闘中は一歩も動けなくなる」
小柄な少年、リクがビクッと肩をすくめた。
「情報戦において視界の制圧は最重要だ。お前は一切戦う必要はない。安全な後方から、俺のデバイスに戦場の全座標データを流し込み続けるだけの『レーダー』になれ。俺がその情報をすべて戦術に変換する」
次に、派手な髪色をした少女、メイを指差す。
「二人目。メイ、お前の特性は『強制標的』。発動した瞬間、周囲のすべての敵の意識と攻撃衝動をお前一人に強制的に向けさせる。だが、お前自身には防御スキルが一切ない」
「……そうよ。だから私は、ただの自殺志願者扱いされてずっと干されてたの」
メイが自嘲気味に笑うが、俺は首を振った。
「違う。お前の役割は、敵の綺麗な陣形を強引に崩し、一箇所に『まとめ上げる』ことだ。メイが敵のヘイトを集めて誘導し、トーヤの『絶対停滞』の結界内に全員を引きずり込む」
その言葉に、トーヤとメイが顔を見合わせた。
「なるほど……。私が敵を釣って、トーヤの結界で全員まとめて動きを止めるってわけね」
「そして、そこに俺の計算でドンピシャのタイミングを合わせ、シオンの『遅延発火』による極大範囲爆撃を叩き込む。……これが俺たちの基本戦術だ」
息を呑む音だけが、ブリーフィングルームに響いた。
誰もが、自分たちの「欠陥」だと思っていた能力が、一つの凶悪なシステムとして完璧に噛み合っていくのを理解したのだ。
「でも、カイト」
リンが鋭い指摘を入れる。
「そのコンボが強力なのは分かるが、一度撃てば終わりだ。シオンもトーヤも、スキルの再発動までに膨大な時間がかかる。生き残った敵がいたら、そこから先はどうする?」
「そのための、三人目だ」
俺は最後に、いつも眠たそうにしている長身の青年、ナギを見た。
「ナギの特性『時間超越』対象の味方一人の生体時間を加速させ、スキルのクールダウンを強制的にリセットする。ただし代償として、ナギ自身の体力と精神力は完全に底を尽き、気絶する」
「……ああ。俺は一回スキルを使ったら、あとは寝てるだけの粗大ゴミだぁ……」
ナギが欠伸をしながら言う。
「それで十分だ。ナギのスキルでシオンかトーヤを再起動し、第二波を放つ。それでも凌ぎ切れないイレギュラーが発生した時は——」
俺はリンに向き直り、その銀色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「俺がすべての変数を調整し、限界突破させた『最強の鉾』……リン、お前が残った敵をすべて薙ぎ払え。そのための露払いは、俺たちが完璧にこなしてやる」
リンは少しの間だけ目を丸くした後、フッと口角を上げて不敵に笑った。
「……上等だ。私の背中は、お前に預ける」
視界の制圧、ヘイトの誘導、絶対停止、時間差の範囲爆撃、クールダウンの強制リセット、そして最強の単体殲滅力。
ここに、定石を破壊し尽くすための『異端編成』が完成した。
「明日の模擬戦、俺たちのバグで、エリート共の計算を狂わせてやるぞ」




